第25話 カブトvsニセハナマオウカマキリ
来た! ついに来ちゃったよ! カマキリ界の魔王様、ニセハナマオウカマキリが!
ニセハナマオウカマキリはカマキリ目ヨウカイカマキリ科に属するカマキリで、ケニアなどに生息している種だ。
幼虫の時は身体が褐色だが成虫なると鮮やかな迷彩模様になる。
その見た目の美しさとカッコよさからマニアの中でも憧れのカマキリなのだ! いやー本当にカッコイイ! まさかこの世界で見られるとは思ってもみなかったよ!
本当にカッコ良すぎる! 虫とは思えないこの異形の姿が虫好き達の心を射抜いたのだ!
だって考えてもみてよ? 漢字で書くと偽花魔王蟷螂だぞ! こんな名前のカマキリがカッコ悪いわけ無いじゃないか! いや本当にカッコイイんですけど…何なの? このフォルム! マジでカッコ良すぎるよ…
「いい加減戻ってこんかこのたわけ!」
「あ痛っ!?」
ミミズさんが私に体当たりしてきた。
「な、何するんだよミミズさん!?」
「何するんだ、じゃないわ! あ奴を見てからまたいつもの状態になっとったぞ! いい加減それ何とかならんのか!」
「え、本当!?」
どうやらまたトリップしてたみたいだ…だって仕方なくない? こんなにカッコイイカマキリが目の前に出てきたら誰だって興奮するんじゃないか?
「…話は終わったか?」
「あ、うん」
「では改めて聞くがお前が南の王か?」
「南の王?」
確か称号で南の森王ってあったな…やっぱり何か意味がある称号なのか?
「南の王かと聞いている」
「はい、たぶんそうだけど」
「そうか」
「ところで貴方は誰ですか?」
「我は東の森王、お前に興味があってここに来た」
「東の森王?」
さっきから南とか東とかよく分からないんだけどどうゆう事? そう考えた時バノンが声を上げる。
「東の森王!? マジかよ!」
「バノン、何か知ってるの?」
「知ってるも何も、東の森王はこの大樹海の東を支配する魔物じゃねぇか!」
「え、マジで!?」
ん? と言う事はつまり…
「私が南の森王ってことは…私が南の森の支配者ってこと!?」
「…知らなかったのか?」
「南の森の支配者じゃと!? お主それは本当か!?」
「ち、ちょっと待ってて、確認するから」
私は鑑定で称号を確認した。
称号:南の森王
ランド大樹海の南の森の頂点に立つ者の証。
どうやら私は本当に南の森の頂点になったらしい。
アントエンプレスを倒した時手に入ったからあの時何かの条件を達成したようだ。
「で、どうなのじゃ?」
「あ、うん、どうやらそうみたい」
「おお! そうか!」
「…何で嬉しそうなの?」
「お主が南の森の支配者になったんじゃぞ! これが嬉しくないわけ無いじゃろうが!」
「凄いで御座る! 流石拙者が惚れ込んだ殿で御座る!」
(ごしゅじんすごーい!)
(おめでとうございます主殿!)
(ご主人、凄い、俺尊敬する)
(やはり魔王様は素晴らしいお方であります!)
「あ、ありがとう皆」
ガタク達が私を褒め称えている…ていうかレギオンは作業中じゃなかったっけ?
「…話を続けていいか?」
「あ、どうぞ」
「先程も言ったが、我はお前に興味を持ったのでお前に会いに来た」
「あの…それで私に何の用?」
「用と言う程の事ではない、お前と戦いに来ただけだ」
「……え?」
「聞こえなかったのか、我はお前と戦いたいと言ったのだ」
「ちょっと待って! 何で戦わなくちゃいけないの!?」
「南の森王であるお前の力を見てみたいだけだ、行くぞ、《暴風》」
「!?」
東の森王の言葉の後、謎の突風が起き、私は吹き飛ばされる!
「ヤタイズナ!」
「殿ぉ!?」
(ごしゅじん―!?)
「くっ!」
私は翅を広げ空中に留まる。
どうやら300メートル程飛ばされたらしい。
「《暴風》」
「ぐぅ!?」
突然上から突風が吹き私は地面にたたき落とされた!
「くぅぅ…」
地面に落ちた私は立ち上がる、その瞬間私の目の前に東の森王が現れた!
東の森王が私に向けて鎌を振る!
「くぅっ!」
私はギリギリ攻撃を回避する!
「中々の回避速度だ、これはどうだ、《斬撃》」
「な!?」
東の森王が鎌を振り、巨大な斬撃が私に襲いかかる!
「ちぃっ!」
私は斬撃を回避する! 斬撃はそのまま真っ直ぐに木を切り裂き進み続けている。
なんて威力だ、ガタクの斬撃とはレベルが違う! 東の森王は再び私に斬撃を繰り出す!
私は斬撃を避ける!
東の森王が斬撃を繰り出す!
避ける!
繰り出す!
避ける!
繰り出す!
その繰り返しだ!
気付けば私達の周りの木は切り倒され、まるでこの場所だけ台風が来たようだった。
「斬撃は効果が薄いと見えるな…これはどうだ、《大鎌鼬》」
東の森王の周りに巨大な風の刃が出現する! そしてヒュンという音を立て私に向かって来る!
「《炎の角》!」
私は角を風の刃に目掛けて振りおろし相殺する! しかし次々と風の刃が私に襲いかかる!
「はぁ!」
炎の角で風の刃を打ち消していく! 東の森王が私目掛けて突進してきた!
「喰らえ!」
「おらぁ!」
東の森王の鎌と私の角がぶつかる! 私はぶつかったときの衝撃に耐えきれず後方に吹き飛ぶ!
「ぐわぁ!」
「炎の角か、中々面白い技を持っているな、我も似たような技を持っているぞ、《風の鎌》!」
東の森王の鎌が風を纏い始めた!
「行くぞ!」
東の森王が私に向かって来る! 私はすぐに態勢を整え東の森王に炎の角を振り下ろす!
「無駄だ!」
東の森王が鎌を振り下ろすと突風が起き私は吹き飛ばされる!
「ぐぅぅぅ!」
私は脚で地面を掴み飛ばされないように踏ん張る! しかし東の森王が追撃してくる!
「はぁっ!」
鎌が私目掛けて振り下ろされる! 私は咄嗟の判断で地面から脚を離し、風で後ろに吹き飛ぶ!
「ほう! その避け方は想定していなかったぞ!」
東の森王が楽し気に叫ぶ! 私は地面に着地し東の森王を見る。
「もっとだ、もっとお前の力を見せてみろ!」
「くっ…」
どうする? 東の森王は強すぎる、今の私では絶対に勝てない相手だ。
東の森王は恐らく手加減している、手加減していてあの強さ! 冗談じゃない!
どうする? 炎の角でもあいつに傷一つけられない、炎の角と超突進の合体技を使えば何とかなるかもしれないがもし失敗したらそこまでだ。
糞…何で私は遠距離スキルを持ってないんだ……今の私にできることと言えば角で物を投げるぐらいしか……待てよ?
私はある考えが閃いた、これならいけるかもしれない!
私は後ろに走る!
「逃げるのか? ……残念だ、もっと楽しみたかったのだがな……《大鎌鼬》」
東の森王が風の刃を私に向かって放とうとしている、私は走るのを止め、東の森王を見る。
「ん? 諦めたわけではなさそうだな…何か来る」
東の森王が私を警戒する、私はあるスキルを使用した!
「《昆虫召喚》!」
光とともに大きさ60センチ程の昆虫の卵が出現する!
「…なんだそれは? それがお前の最後の技か? 下らない、待って損をした! お前に興味を持ったのは間違いだったようだ!」
「間違いかどうかはこれを喰らってから考えろ!」
私は野球選手のように角を構えそのまま昆虫の卵に向かって振り下ろす!
「オラァァァァァァッ!!」
カキィィィィィィン!
昆虫の卵が高速回転しながら東の森王目掛けて打ち出される!
「無駄な事を」
東の森王が昆虫の卵に向けて風の刃を打ち出す!
風の刃が昆虫の卵に命中!
しかし風の刃は昆虫の卵に当たった瞬間にかき消えた!
「何!?」
東の森王が驚愕している。昆虫の卵はそのまま突き進み東の森王の胸部に突き刺さる!
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
東の森王が悲鳴を上げる! 突き刺さった昆虫の卵は高速回転を続け東の森王胸部を抉り、突き進んでいく!
そして、ついに昆虫の卵が東の森王の身体を貫通した!
「ギ、がああぁぁぁぁぁぁ!?」
昆虫の卵は東の森王の身体を貫通すると同時に勢いを無くし地面に落ちた。
東の森王は悲鳴を上げ地面に倒れ込んだ。
「どうだ! これが私の新しい技だ!」
昆虫の卵のユニークスキル絶対防殻はどんな攻撃も全て遮断するスキル、しかも外からでは絶対に壊せないと言う事は相手に向けて投げれば破壊不能の最強の弾丸と化すと言う事だ!
まぁ昆虫召喚は三日に一度しか使えないから結局ここぞという時にしか使えない技だけど。
「……く、くはははははははははははは…」
地面に倒れている東の森王が笑い始めた。私は即座に戦闘態勢を取る。
「くはははははははははははは!!!」
東の森王はそのまま立ち上がり私を見た。
「面白い! 面白いぞ! 我の身体に穴を開けるとは実に面白い奴だ! 気に入ったぞ!」
東の森王が楽し気に話す。
「お前は生かしておく! そして強くなれ! 強くなったら再び我と戦え!」
どうやら東の森王は私を生かし、強くなってから戦いたいようだ。
「お前! 名前はあるのか」
「…ヤタイズナだ」
「ヤタイズナか、覚えたぞ! 我は満足した! お前達帰るぞ!」
東の森王はそのまま東の森方面に向かい始めた。
東の森王の声を聞きキラーマンティス達も東の森へと戻り始めた。
「さらばだヤタイズナ! 我は楽しみに待っているぞ! くはははははははははははは!」
東の森王は高笑いを上げながら帰っていった。
「…あ、鑑定するの忘れてた」
私は帰っていく東の森王に鑑定を使いステータスを確認した。
ステータス
名前:無し
種族:ディアボリカ・マンティス
レベル:200/300
ランク:A+
属性:風
称号:東の森王、殺戮者
スキル:斬撃
エクストラスキル:風の鎌、大鎌鼬、昆虫の重鎧、暴風
ユニークスキル:死神の暴風刃
うん、なんというか、手加減してくれていたとはいえよく死ななかったな私。
よし、あいつを倒せるぐらいにならないと立派な魔王になれないだろうし、これからも頑張って強くなるぞ!
私は新しい決意を胸に卵を持ってミミズさん達の元へ帰っていった。
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