第18話 天敵現る
トックリワスプを倒した翌日、私はレベルアップして手に入れた上位鑑定を試そうと思いミミズさんに話しかけた。
「ミミズさん、この前レベルアップしたときに鑑定が進化したんだけどどう変わったのかわからないからミミズさんに上位鑑定を使ってもいい?」
「うむ、良いじゃろう、上位鑑定はステータスをさらに詳しく表示してくれるスキルじゃからのう…もしかしたら儂の称号も鑑定間違いという可能性もあるからのう…」
「称号の事まだ気にしてたんだね…まぁいいや、じゃあ行くよ、《上位鑑定》」
ミミズさんに上位鑑定を使い、ステータスが表示された。
「こ、これは…」
「どうじゃ?」
「ええっと…」
私は現在のミミズさんのステータスを伝えた。
ステータス
名前:ミミズさん
種族:エンペラーワーム
レベル:1/500
ランク:S
称号:元魔王(笑)、過去の栄光を引きずる者(哀れ)
属性:虫
スキル:分裂
エクストラスキル:全属性耐性ex、物理耐性ex
ユニークスキル:穴堀の神
「(哀れ)ってどうゆうことじゃああああああああああああ!!!」
南の森全体にミミズさんの叫びが響き渡る。
「ミ、ミミズさん…しっかりしてよ」
ミミズさんが地べたで項垂れている。
「過去の栄光を引きずる者(哀れ)じゃとぉ…なんじゃその不名誉な称号は⁉ 元魔王(笑)だけでもショックだというのにさらに追い打ちを掛けてきおった…というか(哀れ)とはなんじゃ(哀れ)とは!? ついにステータスが儂を哀れと思い始めたのか!?」
「ミミズさん落ち着いてよ、…そもそもステータスに意思があるわけ無いし、いい加減この流れも飽きてきたよ私…」
「あ、飽きてきたじゃとぉ!? 儂がどれだけ傷ついているのかわからんのかこの人でなし!」
いやだから私は虫だってば…まぁそれはともかく、上位鑑定に進化したことでレベル上限とランクが分かるようになったようだ。
「しかし…ミミズさんって本当にSランクだったんだね」
「本当にってなんじゃ!? お主信じてなかったのか!?」
「まぁ…ミミズさんだし?」
「お主やっぱり儂の扱いが酷くなっとるぞ!? なんなんじゃどいつもこいつも儂をないがしろにしおって…」
ミミズさんがまたショックを受け地面に項垂れる。
まぁほっといても心配ないだろう。
とりあえず私のステータスも確認しとくか。
私は自分に上位鑑定を使用した。
ステータス
名前:ヤタイズナ
種族:ヤマトビートル
レベル:22/35
ランク:C
称号:初心者魔王、昆虫の召喚師
属性:虫
スキル:上位鑑定、風属性耐性レベル1、超突進、角攻撃、昆虫の鎧
ユニークスキル:昆虫召喚レベル1
ふむ、レベル上限まであと少しか…そして私はCランクで間違いようだ、ミミズさんが前にも言っていたが魔王の称号で元のランクと違うらしいのだが、そもそも私のランクは元々どのくらいだったのだろうか?
同種を鑑定すればわかると思うが…この大陸に私以外のヤマトビートルは生息しているのかすら判らないからなぁ…ミミズさんに聞いてみるか。
「ねぇミミズさん、私の種族が生息している場所を知らない?」
「うむ、確か東の大陸に生息しているはずじゃが…」
「東の大陸か…」
やっぱり私の種族は東に生息しているのか…いつか行ってみたいものだな。
「よし! とりあえず全員のステータスを確認するか、皆集合だ―」
((はーい))
(わかりました)
「了解で御座る」
特訓中のガタク達を呼び上位鑑定を使いガタク達のステータスを確認した。
ステータス
名前:ガタク
種族:デスブレードスタッグビートル
レベル:24/40
ランク:C+
称号:魔王のしもべ、昆虫の戦士
属性:風
スキル:斬撃、斬撃耐性、怪力鋏、剣技
エクストラスキル:鎌鼬
ユニークスキル:鍬形の大顎
名前:スティンガー
種族:スコルピオン(希少種)
レベル:9/20
ランク:D+
称号:魔王のしもべ
属性:地
スキル:毒針、毒耐性
名前:ソイヤー
種族:ホワイトロングホーンビートル
レベル:8/15
ランク:D
称号:魔王のしもべ、伐採者
属性:風
スキル:怪力鋏、斬撃、斬撃耐性
名前:パピリオ
種族:キャタピラー
レベル:6/15
ランク:D
称号:魔王のしもべ
属性:風
スキル:粘糸
ガタクの稽古のおかげで全員レベルが上がっている。
スティンガー達の身体にも変化が起こっていてスティンガーとソイヤーは全長70センチ程になっていてパピリオは50センチ程に成長している。
この調子でレベルアップすればスティンガー達も進化できるようになるだろう。
「じゃあ私は樹海を探索してくるからガタク達は稽古を続けていてくれ」
「待つのじゃ、今回は儂もついて行くぞ! ここにいても誰もかまってくれんから暇でしょうがないのじゃ」
「わかった、じゃあ皆留守を頼んだぞ」
(わかったー! ごしゅじんいってらっしゃーい)
(いってらっしゃいませご主人さま)
(主殿いってらっしゃいです)
「いってらっしゃいで御座る! 拙者は殿の不在の間この巣を必ず守るで御座る!」
ガタク達に見送られて私とミミズさんは南の森探索に出かけた。
「ミミズさん前から聞きたかったことがあるんだけど」
「なんじゃ?」
「ミミズさん元魔王(笑)だよね?」
「おい元魔王だけでいいじゃろうが! 儂本気で気にしているのじゃぞ!」
「ごめんつい…」
「分かればよいのじゃ…で聞きたいこととはなんじゃ?」
「うん、ミミズさん魔王だった時に側近とかいたの?」
「なんじゃそんな事か、もちろんいたぞ、儂に忠誠を尽くし儂のため働いてくれていた部下たちがな!」
「働いてくれていたってことはやっぱり…」
「うむ、勇者との戦いで皆死んだ」
「そうか…ごめんこんなこと聞いて」
「気にすることはない、奴らは儂のために戦いそして負けた…それだけじゃ」
ミミズさんは少しだけ寂しそうだった。
出会った時は寂しくないとか言ったりしてたけど私が生まれるまで何百年もずっと一人で話し相手も居らず、ずっと昆虫の卵を召喚し続けていたんだ…寂しくないわけないよな。
「ミミズさん」
「どうしたのじゃ?」
「私ミミズさんが誇りに思うような立派な魔王になるよ」
「な、なんじゃ急に」
「だから私が立派な魔王になれるか見守っていてよ、ミミズさんがいないとからかう相手が居なくて寂しいし」
「お主やっぱり儂のことそんなふうに思ったのか!? それにそんな事言われずともお主が立派な魔王になるまでお主を見守ってやるわ!」
「うん、よろしくねミミズさん」
「ふん、よろしくされてやるわ!」
ミミズさんは少しだけ嬉しそうに答えた。
その後も私達は樹海探索を続けるが全然魔物と遭遇しない、いつもならテールシザーあたりが出てくるのだが…
「おかしいな…何で一匹も出てこないんだ?」
「うむ…ひょっとしたら何かよからぬことが起こっているのかもしれんのう」
「よからぬことって?」
「うむ、本来その土地に生息しないはずの魔物が住み着いて生態系が壊れてしまうことがあるのじゃが…お主が一人で探索していた時何か変わった事とかなかったか?」
「そう言えば最近この森でグレーウルフの群れを発見したな」
「なに、グレーウルフは草原に生息する魔物じゃぞ…やはり何か起きているようじゃな」
「そうか…どうする? 巣に戻った方がいいのかな?」
「いや、グレーウルフはしょせんDランクの魔物、ほっといても他の魔物の餌食になるじゃろう、とりあえず探索を続け…なんじゃ?」
ミミズさんと話していると、じーじー、という音が聞こえてきた。
私は周りを見渡すが何も居ない。
「ミミズさんこの音は一体…ミミズさん?」
「な、なんじゃこの悪寒は? 身体が勝手に震えるのじゃ⁉」
「ミ、ミミズさん大丈夫⁉ 一体何が…」
ミミズさんが急に震えだし心配した時、地面から魔物が現れた。
色は褐色、全長1メートルほどで身体はモグラとザリガニそしてコオロギの三匹を合体させたような生物。
間違いない、オケラだ。
オケラとは日本には一種しかいない虫で別名モグラコオロギと呼ばれているのだ。
その名前の由来は前脚にある。
オケラの前脚はモグラの前脚に酷似しておりその前脚で地面を掘り地中で生活する虫なのだ。
そして私の好きな昆虫の一匹なのだ!
生まれ変わる前はよく田んぼで捕まえていたなぁー、オケラを手で包むと外に出ようと手を掘ろうとするがその感覚がくすぐったくて面白いんだよなー、顔もよく見ると可愛らしい顔をしているんだよー…
ほら! オケラがこっちを向いているけどほんとかわいらしい顔だなー…
「おい! なにぼーっとしているのじゃ!? さっさと戻ってこんか!」
ハッ! しまったまたトリップしてた…気を付けよう。
「ジィィィィィィィィ」
オケラが鳴き声を上げる、私はオケラに上位鑑定を使いステータスを確認した。
ステータス
名前:無し
種族:オ・ケラ
レベル:20/30
ランク:C-
称号:ワームイーター
属性:地
スキル:土竜の爪、俊足 水中移動
エクストラスキル:穴堀の超人、
種族名そのまますぎる!
オとケの間に点つけただけとか…逆にすがすがしいネーミングだ。
しかし…称号ワームイーター? ああそう言えばオケラはミミズを食べるからな…私はオ・ケラの称号の詳細を確認した。
称号:ワームイーター
:ワーム系魔物を300匹以上食べた者に与えられる称号。 あらゆるワーム系魔物の持つスキルを無視して攻撃できる。
す、凄い称号だ。
つまりワーム系の魔物が相手ならほぼ勝てるのか…ん? ということは…
「ジィィィィィィィィ」
オ・ケラは私の隣にいるミミズさんを凝視しているその口からは涎が垂れている。
やはりミミズさん目当てで現れたのか。
悪寒の原因もワームイーターで間違いないだろう。
「な、なんじゃあいつは!? さっきから儂を見て涎を垂らしているぞ⁉」
「ミミズさんあいつワームイーターっていうスキル持ってるよ」
「わ、ワームイーターじゃとぉ!? それではあやつには儂のスキルが全部意味がないというのか!? 馬鹿な…900年前はそんな者が現れたことは一度もなかったというのに…」
ミミズさんが嘆いているとオ・ケラは声を上げた
「ジィィィィィィィィ!!」
そしてミミズさん目掛けて物凄いスピードで突進してきた!
「ぬおおおおおおおおおおお!? こっちに来たあぁぁぁぁ!?」
「ミミズさん下がってて!」
私はオ・ケラの前に立つ。
オ・ケラは減速することなくそのまま私を前脚で攻撃してきた!
私は角で前脚を受け止める!
ガキンという音がした後、私は角を振りオ・ケラを吹っ飛ばした。
しかしオ・ケラはすぐに態勢を整えこちらを見る。
「ジィィィィィィィィ!」
再び突進してくるオ・ケラを迎え撃とうとするが、衝突する寸前にジャンプし翅を広げ空を飛んで私を飛び越した!
知らない人もいるかもしれないがオケラは飛ぶことができる昆虫なのだ。
空を飛んだオ・ケラはそのままミミズさんに襲いかかってくる!
「ジィィィィィィィィ!」
「ぬぉぉぉぉぉぉ!?」
オ・ケラが飛びかかってくる瞬間にミミズさんは地面に潜り何とか回避していた。
そして私の横に出てきた。
「ふぅ…危なかったわ」
「大丈夫かミミズさん」
「なんとかのう…それよりも、早くあいつを倒すのじゃ!」
「ジィィィィィィィィ!!」
ミミズさんに避けられたオ・ケラは怒りの声を上げ突進してきた。
このままではらちが明かない、私は一気に勝負をつけることにした。
「ジィィィィィィィィ!」
「《昆虫召喚》!」
私はオ・ケラの目の前に昆虫の卵を召喚した。
「ジィ!?」
オ・ケラが目の前に現れた昆虫の卵に驚き動きを止めた。
私はその隙にオ・ケラの横に回り込む。
「くらえぇぇぇ!」
「ジィィィィィィィィ!?」
私はオ・ケラの腹部に角を突き刺しそのまま投げ飛ばした!
オ・ケラは5メートルほど飛んだ後地面に激突した。
「ジ、ジィィィィィ…」
オ・ケラがすぐに起き上がる、突き刺した腹部から体液が流れている。
「ジィィ! ジィィィィィィィィ!!」
叫び声を上げるとオ・ケラは地面に穴を掘り始めた。
そしてそのまま地面に潜ったまま出てこなかった。
おそらく逃げたのだろう、頭に声が響く。
《オ・ケラを撃退した。ヤタイズナはレベルが23に上がった。》
「ミミズさん大丈夫だった?」
「なんとかのう…奴は逃げたようじゃのう」
「ああ、またミミズさんを狙ってくる可能性は高いね」
「全く、厄介な奴に狙われたしまったわ…はぁ…」
「ま、頑張って行こうよミミズさん」
私はミミズさんを慰めて召喚した昆虫の卵を角で抱えて巣に戻ることにした。
(あ! ごしゅじんおかえりー!)
「ただいま、あれ?スティンガーだけか」
(うん! ソイヤーたちはごはんたべてるよー、あれ? ひじょうしょくどうしたのー? ぐったりして)
「ああ、色々とあったんだよ」
私はオ・ケラの事をスティンガーに話した。
(ふーんそうなんだー、ひじょうしょくよかったねー)
「さっきの話を聞いてなぜ良かったねなんて言えるんじゃお前は!?」
(えー? だってひじょうしょくいってたよー? だれもかまってくれなくてひまだって)
「あんなかまわれ方望んどらんわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ミミズさんの叫びが南の森に再び響き渡った。
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