第12話 巣を作ろう
ランド大樹海の中央には巨大樹がありその木を境界線としていて西と東を二匹の魔物が支配している。
現在ヤタイズナ達がいるのは森の中央、そして今目の前で戦いをしているのは西と東の魔物のしもべ達である。
「キシャァァァァァァァァ!!」
「ギチチチチチチチチチチ!!」
巨大蟷螂の鎌が巨大蜘蛛の身体に食い込む、巨大蜘蛛も負けじと牙で巨大蟷螂の脚に噛み付く。
そんな戦いを見ていた私は目の前の二匹に鑑定を使った。
ステータス
名前:なし
種族:ヘルスパイダー
レベル:25
属性:地
称号:西の森王のしもべ
スキル:毒の牙、粘糸、鋼糸
エクストラスキル:糸操作
ステータス
名前:なし
種族:キラーマンティス
レベル:25
属性:風
称号:東の森王のしもべ
スキル:斬撃、斬撃耐性
エクストラスキル:鎌鼬
……うん、分かりきっていたけど勝てないねこれ。
幸い二匹ともこちらに気付いていないしさっさと逃げよう。
「ふむ……キラーマンティスにヘルスパイダーか、900年前はこやつらみたいのは生息していなかったはずじゃがのぅ……まったく時の流れとはすごいのぅ」
「感慨にふけっている暇があるならさっさと逃げるぞ!」
「あ、ちょ、ちょっと待ってくれぇぇぇぇ!?」
私達は南の森の方へ逃げ出した。
――南の森、アメリア王国に最も近い森であり、西と東の森とは違いこの森を支配する魔物はいない。 南に生息する魔物は最高でCランク程度しかいない。
その理由の一つは食べ物が少ないからだ。
東と西は木の実などが豊富に実っているが南の森の木はほとんどが実を実らせないものばかりなのである。故に木の実を食べる魔物、そしてその魔物を餌とする魔物はこぞって東か西に移り住んだのだ。
しかしそのおかげでこの南の森は唯一人間が入っても比較的生存確率が高くなっているのである。
「――ふぅ、ここまで来れば安全だろう」
「うむ、この辺りは魔物もいないようじゃのう」
「私達が出てきたトンネルは入口を隠したから問題ないと思うと思うが……まずは家作りから始めるかな」
「うむ! それは良い考えじゃ、拠点を作らねば始まらんこともあるからのう」
「そう言う事だから皆頑張って家を作ろう!」
((はーい!))
(了解です)
私達は巣作りを開始した。
作るのは地上ではなく地下に作る。まずミミズさんが幅2メートル程の穴を掘り、 そこにパピリオが粘糸と言うスキルを所持していたので穴の内側に糸を裏打ちする。
そして糸を2メートル半の楕円形に固め蓋を作る。
蓋を穴の裏打ちにつなげて、最後に蓋の外側に土をかぶせて完成だ。
この巣の作り方はトタテグモという蜘蛛の巣を参考にしている。
トタテグモは地面に巣を作る蜘蛛の一種で、巣の中で獲物を待ち伏せ、巣の上を通った瞬間一気にとびかかり巣の中に引きずり込んで食べるという習性を持つ蜘蛛だ。
今回はその巣をそのまま大きくして作ってみたが、中々いい感じで出来たと思う。
まぁ今回私命令しかしてないけどね! ミミズさん風に言ってみました。
「どうした? 急に黙って……」
(ごしゅじんーどうしたのー?)
(ご主人様、ひょっとして具合が悪いのですか?)
(主の体調不良に気を付けないとは……このソイヤー、一生の不覚!)
「え? あ、いや大丈夫ちょっと考えごとしてただけだから」
「そうか? ならよいが……とりあえず巣に入るぞ」
私達は巣のなかに入ってみる、中は縦横合わせて5メートルほどで、私たち全員が入ってもまだ余裕がある。
「さて! 家も出来たし、明日から実践訓練を再開するぞ!」
「今日からじゃないの?」
「今日はもう暗い、食事をしてもう寝るぞ」
ミミズさんがそう言うので私達はこの前倒しておいたテールシザーの残りを食べる事にしたがソイヤーとパピリオは生まれて一週間経っていないので空腹じゃなかったのか食べなかった。
食事を済ませ私たちは明日に備えて寝ることにした。
・
――ヤタイズナ達の巣から約10キロ先に三人の男が歩いていた。
「おめぇらさっさと来い! おせぇぞ!」
「町に戻りましょうよ兄貴ぃ……」
「そうですよぉ……もう夜ですぜぇ……」
「何言ってんだおめぇら! 依頼を済ますまで帰れるわけねぇだろうが! いいからさっさと歩け!」
「「わかりやしたぁ……」」
俺様の名前はギャンドー、いずれ最強と呼ばれるようになる冒険者だ!
まだD級だがあと少しもすりゃ俺様を知らねぇ奴はいなくなるにちげぇねぇ、後ろの二人は俺様を慕っている俺様の部下ってやつだ。
そんな最強の冒険者である俺様が何でこんな森に来ているのかって?
ギルドの仕事でこの南の森にいるテールシザーって魔物を20匹倒しに来たんだが、俺様にかかりゃ簡単な仕事よ、もう5匹も倒しちまったからなぁ!
しかもこの仕事が終われば俺様をC級にあげてやるとギルマスに言われたんだぜ!
だからこんな仕事さっさと終わらせて帰りてぇんだが……テールシザーが見当たらねぇ。
さては俺様にヒビって隠れてやがるな、さすがは俺様! 魔物すら俺様にヒビって逃げ出すとは俺様は自分が怖くなるぜ。
「兄貴ぃ……テールシザーいませんねぇ……」
「馬鹿が、こんな広い森だ、どっかに隠れてるに決まってんだろうが!」
「でもこんなに暗くちゃあ発見出来ませんよ……」
「たくっだらしねぇ奴らだぜ」
「あ! 兄貴あれ! テールシザーじゃないですか?」
舎弟の1人が前を指さす、遠くでよく見えねぇがでけぇ鋏が見える。テールシザーの尻尾にちげぇねぇ!
「やっと見つけたぜ、行くぞてめぇら!」
「「へい!」」
俺様達は剣を構えテールシザーに向かい走り出す。
「覚悟しやがれムシケラがぁ! ぶった切ってやるぜぇ!」
これで6匹目! C級への道がまた一歩近づいたぜぇ!
―そう思った時だ。
突然右腕の感覚が無くなりやがった。
何だ? と思い右腕を見ると……
「……あ? あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? お、俺様の腕がぁぁぁぁぁぁ!?」
そう、俺様の右腕が肘から先が無くなっていやがった!
「あ、兄貴ぃ!? 大丈夫ですか!?」
「い、一体何が……あがっ!?」
俺様を心配して傍に来た舎弟の一人の頭が突然真っ二つに割れやがった!
頭の上半分が無くなった舎弟はそのまま地面に倒れた。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!?」
「お、おい、待て!」
もう一人の舎弟が怯えて俺様を置いて逃げ出しやがった!
その瞬間だ、逃げ出した舎弟の身体がバラバラに切り裂かれちまったんだ!
バラバラになった舎弟の身体が地面に落ちた。
「な、何だ? 一体何なんだよこれは!?」
俺様は左手で剣を持って立ち上がり、前方にいるテールシザーを見た。
いや、よく見るとテールシザーじゃねぇ、別の魔物だ。
魔物の頭部にはでけぇ大顎がありやがる、それをテールシザーの尻尾と間違えたんだ!
おそらく俺の右腕が無くなったのもこいつの仕業にちげぇねぇ!
「くそが! よくも俺様の腕を! 覚悟しやがれこの野郎!」
俺様は魔物に突撃した!
「死ねぇ! このやろ……う?」
何だ? 身体が動かねぇ?
いやちげぇ、身体の感覚が無くなりやがった。
そして何故か俺様は宙に飛んでやがる。
何なんだ……!?
俺様は驚愕した。
何故なら、首から上が無い俺様の身体が見えたからだ。
どういうことだ? 何で俺様の身体があそこに……!?
俺様は理解しちまった。
俺様の首が切られて宙を飛んでいる事を。
嘘だ。
俺様は最強の冒険者になる男だぞ。
それが何でこんなところで……
そのまま首だけになり地面に落ちた俺様はそのまま意識が薄れていった。
「……弱い」
ギャンドー達を殺した魔物はそう言い残し、森の奥へ消えていった。
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