第27話 落下物
どこかで聞いたことがあるようなスティンガーのセリフを聞き、私は空を見上げる。
「きゃああああああああああああああああああ!?」
そこには天高くから落下してくる女の子が…女の子!?
「な、何で空から女の子が!?」
「ふむ…これが紐無しバンジーという奴か? 何とも斬新な遊びじゃのう」
「んな分けあるか! ていうかミミズさん本当にどこまで私の記憶を見たの!?」
「あの落下速度だとあと1分程で地面に激突するで御座るな」
「冷静に状況説明してる場合か! 仕方ない…」
私は空を飛び女の子の元まで向かった。
「ふん!」
「きゃあああああああああ…あれ?」
私は落下してくる女の子を角でキャッチし、そのままゆっくりと降下していく。
「君、大丈夫?」
「え!? カブトムシが喋ったー!?」
女の子は私が喋った事に驚いていたが私は別の事で驚いた。
「君カブトムシを知ってるの!?」
そう、この世界の人間がカブトムシを知っていることに驚いたのだ。
バノンはカブトムシの事を知らなかったのに何故この女の子はカブトムシを知っているのかとても気になるが、とりあえず私はこの女の子を地面に降ろした。
「君、聞きたいことがあるんだけど…」
「助けてくれてありがとー! あなたは命の恩人だよー!」
女の子は私の前脚を握りお礼を言った。
「私、ウィズエル・ユアンシエル! ウィズって呼んでね!」
「あ、はい」
聞いてもないのに名前を名乗って来たぞこの子。
「ウィズ、君何で空から降って来たの?」
「うん! 実はねー私冒険者なんだけどー、依頼でこの森の調査に来たの! そしたらね、いきなり目の前から竜巻が来たの!」
「竜巻?」
「うん! それで竜巻に巻き込まれてそのまま空から落下したの、そしたらあなたが助けてくれたの!」
「なるほど…」
つまりウィズはこの森に用があり東の森を探索していたら竜巻に巻き込まれて天高くに吹き飛ばされ、そして落下地点に私達がいたと言う事か。
「ミミズさん、どう思う?」
「恐らくその竜巻はスキルによる物じゃな」
「やっぱりそうかな?」
「うむ、間違いないじゃろう」
「そのワームも喋るんだ!すごーい!」
ウィズは目を輝かせながらミミズさんを見た。ミミズさんはエッヘンと胸を張る。
「ふふん、儂が凄いと分かるとはお主見る目があるのう」
「うん! 私白いワーム何て初めて見たよ! どんな味がするんだろー」
「どんな味ぃ!?」
ミミズさんは物凄い速さで私の後ろに隠れた。
「き、貴様儂を食い物として見ているのか!?」
「? うん、ワームはかば焼きにすると美味しいからたまにたべるよ?」
「か、かば焼きじゃと…ヤタイズナの記憶の中にあったあれか!?」
「ミミズさん本当にどこまで見たの!?」
「かば焼き?…よく分からんで御座るが…美味な響きで御座るな」
(うん! おいしそうなひびきだねー)
(確かにそうですね)
ガタク達の視線がミミズさんに集中している。
「な、何じゃお主ら!? なぜ儂を見るのじゃ!」
「まぁそれはいいとして」
「良くないわ!」
「ウィズ、君は何でカブトムシを知ってるのか理由を教えてくれないか?」
私が知りたいのはそこだ、ウィズがカブトムシを知っている理由を私は知りたい。
「理由?」
「そう、理由!」
「んっとね、お姉ちゃんに教えてもらったんだー」
「お姉さんに?」
「うん! お姉ちゃん虫が大好きなんだよー! 私小さい時からお姉ちゃんに虫について色々教えてもらってたんだー」
成程…そのお姉さんに会って見たいものだな。
「ところでカブトムシさん、あなたネームド?」
「ネームド?」
「知らねぇのか? ネームドって言うのは名前持ちの魔物の総称だよ」
「ミミズさん、初耳なんだけど」
「教えて無いからのう!」
開き直りやがったこのミミズ!
「ねぇ、どうなの?」
「うん、そうだよ」
「やっぱりネームドなんだ! すごーい! 私ネームドなんて初めて見たよー!」
「というかここにいる全員が名前持ちだけど…」
「嘘!? すごーい!」
ウィズは目をキラキラと輝せてはしゃいでいる。
「とりあえず自己紹介するね、私はヤタイズナ」
「拙者はガタクで御座る!」
「儂がミミズさんじゃ!」
「他の奴らは喋れないから私が紹介するね、右からスティンガー、ソイヤー、そしてあっちにいるのがテザー、レギオン、木にくっついている蛹がパピリオだよ」
「俺はバノンだ、よろしく頼むぜ」
「すごーい! お姉ちゃんが見たら大喜びする光景だよー!」
「そのお姉さんは本当に虫が好きなんだね」
「うん! お姉ちゃんは特にカブトムシが好きなんだー」
「ほほう、そのお姉さんとは趣味が合うな」
これは是非会って昆虫談議に花を咲かせたいものだ。
「そうだ! ヤタイズナさん、お姉ちゃんに会って見ない?」
「え?」
「そうしようよ! お姉ちゃんカブトムシに会いたいってずっと言ってたもん! ねぇいいでしょ? 私の国に行こうよ!」
「えーっと…」
是非会っては見たいけど…今の私は魔物だけど大丈夫なのだろうか? 第一そのお姉さんが好きなのは普通のカブトムシじゃないのか? 私がそう考えているとミミズさんが怒っていた。
「貴様阿保か!人間の国なんかに行ったら儂らは人間に攻撃されるかもしれんじゃろうが!」
「むぅー、珍味さんは黙っててよ、私はヤタイズナさんと話してるの!」
「誰が珍味じゃ! 儂の名前はミミズさんじゃ! 貴様わざと間違えとるじゃろう!」
「ミミズさん、最初は何だかんだ言ってたけど本当はその名前気に入ってくれてたんだね」
「勘違いするな! 珍味と言う名前よりはましと言うだけじゃ!」
ミミズさんがふてくされてそっぽを向いた。
「ねぇいいでしょ? 私の国に行こうよ!」
「いや、そう言われても…」
「何で駄目なのー? お姉ちゃん凄い美人だよ? 会って損はないよ?」
「いや、美人とかそういう問題じゃないんだけど…」
しかし美人か…私は女性に対してそんなに興味はない、しかし美人と聞くと少し興味が湧いた。
今私の前にいるウィズも人間基準なら美少女の部類に入るだろう。
髪はレモン色で体型はやや小柄の可愛らしい美少女だ。
これで今着ている甲殻鱗鎧(スケイルアーマー)ではなくドレスを着たらさぞかしモテるだろう。
そのウィズが美人だと言う女性、どんな容姿か見てみたいとは思うところだ。
「けどミミズさんが言った通り魔物が国に入ったら危険なんじゃ…」
「うーん…そうだ! 従魔として国に入れば問題ないよー!」
「従魔?」
「従魔っていうのはねー、人が使役する魔物のことだよー!」
「ごめんもうちょっと詳しく説明してくれない?」
「なら俺が説明してやろうか?」
「バノン、よろしく頼むよ」
「ああ、任せとけ」
バノンが従魔について説明してくれた。
魔物の中には人間に懐く者も存在するらしく、人間に懐き使役された魔物の事を従魔と言うらしい。
他にも召喚術と呼ばれる術で召喚される特殊な魔物もいるらしい。私の昆虫召喚は後者の部類に入るだろう。
「だからね、ヤタイズナさんが従魔のフリをすれば国に入っても問題ないんじゃないかな?」
「それはいい案だと思うけど…そもそも従魔と野生の魔物の区別ってつかないの?」
「確か従魔は身体に従魔だと分かるような物を付ければよかったと思うよ?」
「首飾りとか腕輪とかそんな感じでいいの?」
「うん! 大丈夫だと思うよ!」
「バノン、木の腕輪とか作れるか?」
「任せときな、ドワーフの俺にかかれば一時間で作れるぜ!」
「そうか、じゃあ頼む」
「おう!」
バノンが後ろに走って行く。
「これで一緒に行けるねー♪」
「そうだね、ところでウィズ、そのお姉さんのいる国ってどこなの?」
「うん、国名はー…」
(魔王様ー!)
ウィズと話しているとレギオンが慌ててこちらにやって来た。
「どうしたんだレギオン、そんなに慌てて」
(はい! 実は巣の中にあった卵が…)
どどどどどど…
「な、何だ!?」
突然の地響きに驚いていると目の前から何かが転がって来た。
まさかまたローリングコガネか!?
と思ったが、目の前から来たのは…
「昆虫の卵!?」
そう、転がって来たのは前に召喚した2メートルの昆虫の卵だったのだ!
昆虫の卵はそのまま真っ直ぐに私達に転がって来た。
「うおおおっ!?」
私達は昆虫の卵を避けたが昆虫の卵はそのまま目の前の木に激突した。
「何で昆虫の卵が転がって来るんだ!?」
(実は巣の拡張中にいきなり卵が動き出したのであります、そのまま巣の中からでてここまで来てしまったのであります)
「なにこれ!? こんな卵始めて見るよー!」
昆虫の卵は木に激突した後動かなくなったかと思うと、卵にひびが入り始めた!
「ついに生まれるのか!」
「なになに!? 何が生まれるのー!?」
ピキピキ…バリィン!
「キシャアアアアアアアアアアアアアア!!」
ついに卵が割れ、中から虫が姿を現した!
「第一回、次回予告の道ーー!」
「…あのーミミズさん?」
「む? どうしたヤタイズナ?」
「いきなりどうしたの? 次回予告とか言ってさ」
「ふふふ…このコーナーは作者の思い付きで作られたコーナーなのじゃ!」
「いや作者って…世界観崩してどうするんだよ」
「安心せい…このコーナーは本編とは隔離された世界…すなわちどんなメタい発言してもオールオッケーなのじゃ!」
「いやメタい発言て! 色々と大丈夫かこのコーナー!?」
「さて、新キャラ登場と言う事で、これから物語をどんどん進めていくぞ!」
「そうだね、ついに巨大昆虫の卵が孵化したもんね」
「うむ! 実はこの昆虫の卵、出したのはいいんじゃが生まれてくる虫は何にするか作者はくそ悩んでのう…悩んだ結果ついにこの卵を孵化させることにしたのじゃ!」
「一体どんな虫が生まれるのか今から楽しみだなー♪」
「うむ! ちなみにこのコーナー、作者の思い付きで書いているので第二回がいつになるかは未定なのじゃ!」
「本当に色々適当だな…」
「む! いかんもう時間じゃ! では次回『綺麗な花には鎌がある』!お楽しみにじゃ!」
「次回のタイトル言っただけで予告全然できてないよ!?」
「「それでは、次回をお楽しみに!」」
・注意、このコーナーは本当に作者の思い付きで作ったので次の話のタイトルが変更される可能性があります。ご注意ください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます