第31話 運命の出会いⅡ
「カブトムシさん…カブトムシさんが私の目の前に…」
「お姉ちゃんどうしたの急に?」
突然叫び声を上げた後、嬉しそうな表情でぶつぶつと独り言を呟く少女をウィズが心配して話しかけている。
「カブトムシさん…やっぱりカッコイイ…」
「お姉ちゃん!」
「ハッ!? …大丈夫よウィズ、カブトムシさんが目の前にいたからちょっと動揺しちゃったの」
「そっかー、お姉ちゃんカブトムシ大好きだから喜んでくれると思ったんだけど…駄目だった?」
「駄目なわけないじゃない、私のためにカブトムシさんを連れてきてくれたんでしょ? ありがとうウィズ」
「えへへ…お姉ちゃんが喜んでくれて私は嬉しいよー!」
少女とウィズが私達の元に歩いてくる。
「ヤタイズナさん、紹介するねー! お姉ちゃんだよ!」
「初めましてヤタイズナさん、私はオリーブ・アメリア、アメリア王国の第二王女です」
「だ、第二王女様!?」
少女が自己紹介するとバノンが驚いていた。私も驚いている、ウィズのお姉さんがまさか王女とは。
「私にカブトムシさんを見せたいというウィズのお願いを聞いてカブトムシさんを連れてきてくれてありがとうございます、ヤタイズナさんにはお礼をしなければなりませんね」
「いや、その」
「お姉ちゃん、この人はバノンさんだよ」
「え? でもさっきヤタイズナさんと…」
「ヤタイズナさんはカブトムシさんの名前だよー」
「まぁ! 名前があるの!?」
「うん! しかもヤタイズナさんは喋れるんだよ!」
「ええっ!?」
「ね、ヤタイズナさん」
「どうも初めまして、ヤタイズナです」
「!!?」
私が喋ると王女様が震え始めた、やはりカブトムシが喋ったから驚いているのか?
「あの…王女様?」
「か、カブトムシさんがシャベッタァァアアアアアアアアアアアア!!」
王女様が超嬉しそうに叫んだ。
「カブトムシさんが喋った…私カブトムシさんに話しかけられた…」
王女様は再び嬉しそうな表情で独り言を呟き始めた。
「ねぇウィズ、この人が君のお姉さん?」
「うん、そうだよー」
「でも姓が違うよね、どういう事?」
「うん、それはねー」
話を聞くと、ウィズと王女様は幼馴染だそうだ。
ウィズの父親と国王は十年来の親友でウィズは父親に連れられてよく城に来ていたらしい。
ウィズはひとりっ子だったらしく、子供の頃からよく王女様と遊んでいたとか。
優しくて綺麗な王女様をウィズは実の姉のように慕ったらしい。
「だから私にとってお姉ちゃんはいつまでもお姉ちゃんなの」
「なるほど、ところで王女様はいつ戻るの?」
「わかんない、こんなお姉ちゃん始めて見たよ」
「カブトムシさん…」
王女様はうっとりとしている。
「よく見とけヤタイズナ、お主いつもこんな感じじゃぞ」
「え、私こんな感じなの!?」
私は王女様を見る、…そうか、トリップしてる時の私はこんな感じなのか。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ハッ!? …ごめんなさい、カブトムシさんが喋った事に驚いてしまって…改めて、よろしくお願いしますヤタイズナさん」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「あの…ヤタイズナさん、会っていきなり失礼かと思いますけど…ヤタイズナさんを触ってもよろしいでしょうか?」
「はい、構いませんよ」
「本当ですか! で、では触りますね」
王女様が私の上翅にゆっくりと触る。
「ふわああ…」
王女様はうっとりとした表情で私の上翅を撫で、そのまま私の角を触った。
「本物のカブトムシさんに触れる日が来るなんて…私、幸せ…」
王女様はとてもいい笑顔で私の角を撫でていた。
本当にカブトムシが好きなんだなぁ…とりあえず王女様が満足するまで待つとするか。
…30分後。
「うふふふふ…」
「…あの、王女様?」
「なんですかー?」
「まだですか?」
「まだですよー」
「そうですか…」
王女様が私を撫で始めて30分は経つが、王女様はまだ私を撫でている。
おかげで私は身動きが取れずにいる。
「はぁぁ…幸せぇぇ…」
「お姉ちゃんが幸せそうで私は嬉しいよー♪」
「…しかしこのクッキー美味いのう」
「クッキー…何と美味な食べ物で御座ろうか」
(おいしい~♪)
「この紅茶も美味いな」
私が王女様に撫でられている間ミミズさん達は庭園でティータイムを満喫している。
いいなぁ…私もクッキー食べたいなぁ…
―一時間後、王女様は満足したらしく私を撫でるのをやめた。
「はぁぁ…幸せな時間でした…ありがとうごさいますヤタイズナさん」
「は、はい…」
疲れた…まぁ王女様の気持ちも分からないわけではない、私も写真などでしか見たことがない昆虫を生で見たときはテンション上がりまくるからなぁ。
「ところで王女様」
「オリーブです」
「え?」
「王女様なんて他人行儀ではなくオリーブと呼んでください」
「えっと…オリーブ様」
「様も要りません」
「いや、流石に王女様を呼び捨てには…」
「構いません」
「わ、分かりました…オリーブ」
「はい! 何でしょうか!」
オリーブが笑顔で迫って来た。
「あの…カブトムシが喋った事に驚かないんですか?」
「何言ってるんですか! 目の前に本物のカブトムシさんが現れて更に会話出来るなんて…私幸せ過ぎてどうにかなっちゃいそうですよ」
「そ、そうですか…」
「はい!」
「ふふっ、お姉ちゃん嬉しそうー」
「どうでもいいがクッキーのおかわりはまだかのう」
「もっと食べたいで御座る!」
(ぼくもー!)
「お前ら遠慮がねぇな…」
ミミズさん達がクッキーのおかわりをねだっている、結局クッキー食べれなかったなぁ…
「そう言えば紹介するのを遅れましたけど、あそこにいるのは私のしもべのガタクとスティンガーです」
「あれはクワガタムシさんとサソリさんですね!」
オリーブがガタクとスティンガーの元に向かう。
「初めましてオリーブ・アメリアです」
「拙者はガタクで御座る! よろしくで御座る!」
「あなたも喋れるんですね! あの、良ければ大顎を触っても良いですか?」
「良いで御座るよ!」
「ありがとうございます! では早速…」
オリーブがガタクの大顎に触る。
「とても綺麗で立派な大顎ですね、それによく手入れされています」
「ありがとうで御座る! 毎日欠かさず磨いているおかげで御座る!」
「たゆまぬ努力の結果と言う事ですね、触らせてくれてありがとうごさいます」
(ぼくスティンガー! よろしくねー♪)
「初めまして可愛いサソリさん、立派な尻尾ですね…触っても良いですか?」
(いいよー!)
「良いらしいで御座るよ」
「ありがとうございます」
オリーブがスティンガーの尻尾を触る。
「素晴らしい尻尾ですね」
(ほめてもらえてぼくうれしいよー!)
「褒められて嬉しいそうで御座る」
「ふふっ、どういたしまして」
「おい、クッキーのおかわりはまだか」
「まぁ、ミミズさんも喋るんですね、初めましてミミズさん、あなたもヤタイズナさんのしもべさんですか?」
「違う、儂は元魔」
「ミミズさんは非常食です」
「まぁ、そうなんですか?」
「違うわ! おいヤタイズナ、いくら儂がいつも食い物扱いされとるからってその説明は無いじゃろうが!」
「いい加減認めた方が楽になると思うけど?」
「認めん! 儂は絶対に認めんぞ!」
「ふふっ、ヤタイズナさんとミミズさんは仲良しなんですね」
「仲良くなんかないわっ!」
「珍味さんまた照れてるー」
「照れて無いと言っとるじゃろうが!」
「あー…盛り上がってる所悪いがそろそろ夕方だけど、どうすんだ?」
「あ、本当だ」
「まぁ着いたのが昼過ぎだったからなぁ…どうしようか?」
「今日はもう遅いし、私の家に来る?」
「ウィズ、いいの?」
「うん、お父さんはしばらく家に帰ってこないし、今日は皆私の家に泊って行けばいいよ!」
「じゃあお言葉に甘えるとするか」
私達が帰ると聞いたオリーブはがっかりしていた。
「もう帰っちゃうんですか…明日また来てくれますか?」
「しばらくはここにいるつもりなので、来ていいと言うならいつでも来ますよ」
「本当ですか!? 私待っていますのでいつでも来てくださいね!」
と言うわけで私達は城を出てウィズの家に行くことにした。
…一方その頃、アメリア王国の東側から魔物の群れがアメリア王国に向かって来ていた。
そして、『あいつ』もまたヤタイズナ達を追って王国近くまで来ていたのだった。
「第4回次回予告の道―!」
「さあ今回も作者の思い付きでこのコーナーが始まったぞ!」
「ついにお姫様が登場したね」
「儂のコーナーを乗っ取ろうとした不届き者のことなどどうでも良いわ!」
「ミミズさん…今回なんか荒れてないか?」
「当たり前じゃ! 最近本編でも出番が少ないと言うのにこのコーナーまで乗っ取られたら儂の陰が薄くなる一方ではないか!」
「気にしてたんだね…でも安心してミミズさん! 次回はミミズさんの出番は多いみたいだよ!」
「マジか!? それだけで儂のテンションはほぼマックスじゃ!」
「それでは次回『黒い悪魔と天敵再び』!」
「…天敵? ま、まさかと思うがあ奴の事ではないだろうな!?」
「それでは次回をお楽しみに!」
・注意、このコーナーは本当に作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意ください。
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