第52話 初陣

私は驚いている。


ギルドマスターがウィズのお祖母ちゃんだったとは…


「ウィズから話は聞いてるよ、孫が世話になったね、…まぁ立ち話も何だし、とりあえず座っておくれよ」

「分かりました」


バノンが椅子に座る。


私はバノンの隣で待機する。


「それで、俺をギルドに呼んだのは何ですか?」

「実は厄介な事が起きていてね、実は…」


ギルドマスターが喋ろうとした時、部屋の扉がノックされた。


「ギルドマスター、入ります」


扉が開き、一人の女性が入って来た。


「どうしたんだい?」

「はい、実は一階で集まった冒険者達が今回の事態の説明を求めて騒ぎになっています」


その言葉を聞いて、ギルドマスターがため息をつく。


「全く…バーニャ、すまないけど下に行って騒いでる馬鹿共に説明してやってくれないかい」

「分かりました」


バーニャが部屋から出ていき、部屋の中にギルドマスターとバノン、ウィズとミミズさんと私だけになった。


「あの馬鹿共が…けどまぁ、人払いも出来たしちょうど良かったねぇ…そこのあんた」


ギルドマスターが私を見る。 何だ?


「もう喋っても良いよ」

「!?」


私は驚く。 


何故私が喋れる事を知ってるんだ!? 


…もしかして。


「そう身構えなくても良いよ、あんたの事はウィズから聞いたんだよ」


やっぱりか…


私はウィズを見る。


「ヤタイズナさんごめんねー…私お祖母ちゃんの前だと口が軽くなっちゃうみたいで、ついヤタイズナさん達の事を話しちゃったのー」


やれやれ…どうやらウィズは大好きなお祖母ちゃんの前だと何でも喋ってしまうようだ…仕方ない。


私は口を開き、ギルドマスターに挨拶する。


「どうも初めまして、ヤタイズナです」

「初めまして、エマだよ、あんたがウィズを助けてくれたんだってね、礼を言うよ」

「お礼なんて良いですよ、それで私達を呼んだのは私達の力を借りたいから…ですよね」

「察しが良いねぇ、さっきも言った通り、厄介な事になっていてね…」

「厄介な事とは?」

「実は一時間前に大草原の調査から戻った冒険者達が魔物の群れを発見したと言う報告をしてきたんだ…しかもその群れはこの王国に真っ直ぐ向かって来ているらしくてね…早くてもあと三日で王国に来るらしいんだよ」

「魔物の群れ…数はどれくらいですか?」

「戻って来た冒険者が言うにはゴブリンだけで6000匹だそうだよ」

「6000!?」


バノンが信じられないと言う顔で叫ぶ。


「確かに凄い数ですけど…確かゴブリンはEランクの魔物…それなら対処できるんじゃないですか?」

「勿論ゴブリンだけなら王国の冒険者と王国の兵士だけでなんとかなるさね、…問題はここからさね」

「というと、ゴブリン以外の魔物もいるんですか?」

「ああ、面倒なことにウルフとオーガも一緒らしいのさ」

「オーガだって!?」


バノンが驚く。


「そんな馬鹿な、オーガは山に生息する魔物だぞ、何で大草原にいるんだ?」

「そこが解せない所なのさ、オーガが大草原にいるなんて異常だよ、しかも300匹もいるんだよ」

「オーガが300匹も!?」

「ゴブリンだけならまだしもオーガがいるんじゃうちの奴らだけじゃ無理かもしれなくてね…」

「確かこの国には勇者がいるのでは?」

「勇者達は西で活発化している魔物の討伐に行っていて、戻って来るのはあと三週間後、どう考えても間に合わないよ」

「そこで私達の力を借りたいと」

「その通りさ、あんたたちには討伐部隊に加わってほしいのさ、勿論それなりの報酬は払う、だから頼むよ、この通りさ」


ギルドマスターが頭を下げる。


「ヤタイズナよ、どうするのじゃ?」

「そうだね…この国でウィズやオリーブには結構世話になったから、この国のために戦いたいと思うんだ」

「そうか、まぁゴブリンやオーガ如きなら今のお主の敵ではないじゃろうしな」

「力を貸してくれるのかい!?」

「はい、それでいつ出発するんですか?」

「出発は明日の朝になっているよ」

「分かりました、それじゃあ戻りますね」

「ああ、明日は頼むよ」

「お祖母ちゃん、じゃあねー」

「じゃあねウィズ、夜道には気よ付けるんだよ」


私達は部屋から出て、ギルドの外に出た。
















私達はウィズの家でしもべ達に明日の事を説明した。


「と言うわけで私達は明日ギルドの討伐部隊の一員として魔物の群れを討伐することになった」

「成程…分かったで御座る! このガタク、魔物どもを蹴散らして見せるで御座る!」

(ぼくもやるぞ~!)

(このソイヤー、特訓で身に着けた力を全て使い主殿の敵を始末します!)

(私もご主人さまのために頑張ります!)

(俺、敵、皆殺し、言う)

(私の鎌でご主人様の敵を切り裂いて見せますわ)

(僕は戦う力は無いですけど…僕のスキルで皆さんをサポートしますね)


皆、やる気満々のようだ。


「ふふふ、ヤタイズナよ、遂にお主が率いる魔王軍の初陣じゃな」

「魔王軍の初陣…」

「これもまた立派な魔王になるための大事な一歩じゃ、見事魔物どもを倒し、立派な魔王に近づくのじゃ!」

「分かったよ、それじゃあ明日は早いしもう寝るとするか」

「そうじゃのう」


私達は明日に備えて寝た。















翌日。


私達は討伐部隊の集合場所に向かう。


集合場所には総勢500人の武装した冒険者と王国の兵士達が集まっていた。


「凄い数じゃのう…」

「皆、遠征の前だから緊張しているみたいだね」


私達が集合場所に到着すると、多くの冒険者と兵士が私達に視線を向けている。


「あの人が噂の…」

「すげぇ、見たこと無い魔物ばかりだ…」

「何でもギルドマスターが直々に頼んだらしいぜ」

「あのギルマスが!? マジかよ…」

「あの従魔達が味方なら心強いな…」

「ああ…」


多くの人が遠くで私達を見ている中で私達に向かって走ってきている人がいた。


「バノンさーん!」


あれってたしか…


「あ、ゴルトさんだー」


そう、門兵のゴルトだ。


「ゴルトさんおはよー」

「おはようウィズ、バノンさんもおはようございます」

「おはようございます、ゴルトさんも今回の遠征に参加されるんですか?」

「勿論です! 私はこの国の兵士ですからね! バノンさん、私はバノンさんのような凄い人と一緒に戦えるなんて光栄です、お互い頑張りましょう! それでは!」


ゴルトが仲間の兵士の元に走って行った。


しばらくすると、副ギルド長のバーニャが遠征部隊の前に出てきた。


「皆準備はいいか、では出発するぞ!」


バーニャの言葉で、遠征部隊が動き出した。


「私達も行こうかー」

「そうだね、皆行くぞ」


私達も、討伐に向けて出発した。















「第24回次回予告の道―!」

「さぁ今回も始まったこのコーナー!」

「次回は久しぶりにバトル展開だね」

「うむ、儂ら魔王軍の初陣を見ておれよ!」

「儂らってミミズさんも戦うの?」

「…それは次回のお楽しみと言うやつじゃ」

「…まぁいいか、それでは次回『開戦』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!」」



・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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