第50話 仲直り

「うふふふふ…」

「あの、オリーブ…良かったんですか? 爺やって人すごく悲しそうな顔してましたけど…」

「ヤタイズナさんの事を貶した爺やなんて放っておけば良いんですよ、でも自分の事を貶した相手を心配する優しい心を持ってるなんて…やっぱりヤタイズナさんは素敵な方です! 私尊敬しちゃいます!」


オリーブが私を褒めながら撫で続ける。


「ど、どうも…所でオリーブ、私のしもべ達を紹介したいんですけど良いですか?」

「勿論です!」


私はティータイムを楽しんでいるガタク達を呼んだ。


「皆、こっちに集合だー」

「了解で御座る!」

((はーい♪))

(了解しました)

(俺、分かった、言う)

(分かりましたわ)

(今行きますね)



ガタク達が私の前に整列する。


「紹介しますね、右からソイヤー、パピリオ、テザー、カトレア、ベル、そして前にも紹介したガタクとスティンガーです」



「ふわあぁぁ…カミキリムシさんにチョウチョさん、ハサミムシさんにカマキリさんとスズムシさんですね! こんなに沢山の虫さんを従えているなんて、やっぱりヤタイズナさんは凄いです!」


しもべ達を見て、オリーブは目を輝かせている。


そんなオリーブの元にガタクとスティンガーがやって来る。


「オリーブ姫、お久しぶりで御座る!」

「お久しぶりですガタクさん、身体の色がとても綺麗な青色になっていますね」

「拙者、殿のお役に立つために進化したので御座る!」

(オリーブひさしぶり~♪ げんきだった~?)

「スティンガーちゃんもお久しぶりです、相変わらず素敵な尻尾ですね」

(えへへー、ほめられた~♪ ありがと~♪)

「ありがとうと言っているで御座る」

「ふふっ、どういたしまして」


その後オリーブは他のしもべ達に挨拶した。


「皆さん初めまして、私はオリーブ・アメリアと申します」

(初めましてオリーブ姫、ソイヤーと申します、以後お見知りおきを)

(初めまして、パピリオです、よろしくお願いします)

(俺、テザー、俺、よろしく、言う)

(カトレアですわ、よろしくお願いいたしますわ)

(僕はベルと言います、よろしくです)


「皆オリーブによろしくと言っていますよ」

「こちらこそよろしくお願いします」

「そうだ、オリーブ、良かったらベルの演奏でも聴きませんか? とても綺麗な鳴き声なんですよ?」

「はい、是非聴きたいです」

「私も聴きたいなー」

「それじゃあベル、頼むよ」

(分かりました)


ベルが翅を立てて鳴き始める。



リーーン♪ リリーーン♪ リーーン♪ リンリーーン…



ベルの美しい鳴き声が庭園に響き渡る。


うん、やっぱりいつ聞いても美しい鳴き声だな…


オリーブとウィズもうっとりとした表情でベルの鳴き声を聴いている。


およそ3分ほどでベルの演奏は終わった。


(ありがとうございました)


演奏が終わると、オリーブとウィズが拍手をした。


「凄かったねーお姉ちゃん!」

「ええ、とても素晴らしかったです…こんなに美しい鳴き声は始めて聴きました…良ければもう一回聴きたいのですけど良いですか?」

(はい、良いですよ)

「良いそうですよ」

「ありがとうございます、それと…ヤタイズナさんを撫でながら聴きたいんですけど良いですか?」

「私を撫でながらですか? 別に構いませんけど…」

「ありがとうございます、それでは…」


オリーブが私を撫で始める。

それと同時にベルの演奏が始まった。



リーン♪ リリーン♪ リリリーーン♪ リーン…



「はぁぁ…こんな美しい演奏を聴きながらヤタイズナさんを撫でられるなんて幸せですぅ…」


オリーブはうっとりとしながら私を撫でる。


その後、ベルの演奏が終わってもオリーブは私を撫で続けた。


私が撫でられている間、ミミズさん達はティータイムを再開し、菓子を食べていた。
















―三時間後


オリーブはやっと満足して、私を撫でるのを止めた。


オリーブが私を撫でるのを満足してくれた時にはすでに夕暮れ時だったので、私達は城を出てウィズの家に泊まる事にした。


「また明日も来てくださいね! 私、庭園で待ってますから!」


そう言いながらオリーブは満面の笑みで私達に手を振って見送ってくれた。













私達は城門に向かって歩いていた。


「いやーまさか三時間も撫でられ続けるとは思っても見なかったよ」

「あ奴も良く飽きずに撫でられ続けられるのう」

「まぁ気持ちは分かるよ、私も大好きなカブトムシを眺めていたらいつの間にか一時間ぐらい経ってた事があるし」

「…もうツッコむ気にもならんわ…」

「やはりあのクッキーは美味で御座ったな」

(おいしかったね~♪)

(私はあのゼリーというものが美味しかったですー♪)

(あの味、あの食感…大変美味でした)

(俺、菓子美味かった、言う)

(本当、美味しかったですわね)

(あんな美味しいもの、僕初めて食べましたよ)


ガタク達が私が撫でられている間に食べたお菓子のことで盛り上がっている。

やっぱり私もお菓子食べたかったなぁ…


そんな事を考えながら歩いていると。道の隅っこで落ち込んでいる人がいた。


ん? あれって確か…


「あれー? 爺やさんどうしたのそんな所でー」


そう、そこにいたのは私の事を汚れた魔物と言い、オリーブに大嫌いと言われた爺やだった。


「…これはウィズ様、お久しぶりです」

「爺やさん、そんな所で何してるのー?」

「…何もしておりません、ただここでじっとしているだけですので、放っておいて下さい…」


そう言うと爺やは再び隅っこで落ち込み始めた。


うーん…これ完璧に昼の事が原因だな…私の事を汚れていると言ったのはちょっと頭に来たけど、この落ち込みようを見ると何か可哀想になって来た。


「あの…もしよければ話してくれませんか?」

「何度も言いますが、放っておいて下さ、い…」


爺やが私を見て固まった、そして。



「カ、カブトムシがシャベッタァァァァァァァァァ!?」


驚きの声を上げた。













私達は爺やを連れてウィズの家に来た。


しかしウィズの家は本当に大きい。


本人は「そんなこと無いよー、普通だよー」と言っていたが、私達全員が入ってもまだ余裕がある家を普通とは思えないのだが…


取りあえず私はウィズと爺やがいるリビングにやって来た。


「あの…カブトムシ様、昼間は本当に申し訳ございませんでした」

「もういいですよ、気にしてないので」

「ありがとうございます、…それにしても、まさか喋ることが出来るとは…驚きです」

「ははは…」

「失礼、名乗るのを忘れていました…私はクラウス・ジーイヤーと申します皆様からは親しみを込めて爺やと呼ばれております」

「私はヤタイズナです、所で落ち込んでいたのはやっぱりオリーブの言葉が原因ですよね」

「はい…」


爺やは昼間の事を思い出したのか、顔が暗くなった。


「…姫様に大嫌いと言われてしまいました、顔も見たく無いと…」

「そんなに落ち込まないでよー爺やさん、お姉ちゃんだってついカッとなって行っちゃっただけだよー」

「いいえ、姫様の大好きなカブトムシの事を汚れていると言ってしまったのですからお怒りになられるのも当然でしょう…ああ…私はこれからどうすれば良いのでしょうか…」


爺やの顔が更に暗くなる。 


「爺やさん、落ち込んでいても何も始まりませんし、明日オリーブに謝ったらいいんじゃないですか?」

「謝っても姫様は許してくれないと思います…」

「何故ですか?」

「私は今まで姫様に虫と戯れるのを止めろなど言ってきました、…それが原因でここ数年、姫様は私に対してとても冷たいのです」

「それは冷たくされても仕方ないと思いますね、私が姫様の立場でそう言われたら、死ねと言われているようなものですから」

「そ、そうなのですか!?」

「はい、そうです」

「そうだったのですか…私は今まで姫様の生きがいを奪おうとしていたのですか…」

「はい、ですからオリーブが虫と戯れるのを止めろなんて言っちゃだめですよ」

「分かりました! この爺や、姫様が虫と戯れるのを止めたりはしません!」

「その意気です! その勢いでオリーブに今までの事を謝っちゃいましょう!」

「はい! ヤタイズナ様、話を聞いてくれてありがとうございました!」


そう言うと爺やは家から出ていった。


「爺やさん元気になって良かったー」

「そうですね」

「……あの言葉で納得するかのう普通」

「…俺に聞くなよ」


居間にいるミミズさんとバノンが小声で何か話していた。
















翌日、私達は庭園に行き、私はオリーブに撫でられていた。


「昨日突然爺やから謝られました」

「そうなんですか?」

「はい、「姫様の気持ちを理解せずに今まで申し訳ありませんでした、これからは存分に虫たちと戯れてください」と…」

「良かったじゃないですか、理解してもらえて」

「はい、それは嬉しいんですけど…いきなり過ぎてちょっと気持ち悪かったです」

「そうですか…」

「姫様、お茶のおかわりをお持ちしました」

「ありがとう爺や」


まぁとにかく、仲直りできたみたいで良かったな。


そう思いながら、私はオリーブに撫でられ続けた。










今回、次回予告の道はお休みです。

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