第51話 祖母

夕方。


私達はウィズの家で食事をしていた。


今日の夕食はテールシザーの姿焼きと、グレーウルフのステーキだ。


「美味しいねー」

「そうだね、塩と胡椒だけのシンプルな味付けがまたいい味を出してるよ」



私達が食事をしていると、コンコンという音が玄関から聞こえてきた、誰かが玄関をノックしているようだ。


ウィズが玄関に向かった。


「はーい、どちら様ですかー?」

「ウィズ、俺だ」

「あれ? その声はバーニャさん?」


ウィズが扉を開けると、厳つい顔の男が立っていた。


「バーニャさん、こんな時間にどうしたのー?」

「ああ、ギルドマスターからお前を連れてきてくれと言われてな、緊急事態なんだ」

「緊急事態?」

「話は後だ、とりあえずギルドに来てくれ」

「分かったー、じゃあ私皆に出かけるって言って来るからちょっと待っててー」

「? 誰か来ているのか?」

「うん、実はー…」



ウィズが玄関で厳つい顔の男と話している。


「何の話をしているんだろうね…本当に美味しいなこのステーキ」

「何か面倒ごとの予感がするのう…美味いのう」

「ステーキ、美味で御座る!」

(おいしい~♪)

(脂が乗っていて絶品ですね)

(美味しいです~♪)

(俺、美味い、言う)

(肉汁が絶品ですわ)

(美味しいですね)

「…お前ら、のんきだな」


しばらくすると、ウィズが戻って来た。


「ウィズ、何かあったの?」

「うん、何か緊急事態なんだってー」

「緊急事態?」

「うん、それで私今からギルドに行かなくちゃいけないんだけど…ヤタイズナさん達にも来てもらいたいの」

「私達も? 何故?」

「実はさっきバーニャさんにヤタイズナさん達が家に居ることを言ったんだけど、バーニャさんがバノンさんを連れて来てほしいって言われたの」

「バノンを連れて来てほしいって事は私達の力を借りたいって事だろうね」

「やっぱり面倒事じゃったか…」

「まぁとりあえずギルドに行ってみるか、皆、外に出るぞ」


私達は食事を止め、家の外に出る。


「バーニャさん、お待たせー」

「……」


厳つい顔の男はウィズの家からぞろぞろと出てきた私達を見て、口を開けて固まっていた。


「バーニャさん?」

「お、おお、すまんウィズ、ちょっと驚いて固まってしまってた…それで、その人が…」

「うん、バノンさんだよー」


厳つい顔の男がバノンの元に歩いてくる。


「初めましてバノンさん、私はバーニャ、アメリア王国の冒険者ギルドで副ギルド長をしています」

「どうも初めまして、バノンです」

「それでは、冒険者ギルドに行きましょう、詳しい話はギルドで」

「分かりました」


私達は冒険者ギルドに向かった。















冒険者ギルドに着くと、随分と慌ただしかった。


「少し待っていてください、ギルド長にバノンさんの事を話してきますので」

「分かりました」


バーニャがギルドの中に入って行った。


「しかし…相変わらず見られているね」

「そうじゃのう」


冒険者ギルドの前にいる冒険者達が、遠巻きに私達を見ている。


「おい、あれって…」

「ああ…噂の…」

「凄げえ…」


しばらくすると、バーニャがギルドから出てきた。


「お待たせしました、どうぞ中へ」

「はい、すみませんが従魔を一匹中へ連れてっても良いでしょうか?」

「構いませんよ」


バーニャの許可を得て、私はミミズさんを乗せてバノンとウィズと一緒にギルドの中へ入った。


ギルドの中に入ると、沢山の視線が私達に集まる。


「あれが噂の…」

「ただのドワーフにしか見えないが…」

「バカ、ただのドワーフが従魔を従えられるわけがないだろ、見ろよあの魔物を」

「きっととんでもない力を持ってるに違いないぜ…」


バノンへの評価が高いな…前に門兵が言っていた通り、従魔を7匹も従えている人間はとんでもない力の持ち主だと思われているのだろう。


「ここがギルドマスターの部屋です」


バーニャに連れられて階段を上がり、ギルドマスターの部屋の前に来た。


「ギルドマスター、入りますよ」


私達はギルドマスターの部屋に入る。


部屋に入ると、一人の老婆が椅子に座っていた。


「ギルドマスター、例の方をお連れしました」

「そうかい、その男が…」


老婆は杖を持ち、椅子から立ち上がってバノンを見た。


「初めましてだね、あたしがここのギルドマスターのエマだよ」


この人がギルドマスターか…


私がそう考えているとウィズがギルドマスターに向かって走った。



「お祖母ちゃーん!」



お祖母ちゃん!?



ウィズがギルドマスターに抱き着いた。


「おお、ウィズや、久しぶりだねぇ、元気にしてたかい?」

「うん! でもお祖母ちゃんに会えたからもっと元気が出たよー」

「嬉しいことを言ってくれるねぇ、ほら、ウィズの好きなベリーの飴だよ、お食べ」

「いいのー!? わーい! お祖母ちゃん大好きー!」

「…ギルドマスター…」

「おっと、すまないねぇ、久しぶりに孫の顔を見たから少しはしゃいじまったよ」

「孫…」

「ん? ウィズ、ひょっとして言ってないのかい?」

「言うって、何をー?」

「やれやれ…仕方ないねぇ」


ギルドマスターがウィズから離れて、椅子に座った。



「改めて名乗らせてもらうよ、あたしはエマ・ユアンシエル、このアメリア王国の冒険者ギルドのギルドマスターで、ウィズの祖母だよ」
















「第23回次回予告の道ー!」

「さぁ今回も始まったこのコーナー!」

「まさかギルドマスターがウィズのお祖母ちゃんだったとは…」

「驚きじゃったのう」

「さて、次回、私達がギルドマスターに呼ばれた理由とは、そして、緊急事態とは一体何なのか⁉ 次回『初陣』!」

「このコーナー、初めて次回予告っぽい事をしたぞ!?」

「「それでは、次回をお楽しみに!」」




・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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