第30話 運命の出会いⅠ
私達はアメリア王国の入り口付近に着陸し、そのまま門に向かった。
門に着くと、門兵達がざわついていた。
「…これって完全に警戒されてるよね」
「まぁ城の前にいきなり魔物が現れたら警戒するだろ普通」
「全く人間は一々騒がしいのう」
私達が話していると、ウィズが門兵に話しかけていた。
「ゴルトさん、ただいまー!」
「ウィズじゃないか! やっと帰って来たんだな、遅いから心配したぞ…ところで後ろの魔物たちは一体…」
「うん! あそこのカブトムシさん達はね、あそこにいるバノンさんの従魔なんだよ!」
「従魔!? あの人が使役しているのか!?」
門兵がウィズの話を聞いて驚いていた。
そしてしばらくの間話していると門兵がこっち向かって走って来た。
「初めまして、私の名前はゴルト、ここの警備隊長です」
「俺はバノン、商人だ、よろしく」
「バノンさん、ウィズから話は聞きました、すみません…あいつの我儘に付き合ってもらって」
「いえ、別に迷惑じゃないんでいいですよ」
「そう言ってもらえると気が楽になります、あいつ、大体思い付きで行動しているから…しかし強そうな魔物達ですね、従魔を三匹も従えているなんて、バノンさん凄いですね!」
「いえ、そんなことは…」
「謙遜しないで下さい、たまに冒険者で従魔を連れている人はいますが複数使役している人なんてそうはいませんよ、大体魔物一匹を使役するのにも苦労することなのに、三匹も使役しているんですよ? これが凄いと思わない人はいないですよ!」
「そ、そうですか」
「おっとすみません、話が逸れてしまって…では入国の前に身分証を見せてもらえないでしょうか」
「ちょっと待ってください…どうぞ」
バノンが懐からカードを取り出し、門兵に渡した。
「少々お待ちを…はい、身分証明が完了しました、どうぞお入りください」
「皆―! 早く行こうよー!」
私達は門を通り街に入った。
街道を進んでいると街の人が私達を見ていた。
「見られてるね」
「そりぁそうだろ、街中に魔物が歩いてるんだから皆見るだろ普通」
「ヤタイズナさん達は街の注目の的だねー!」
「注目されても嬉しくないんだけどなぁ…ウィズ、君の家はどこなの?早く行こう」
「え、何で私の家に行くの?」
「お姉さんに会いに行くんじゃなかったの?」
今回の目的はウィズのお姉さんに会う事だ、なのでウィズの家に行けばいいはずだが…
「私の家に行ってもお姉ちゃんに会えないよ?」
「え?」
「お姉ちゃんは私の家には住んでないもの」
「あ、そういうことか」
つまり、結婚もしくは一人暮らしをしていて別の家に居るという事か、そうと分かれば話は早い。
「ウィズ、お姉さんはどこに住んでるの?」
「お姉ちゃんはあそこに住んでるよ」
私はウィズが指した場所を見ると、ここから少し先に大きな城がある。
「あそこって…城?」
「うん!お姉ちゃんはお城に住んでるんだよ!」
「へぇー」
どうやらウィズのお姉さんは城に住み込みで働いている人らしい、たぶんメイドか何かなんだろう。
「じゃあ早速城に行こう」
「ちょっと待て」
私達が城に行こうとするとバノンが私達を止めた。
「どうしたのバノン」
「どうしたも何も、いきなり城に行っても通してくれるわけないだろう普通」
「ああ…」
たしかに、よく考えたらドワーフのおっさんと魔物が城に行っても通してくれないかもしれない、私がそう考えていると。
「安心して! 私がお城の人お願いして入らせてもらうよー!」
「そんなこと出来るの?」
「私に任せておいてよ!」
ウィズが自信満々に胸を張って言う。
「そこまで言うならウィズに全部任せるよ、よろしくね」
「うん!」
「じゃあ早速出発しようか」
「あ、忘れてた!」
「どうしたの急に?」
「ごめんヤタイズナさん、私ギルドに調査報告をしなきゃいけなかったの忘れてたの、だから先にギルドに行くけどいいかな?」
「別に構わないよ」
「ありがとう!すぐに終わらせるからね!」
しばらく歩くとウィズが用のあるという冒険者ギルドが見えてきた。
「じゃあ皆ここで待っててねー!」
ウィズが冒険者ギルドに入っている間私達は建物の横に待機する。
その間も通行人が私達を見ていた。特に子供が私とガタクを見ていた。
「見たこと無い魔物だ」
「あの人が使役してるのか?」
「ひょっとして凄い冒険者なのか?」
「あの魔物カッコイイねー」
「うん、カッコイイ」
「あの一本角の魔物カッコイイね」
「私は二本角の魔物の方がカッコイイと思うな」
私とガタクがカッコイイ…ふふふそうだろう! やはりカブトムシとクワガタがカッコイイのは異世界共通なのだ!
「ふふふふ…」
「何いきなり笑っとるんじゃ、気味悪いぞ」
「いやだってミミズさんも聞いたでしょ? 私達がカッコイイって、私嬉しくて笑いが出ちゃったよ」
「何じゃお主ナルシストなのか?」
「違うよ、私はカブトムシとクワガタがこの世界の人から見てもカッコイイという事に感動して笑ってしまったんだよ」
「…よく分からんがお主がそれでいいなら儂は何も言わんが…」
「おいお前ら、喋ったら余計目立つぞ」
しばらくするとウィズがギルドから出てきた。
「お待たせー!」
「結構時間かかったみたいだけど何かあったの?」
「いやー知り合いの冒険者に挨拶してたら時間かかっちゃってー」
「そうか、じゃあ用は済んだし、城に行こうか」
「うん!」
そして街道を歩くこと数分、私達は城の前に着いた。ウィズが城門の前にいる兵士に話しかけた。
「バンさん、こんにちは!」
「ん? おお、ウィズちゃんじゃないか、どうしたんだ?」
「うん、実はお城に入りたいんだけど…」
「何だそんな事か、ウィズちゃんは入城の許可が入ってるからいちいち言わなくてもいいんだぜ?」
「あ、そうじゃないの! あそこにいる人たちをお城に入れてほしいの!」
「あそこにいるって…あの人と従魔達の事か?」
「うん、お願い!」
「んー…ちょっと待っててくれよ」
兵士が城の中に入っていく。
「大丈夫かな…」
「無理なんじゃないか」
「儂もそう思う」
そして数分後、ウィズがこっちに戻ってきた。
「入っていいってー!」
「…マジかよ」
「…嘘じゃろ」
「本当だよ! さぁ皆行こうよ!」
「分かった、行くぞ皆」
私達はウィズに連れられ城内に入る。そして城内にある庭園に来た。
「確かここにいるって聞いたんだけど…」
「ここにお姉さんが?」
「うん…あ、いたー!」
ウィズが庭園を真っ直ぐに走る。
ウィズが進む先に一人の少女が蝶と戯れていた。
私は少女を見る。
髪は山吹色のロングヘア―で瞳はライトグリーン、服装は白のドレスだ。
美しい顔立ちに均整の取れた体型をしていて、とても美しい。
ウィズも美少女だが、この少女は更に一段階上の美少女だ。
私がそう思っているとウィズが少女に話しかけた。
「お姉ちゃーん!」
ウィズが少女に抱き着く。
「ウィズ、急に抱き着いたら駄目よ、蝶々さんが飛んで行ってしまったじゃない」
「ごめんなさい、お姉ちゃんに会えて嬉しくなっちゃって…」
「ふふ、謝らなくてもいいわよ、別に怒ってないから、それで今日は何の用で来たの?」
「うん! 実はお姉ちゃんに会わせたい人たちがいるのー!」
「会わせたい人? 一体どんな人なの…」
少女が私達に気付いた。
「……」
「お姉ちゃん?」
少女は私達…というより私を見て固まった。
やはり魔物が目の前にいるからびっくりしているのか?
と私が思っていると。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「……か」
「か?」
「カブトムシさん来たぁああああああああああああああああああああ!!!!」
少女が突然叫びだした。
いきなりの事にヤタイズナ達が呆然としている中ミミズさんが小声で「…女版ヤタイズナか」と呟いていた。
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