第19話 軍隊蟻
オ・ケラと遭遇してから3日が経過し、私とミミズさんは巣の中で話していた。
「……生まれないね」
「そうじゃのう……」
前に召喚した2メートルの昆虫の卵は未だに生まれてこない。
いつ生まれるのだろうか?
ちなみにオ・ケラと戦ったとき召喚した昆虫の卵はすぐに生まれた。
今回の卵から生まれたのはテールシザーで全長は60センチ程だ。
名前はテールシザーを略してテザーにした。
私とミミズさんは巣の外に出た。
「ミミズさん、ミミズさんが召喚したとき一番長く生まれなかった卵はどれぐらいかかったの?」
「確か10日ぐらいだったかのう」
「そうか……」
この卵を召喚してからすでに10日経とうとしている、一体何が生まれてくるのだろうか……
そんな事を考えていると後ろの茂みから音が聞こえてきた。
「なんだ?」
後ろを振り向くと、そこには全長50センチ程の巨大蟻がいた。
私の知識ではこの巨大蟻はクロオオアリ、ハチ目アリ科、ヤマアリ亜科オオアリ属に分類されるアリの一種でムネアカオオアリと並んで日本に分布するアリの中で最大の種だ。
全身が光沢のない黒灰色だが、腹部の節は黒光りし、また腹部には褐色を帯びて光沢のある短い毛が密生している。
開けた場所の乾燥した地面に好んで営巣するので、畑や林道などのほか、住宅地や公園など都市部にも多く生息しており、アリの中では大型なのも相まって人目につきやすく、クロヤマアリ、トビイロケアリ、トビイロシワアリなどと並び、南西諸島以外の日本では人家の近辺の屋外で最も身近なアリの一種だ。
巣はあちこちにジグザグに通路を掘り進み、その通路に1から2つずつ縦向きに部屋をつけ、成熟した大きな巣では深さ一メートルから2メートル、働きアリの数は1000体ほどに達する。
働きアリは春から秋までよく見られ、働きアリは草木の上や地表で出会ったガの幼虫などの小昆虫を、大顎や蟻酸を含む毒液で殺し巣に持ち帰るほか、巣の周囲の行動圏内に落ちている昆虫の死骸なども巣穴に運びこむのだ。
ちなみに天敵として同じヤマアリ亜科のトゲアリが存在しており、女王アリがクロオオアリやムネアカオオアリの巣に侵入し、女王アリを殺しコロニーを乗っ取るのである。
私はすぐに巨大蟻のステータスを確認した。
ステータス
名前:無し
種族:アーミーアント
レベル:5/10
ランク:D-
属性:地
称号:無し
スキル:無し
アーミーアント? 直訳するとグンタイアリだけど……こいつはどう考えてもグンタイアリじゃなくてクロオオアリだ。
ローリングコガネやオ・ケラといいなんかネーミングが変な奴が多いな……
ステータスはそこまで高くはないな……そう思ったとき後ろからさらにアーミーアントが出てきた。
全部で20匹、ステータスを確認したが全員同じのようだ。
「ギチチチチチ!」
「どうやらやる気のようだな……ミミズさん下がっていて……」
「安心せい! 後ろで隠れとくからお主は存分に戦うがよい!」
いつの間にかミミズさんは後ろの木に隠れていた、本当に魔王だったのかあのミミズ…
「殿! 拙者も戦うで御座るよ!」
(ごしゅじん! ぼくもたたかうよー!)
(私もです!)
(この程度の雑魚造作もありません!)
(ご主人、俺も戦う)
「わかった、行くぞお前たち!」
「ギチィィィィ!」
アーミーアントたちが一斉に襲いかかってきた!
一匹が私の角に噛み付いてきたが、私は角を振りアーミーアントを振り落とす。
「ギチィ!」
「喰らうで御座る! 《斬撃》!」
「ギィ!?」
「ギチィ!?」
ガタクの斬撃がアーミーアント二匹を両断する。
(くらえー!)
スティンガーの毒針が刺さりアーミーアントは痙攣している。
(喰らうがいい! 師匠直伝、《斬撃》!)
ソイヤーもガタクから教わったという斬撃でアーミーアントを切り裂いていき、パピリオは粘糸を使いアーミーアントをぐるぐる巻きにしていた。
(死ね糞蟻が!)
テザーは尻尾の鋏でアーミーアントを挟み殺していた。
戦いは私たちの優勢だった。どんなに数が多くてもD-程度の魔物に負ける私たちではない。
そう思った時。
「ギギィ!」
「ギチチチチ!」
「ギチチチ!」
茂みからさらにアーミーアントが出てきた! その数ざっと50匹。
いくら弱いからって数が多すぎる!
「うっとおしいで御座る! くらえ《鎌鼬》!」
ガタクが鎌鼬でアーミーアントを切り裂いていくがどんどん増えていく。
このままじゃ押し負けてしまうだろう、こうなったらあれを使うか……
「お前たち下がってろ! 一気に片をつける!」
「ギチチチチ!」
大量のアーミーアントが私に襲いかかってきた。よし今だ!
「《超突進》!」
私の身体が発光しとてつもない速さで突進し、アーミーアントたちを蹴散らし行く!
「ギギギィィィ!?」
「ギチチチチ!?」
「ギチチャァ!?」
アーミーアント達は全員吹っ飛び、木や地面に激突していた。そして一匹残らず動かなくなった。
「よし、上手くいったぞ」
頭に声が響く。
《アーミーアントの群れを倒した。 ヤタイズナはレベルが26になった。スキル回復速度上昇レベル1を獲得した。》
新しいスキルを手に入れたみたいだな……う!? 身体が……
「殿! 大丈夫で御座るか!?」
(ごしゅじん! しっかりしてー!)
(ご主人さま!)
(主殿!)
(ご主人、無事か!?)
「ああ、心配ない、最初の時に比べればまだ軽い方だよ……」
ガタク達が私を心配して集まってきたその時。
「ぬおおおおおおおおおおお!?」
「ミミズさん!?」
木の陰に隠れていたミミズさんがアーミーアントに捕まっていた!
ミミズさんを捕まえているアーミーアントは他の奴よりも一回り大きい、おそらくはリーダーだろう。
その周りをアーミーアント達が囲んでいる。
「ギチチ、ギチチチチ!」
「おのれ、離すのじゃ!」
アーミーアント達はミミズさんを掴んだまま逃げていく。
まさか最初から目的はミミズさんだったのか!? あの大量のアーミーアント達は私達をミミズさんから離すための囮か!
「ぬおおおおおおお!? 助けてくれぇぇぇぇ!?」
「ミミズさん! 今助け……うぅ!?」
くそ……反動で身体が動かない……
「ミミズさん……畜生……」
ミミズさんが連れ去られる光景を最後に私は意識を失った……
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