第40話 御伽話

アメリア王国、王城のとある一室。


その部屋に一人の老執事がいた。










私の名前はクラウス・ジーイヤー。


アメリア王国で執事をしている者です。


皆から親しみを込めて爺やと呼ばれています。


我がジーイヤー家は代々アメリア王国に仕えてきた由緒ある家なのです。


私も陛下が若かりし頃よりこのアメリア王国に仕え始めました。


そして今は陛下の娘であるオリーブ・アメリア様にお仕えしています。


姫様はとてもお優しく、更に美しさも併せ持つまさにこの国の宝のようなお方です。


しかし最近姫様の様子が少し変なのです。


元気がなく、庭園に居る時もため息を吐くことが多くなりました。


そして時折「……イズナ…ん……逢い…い」とよく聞き取れないがそんな独り言が多くなったとメイドたちから聞きました。


姫様の様子が変になったのは私が城に居なかった間だと思うのですが…姫様は「爺やに言っても分かってもらえないので話しません」と何も教えてはくれないのです。


最近姫様は私に対して冷たく接してきます…


昔は絵本を読んでほしいと言ってよく私の元に来ていたのですが…


私はあの頃の事を思い出す、姫様が幼かったあの頃を―
















―今から十年程前、姫様はまだ小さく、元気溢れる無邪気な少女でした。


「爺やー!」

「おや姫様、どうされたのですか?」

「じいやさんこんにちはー!」

「こんにちはウィズ様、お二人は私に何か御用ですか?」

「うん、爺やにこれを読んでもらいたいの!」

「絵本ですか、分かりました」


私は庭園で姫様達に絵本を読んであげました。


その本の内容は平和な国に突如と現れた魔王がお姫様をさらい、お姫様を助けるために魔王の城に向かう勇者のお話でした。


姫様達は目をキラキラと輝かせながら話を聞いていました。


「こうして魔王は倒され、勇者は助け出したお姫様と幸せに暮らしましたとさ…めでたしめでたし」

「すごーい! 勇者様ってとっても強いんだね!」

「ゆうしゃかっこよかったー!」

「ねぇ爺や! 私の所にも魔王来てくれないかな?」

「どうしてですか?」

「だって私が魔王にさらわれれば勇者様が私を助けに来てくれるんでしょ? だから私の所に魔王が来ないかなーって思ったの!」

「成程そう言う意味でしたか、でしたらいつかきっと姫様の前に勇者様が現れてくれますよ」

「爺や! 魔王が居なきゃ勇者様は来ないわ! 魔王も一緒じゃなきゃ駄目よ!」

「そうでしたね、きっと魔王と勇者が姫様の元に現れてくれますよ」

「うん!」

「おねえちゃんうれしそう~」


私と姫様達は庭園で楽しい時間を過ごしました。















あの頃の姫様は勇者のお話に夢中でした。


しかしその翌年、姫様は勇者のお話に興味が無くなりました。


姫様は庭園である虫を見つけてから姫様は虫の事ばかり話すようになりました。


「爺や! 今庭園でね、カブトムシさんを見たの! ほらこの本に乗ってるこれ!」

「そ、そうですか…良かったですね姫様」

「うん! はぁぁ…カブトムシさんかっこよかったなー…」


姫様がカブトムシの事を話す姿はまるで恋する乙女のようでした。


それから年月は流れ、美しく成長された姫様は今だにカブトムシに夢中で、庭園で虫たちと戯れていました。


このままではいけないと思い私は姫様に虫と戯れるのはおやめになった方が良いと言いました。


しかし姫様は私の言葉を聞いてくれませんでした。


「爺やもお父様と同じで私の趣味を理解してくれないのですね! もういいです! 爺やなんて嫌い!」


その日から姫様は私に対して冷たくなりました。


しかしそれから数年が経ち姫様も私への態度が戻り始めたと思ったらまた問題が発生してしまいました…


それは姫様と勇者様の婚約の事です。


この国を救ってくれた勇者様の一人である鳳悠矢様を陛下が気に入り姫様と結婚させると言ったのです。


この国を救ってくれた勇者様と姫様が結婚するならこの国も安泰だと私は思いました。


しかし姫様は勇者様との結婚は嫌だと言いました。


私と陛下は姫様を何とか説得しようとしましたが姫様は話を聞いてくれず、再び私に対して冷たくなってしまったのです。


ああ…どうしてこうなってしまったのか…


私とて姫様の思いは尊重したい、しかし我が一族は代々アメリア王家に仕えてきた身、だから陛下の意思に背くことは出来ない。 


だがしかし…ああ、どうすれば…


私はこれからの事を考え自室で悩み続けた。















「第12回次回予告の道―!」

「と言うわけで今回の主役はオリーブの執事の爺やさんでしたー」

「まさかモブキャラが主役の話とはな…」

「まぁたまにはこんな話も良いんじゃない?」

「そうかのう…」

「さて次回は再び私達サイドに戻るよ!」

「儂の出番は多いのじゃろうな?」

「それは次回のお楽しみだよ、と言うわけで次回『成長』! お楽しみに」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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