第24話 東の森王

ランド大樹海周辺国家にはとても短い歌がある。


「南は安全、東西危険、北には絶対近寄るな」


この歌の通り南は人が入り込んでも多少は安全だった。


…今までは。



東の森…西の森と争い続けるこの森は蟷螂系の魔物が多く生息していて、その多くはBランクの強さを有している者ばかりだ。 


東と西の森王は長い間、争い続けて来た。


そんなある時ランド大樹海全体にあるメッセージが届く。


《南の森王が現れました。》


そう、南の森に王が現れたのだ。


今まで南の森に興味がなかった東の森王はある思いが浮かんだ。


「南の王に会ってみたい」


東の森王はしもべを引き連れ南の森に向かった。















「…う、ううん…」

「…目を覚ましたか」

「ミミズさん、…ここは巣の中か」

「うむ、お主が以前よりも重くなったので苦労したぞ?」

「そうか…ガタク達はどこ?」

「ああ、その事じゃが…」

「非常食殿! 大変で御座る!」


ガタクが巣の中に入って来る。


「おお、目が覚めましたか殿!」

「どうしたんだ? そんなに慌てて」

「そうでした! 外に来てくだされ!」


私とミミズさんは外に出る。


「一体何…!?」

「ギチチチ」


外に出ると、そこには大量のアント達がいた!


「な、なんでアント達がここに!?」

「いや、朝方ここにやって来たので御座るが…何を言っているのか分からないので御座る」

「ギチチチ」


アント達に敵意はないようだ。


「成程…ミミズさん分かる?」

「分かるわけ無いじゃろうがたわけ」

「ど、どうしたの、何か機嫌悪そうだけど」

「何でもないわ!」

「ギチチチチ」

(へぇ~そうなんだー)

「分かるのかスティンガー!?」

(うん! わかるよー!)

「それでこいつらは何て言ってるんだ?」

(ちょっとまっててねー)


スティンガーがアント達の元に行く。


「ギチチチ、ギチチ」

(ふむふむ)

「ギチチチ」

(わかったーちょっとまってねー)


スティンガーが私達の元に戻って来る。


「何て言っているんだ?」

(ごしゅじんのもとではたらきたいんだってー)

「え!?」


私はアント達を見る。


するとアント達が私に向かって頭を下げていた。


「何で私に?」

(えっとね、じょうおうをころしたごしゅじんこそがつぎのあるじだといってるよー)

「そ、そうか…」


スティンガーの話だと、どうやらアント達の女王は数匹の女王候補が戦い勝ち残った者がアントクイーンになるらしい。 


だからアントエンプレスを倒した私がアント達の王と言う事なのだろう。


「ミミズさんはどう思う?」

「たわけが、そんなの決まっているじゃろうが…全員しもべにするのじゃ!」

「あ、やっぱり?」

「うむ! これ程の戦力が一気に手に入ることなど滅多にないぞ! ほれさっさとこやつ等をしもべにせんか!」

「わ、わかったよ…お前たち! 今日から私がお前たちの主だ! 存分にその力を私の元で使うがいい!」


「「「「ギチチチィィィィィィィィィィィィ!!」」」」


アント達が嬉しそうに声を上げる。 


こうしてアント達が私のしもべになった。


アーミアントが100匹、ソードアントとシールドアントが50匹づつ、計200匹だ。


私はアーミーアント達のなかで一番大きな個体にレギオンという名前を付けた。


(了解であります! 自分はレギオン! 我らは魔王様に忠誠を誓い、魔王様のためにこの命を捨てる覚悟であります!)

「あ、うん、これからよろしく頼む」

(了解であります!)


うん、何か軍人風の喋り方だな…アーミーアントだからかな?


まぁ大変なのはこれからだ。


まず私達は巣の増設を始めた、さすがに今の巣では200匹も入らないしな。


私はレギオン達に巣の増設作業を任せた。


(了解であります! 全身全霊で作業するであります!)



レギオン達は巣の増設を始めた、ものすごいスピードで作業が進んでいる。


このペースなら今日中に巣の増設は終わるだろう。


とりあえず私は今の自分のステータスを確認することにした。











ステータス

 名前:ヤタイズナ

 種族:フレイムビートル

 レベル:15/50

 ランク:B

 称号:初級者魔王、昆虫の召喚師、南の森王

 属性:虫

 スキル:上位鑑定、風属性耐性レベル1、超突進、角攻撃、昆虫の鎧、酸耐性レベル3、火属性耐性レベル1

 エクストラスキル:炎の心(フレイムハート)、炎の角(フレイムホーン)

 ユニークスキル:昆虫召喚レベル1











南の森王? よく分からないが称号が一つ増えている。


ちなみに私の姿はヤマトビートルの色違いみたいな感じだ。


進化っていうから姿が変わるかと思ったがそんなことはなかったな…


あと今回の戦いでガタク達もレべルアップしたようだ。


その中でスティンガーとソイヤー、パピリオが進化したのだ。


スティンガーはデススコルピオンという1メートル程のサソリに進化し、ソイヤーはビックホワイトロングホーンビートルという種族に進化した。


そしてパピリオは…


「殿、ここで御座る」

「…あれか?」


私は木の枝にぶら下がっている巨大な蛹を見る。


そう、パピリオはクリサリスという蛹に進化した。


私が眠っている間に木の上で進化したらしい。


「どうするで御座るか?」

「そのままにしておこう」

「分かったで御座る」


私はパピリオが蝶になるのを楽しみに待つことにした。


「ミミズさん、レギオン達の調子はどう?」

「うむ、順調じゃぞ! このペースならもうじき終わるじゃろう」

「そうか…ところで彼はどこに?」

「呼んだか?」


私達の元にドワーフがやって来る


「助けてくれてありがとよ魔王さん」

「礼なんていらないよドワーフさん」

「おいおい、種族名で呼ばないでくれよ…俺はバノンだ、よろしくな」

「よろしく、ところでバノンはこれからどうするの?」

「まぁ何だ…商売道具も全部なくなっちまったし、しばらくあんたらの所に置いてもらえねぇか?」

「お主それでよいのか?」

「ああ、荷馬車作って王国まで行くにも時間がかかるし…何よりあんたらといた方が面白そうだしな!」

「お主最後の言葉が本音じゃろうが」

「ははははは! まぁそんなわけでしばらく厄介になるぜ!」


バノンがしばらく私達と一緒に暮らすことになった。


まぁこの森以外の情報も欲しかったしちょうどいいか。


そう考えた時ミミズさんが何かに気付いた。


「ヤタイズナ! 後ろから何か来るぞ!」


私は後ろを向く!


そこには2メートルの巨大蟷螂がいた。


あれはたしかキラーマンティス! 何でここに!?


さらに後ろからキラーマンティスがもう一匹出てきた!


「キシャアアァァァァ!」

「やる気か! ミミズさん達は下がっていてくれ!」

「殿! 何事で御座るか!」

「ガタク! 気を付けろ! あいつら強いぞ!」


今の私は進化して強くなっている、何とかなるかもしれない!


私は戦闘態勢を取る! しかし。


「静まれ」

「ギシャ!?」


キラーマンティス達が怯えている。


キラーマンティス達の後ろから一匹の蟷螂が出てきた。


その蟷螂は全長3メートルはあり身体は緑色と白の鮮やかな迷彩模様、その姿は異形だが禍々しくも美しかった。


「お前が南の王か?」


私はこの蟷螂を知っている、知っているからこそ凝視していた。


「おい、聞いているのか?」


「…に」

「に?」


私はやっと口を開く、そして。


「ニセハナマオウカマキリ来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


私は歓喜の叫びを上げた。

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