第14話 カブトvsクワガタ
来たよ……ついに来たよ! カブトムシと並ぶ人気昆虫クワガタムシがついに出てきたよ!
あの大顎の形……あいつは間違いなくマンディブラリスフタマタクワガタだ!
マンディブラリスフタマタクワガタは、昆虫綱甲虫目クワガタムシ科フタマタクワガタ属に分類される昆虫で、主にインドネシア方面に生息するクワガタだ。
フタマタクワガタ目のなかで最も大きく大顎は基部から下へ向いていて、中央に1対の大型の突起があり、大顎の先端まで鋸状の内歯がある。非常に気性が荒く同種の雄すら殺してしまうクワガタだ。
しかし……いつ見てもカッコイイ! 私はクワガタの中でこのマンディブラリスフタマタクワガタが一番好きなのだ!
特にあの大顎の形! マンディブラリスフタマタクワガタはその角の形から水牛と呼ばれているのだが、私はそれがカッコよく思い子供の頃からこのクワガタが大好きだったのだ。
いやーしかし本当にカッコイイ!
私は目の前の巨大クワガタを見つめる。
……カッコイイなぁ……なにあの洗練されたフォルム! 私はカブトムシもクワガタムシも大好きなんだよなぁ……ああーほんとカッコイイ……
「ど、どうしたので御座るかこの者は? いきなり叫んだと思いきや今度はこちらを見たまま黙っているで御座るよ!?」
「……あーすまん、こやつたまにこうゆう状態になるんじゃよ」
「そ、そうなので御座るか? よくわからんが大変なので御座るなぁ……」
ハッ! いかんいかんまたしてもトリップしていた。 私は正気に戻りクワガタに話しかける。
「えーと……私たちに何か用ですか?」
「用というほどではないで御座るが……拙者、武者修行の旅でつい最近この森に来たばかりなので御座るが……いかんせん強者に出会わないので御座る……昨日人間の戦士に遭遇したのだが、あまりにも弱すぎて瞬殺してしまったので御座るよ……そしてつい先ほど上空より謎の球体が降ってきたので御座る」
「……謎の球体?」
「そうで御座る、まぁその球体は落ちてきた瞬間真っ二つにしたので御座るが」
「そ、そうなんだ……」
その球体ってもしかして……
「それで球体が降ってきた方角に言ってみたらお主達がいたので後ろからつけてきたので御座る」
やっぱりその球体、私がぶっ飛ばしたローリングコガネだよ!
つまりこの状況は全部私のせいじゃん! え、ていうか真っ二つにした!? あの硬いローリングコガネを倒したってこと!? さすがクワガタ! 大顎の力が強いんだよなぁ……そうだ、鑑定しておこう。
私はクワガタに鑑定を使い、ステータスを確認した。
ステータス
名前:無し
種族:デスブレードスタッグビートル
レベル:23
属性:風
称号:流浪の旅人、昆虫の戦士
スキル:斬撃、斬撃耐性、怪力鋏、剣技
エクストラスキル:鎌鼬
ユニークスキル:鍬形の大顎
やっぱり強いなこいつ! キラーマンティスとヘルスパイダーとも互角に戦える程の強さを持っているぞ。
しかしデスブレードスタッグビートルか……長いな名前、クワガタでいいと思うけどな……
「それで、私たちを尾行した理由は結局なんなの?」
「ふ、そんなこと決まっておろう、お主と戦うために決まっているで御座る!」
「……やっぱりそうゆうことですか……」
このクワガタ、強者を求めて旅をしていると言っていたもんな。
「お主からとてつもない力を感じるので御座る……拙者が戦ってきた者たちの中で最も強い力を! やはりつけてきて正解で御座った!」
とてつもない力!? え、あのクワガタ今私に言ったのか!?
いやいや私まだレベル8だよ!? クワガタの半分以下だよ!? あいつ私を買いかぶり過ぎだよ! ……ん? ちょっと待て、忘れてたけど私一応魔王何だっけ、もしかしてだけど称号にもスキルみたいに特殊な能力があったりするのか?
私は鑑定を使い称号を確認してみた。
すると……
称号:初心者魔王
:魔王になったばかりの者に与えられる称号。 力を感じさせるオーラっぽいものを発する。
オーラっぽいものって何!? 要するに見掛け倒しってことじゃん!
私はミミズさんを見る。
「ど、どうしたのじゃ急に」
「ミミズさん……実は魔王の中でも微妙な部類だったりした?」
「なんじゃとぉ!? おぬしマジで最近儂の扱い酷くなってないか!?」
「おぬし達、そろそろよいで御座るか? さぁ決闘で御座る!」
クワガタが戦闘態勢に入っていた。 好戦的な性格はマンディブラリスフタマタクワガタと同じか……
今戦っても勝てる気がしない。
どうしようか……
「なに悩んでおるのじゃ! 魔王たるもの即決断するのじゃ!」
「ミ、ミミズさん……でもあいつ私より強いよ?」
「魔王たるもの、申し込まれた決闘は受けて立つのが魔王という者じゃ! おぬしは儂に立派な魔王になると誓ったじゃろうが!」
私はミミズさんと初めて出会った時を思い出す。 そうだ……あの時私は誓ったじゃないか! 立派な魔王になると!
まぁあの後ミミズさんのことをしばいたけど……
「わかった! 私やるよミミズさん! あいつを倒して見せる!」
「うむ! その意気じゃ! さすが儂の名を継いだ者じゃ! 絶対に勝って来るのじゃぞ!」
「ああ!」
私はクワガタに向かい合い戦闘態勢を取る。
(ごしゅじんがんばってー!)
(ご主人さまファイトです!)
(主殿、貴方が勝つと信じております!)
後ろでスティンガー達が応援してくれている、負けられない理由が増えたな。
「では始めるで御座るか!」
「どこからでも来い!」
クワガタがこちらに向かって突進してきた。私はその突進を横っ飛びで避ける。
「なるほど、この速さではたやすく避けられてしまうで御座るか、ならばこれならどうで御座るか! 《斬撃》!」
「なっ!?」
クワガタが大顎を振った瞬間、衝撃波が飛んできた!
私は慌てて避けるが背中にかすってしまった、上翅が傷ついたがこの程度なら問題ない。
衝撃波はそのまま後ろの木を切り倒して消滅した。
ていうかなにあれ!? あんなの飛ばしてくるなんて反則にも程がある!
「ほほう! 拙者の斬撃を避けたのはお主が初めてで御座るよ! やはりただ者ではないで御座るな!」
クワガタは上機嫌にそう言ってきた。
「ふふん、私を舐めてたら痛い目見るぞ?」
「うむ、確かにその通りで御座るな! そなたの言う通り拙者も本気で行かせてもらうで御座る!」
「! 来るか」
私は身構える するとクワガタの周りに風が纏わり始めた。 クワガタの周りに無数の風の刃が漂っている。
「行くで御座るよ! 《鎌鼬》!」
ヒュン! その音と同時に無数の風の刃が私に降り注ぐ!
「くっ!」
私はギリギリで風の刃を避けるが、最後の一つを背中に食らってしまう。
「ぐうぅ!?」
(ごしゅじんー!?)
(ご主人さま!?)
(主殿!?)
スティンガー達が私を心配している。
「大丈夫、かすり傷だよ」
本当は結構深手だが、我慢して平気なフリをする。
「強がりは止めた方が身のためで御座るよ?」
「しもべの前で弱音を吐くわけにはいかないからな」
「立派な心構えで御座るな! だがその傷では拙者の鎌鼬を避けるのは至難の業で御座るよ! 食らうで御座る! 《鎌鼬》!」
再び風の刃が襲いかかってくる。
「くぅぅ!」
避けることが出来ず 風の刃が身体を切り裂いていく。
このままでは不味い。なんとかしなければ、しかしどうしたらいい。
私のスキルは鑑定と昆虫召喚だけだ。
昆虫召喚は明日にならないと使えないし、鑑定は相手をステータスを確認するだけのスキルだ。
くそ! 私に戦闘用スキルがあれば……
そんなことを考えていた時、頭に声が響く。
《条件を達成しました。 スキル風属性耐性レベル1を獲得しました。》
は? 条件達成?
よくわからないがスキルを獲得したらしい。
このスキルを獲得した瞬間、風の刃があまり痛くなくなった。 これならいける! 私はクワガタに向かって突進を仕掛けた。
「おらぁ!」
「な!? ごはぁっ!?」
いきなりの行動に驚いたのか、クワガタは動くのが遅れ、突進をもろに食らってぶっ飛んだ。
しかしすぐに体制をを整えた。
「ぬうぅ……拙者の鎌鼬をあれほど喰らいなぜ動けるので御座るか!?」
「ふふふ……気合いだ!」
「気合い!? 気合いで動けるものなので御座るか!?」
そう人間、気合いがあれば大抵のことはできるのだ! ……今の私は虫だけど。
「今度はこっちの番だ!」
私は再びクワガタに突進をする。しかし今回は避けられた。
「くっ! 《鎌鼬》!」
クワガタが再び鎌鼬を使って私を攻撃してきた。
だが今の私は風属性耐性によってダメージが軽減されているので大したダメージにならない。
このまま一気に勝負を決める!
そう思った時、再び頭に声が響く。
《条件を達成しました。 スキル超突進を獲得しました。》
またスキルを獲得した。
私はすぐにそのスキルを使用した。
「くらえ! 《超突進》!」
スキルを使用した私の身体が発光する、そしてとてつもない速さでクワガタに突進する!
「な、速い……!?」
クワガタは超突進を食らって吹き飛ぶ!
「ぐわあああああああああ!?」
吹き飛ばされたクワガタは木に激突し、そのまま地面に倒れた。
「ぐぅぅ……無念で御座る……」
どうやらもう動けないようだ。
その瞬間、頭に声が響く。
《デスブレードスタッグビートルとの戦いに勝った。 ヤタイズナはレベル16になった。 スキル昆虫(インセクト)の鎧(メイル)、角攻撃(ホーンアタック)を獲得した。》
おお! レベルが一気に8レベも上がったぞ! しかもスキルまで獲得したぞ。
いやーこれもさっき手に入れた超突進のおかげ……う!?
なんだ!? 身体が重い……力が抜けていく……これは一体……まさか。
私は自分に鑑定を使いスキル超突進の詳細を見た。
超突進:身体の全エネルギーを使うことで強力な突進を繰り出すことが出来るスキル。使用するとしばらく動けなくなる。
なるほど……強力な代わりに反動も凄いわけか……次使うときは気を付けないとな……
(ごしゅじん!? しっかりしてー!)
(ご主人さま!? どうしたのですか!?)
(主殿!? 主殿ー!?)
「安心せい、疲れて寝ているだけじゃ……よい戦いぶりじゃったぞ、今はゆっくり休むがよい」
「ああ……わかったよ、ミミズさん……」
私はそのまま眠りについた……
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