第11話 いざ大樹海へ
「あれは百年くらい前じゃったかのぅ……いつも通り昆虫召喚(サモンインセクト)で昆虫(インセクト)の卵(エッグ)を召喚していたのじゃが……一匹だけほかの奴より少しだけ知能が高い奴が生まれてのぅ」
ミミズさんの話では、生まれてきた小百足(リトルセンチピード)は若干ミミズさんのいうことを聞いたので名前をあげたそうだ。
そしていずれは魔王の座に就かせようと思い小百足(リトルセンチピード)に外に行き、実戦経験を積んで来いと命令したらしい。
「それで外に行ったんじゃが……そのまま帰って来なくてのぅ、仕方なく次の昆虫の卵を召喚していたんじゃが……まさか生きていてあそこまで大きくなっていたとは……いやーさすが儂が名付けただけあるのう! ハハハハハ!! ……というわけなんじゃ、だから……そのぅ……許してくれないでしょうか?」
ミミズさんはスティンガーの鋏に挟まれている。
「スティンガー、ミミズさんを離してやれ」
(はーい)
スティンガーの鋏から離され、ミミズさんは地面に落ちた
「ふぅ……危なかったわ……」
「つまりミミズさんがほったらかしにしてたせいでクルーザーはあそこまででかくなり、さらにこの洞窟の守護者にまでなったと」
「そうじゃな」
「ひとつ聞きたいんだけど……なんであいつには魔王のしもべの称号がなかったんだ?」
「おそらく、百年もほったらかしにしてたから称号が消えたのじゃろう!」
「なんでそんな誇らしげなんだよ!?」
「す、すまんつい癖で……とにかく今はクルーザーをなんとかせねば!」
「いやなんとかするって言われても……今の私じゃ絶対に勝てないんだけど」
「確かに今のおぬしではクルーザーに負けるじゃろう……しかし安心せい!! おぬしが奴に勝つ方法が一つある!」
「一体どんな方法が?」
「うむ! それは進化じゃ!」
「進化?」
「そう! 魔物はある一定のレベルになるとさらに上位の存在に進化することができるのじゃ」
「え、そうなの!? 初めて聞いたんだけど……」
「言ってなかったからのう!」
いい加減しばき回そうかなこのミミズ。
「じゃあ魔物を倒しまくってレベルを上げればいいんだな?」
「うむ! しかしこの洞窟でレベル上げをしていてはクルーザーに遭遇してしまう可能性が高い。だからこの洞窟を出て大樹海に行くぞ!」
「大樹海か……樹海の魔物ってどれくらいの強さなんだ?」
「安心せい! クルーザーよりも弱い奴等ばかり、せいぜいCランク程度じゃろう」
「Cランク? ……また初耳なんですけど……」
ミミズさんから聞いた話しでは、魔物はEからSにランク付けされているらしくこの洞窟はBランクの魔物までしかいないという。
しかし、地底の守護者であるクルーザーのランクはAランクはあるらしい。
「さすが儂が生み出しただけはあるわ!」
また意味も無く誇らしげである……
「ところで私のランクはどれくらいなの?」
「多分Cランクじゃと思うぞ」
「多分?」
「おぬしは魔王の称号を持っているから本来のランクとは違うはずじゃ」
なるほど……称号でランクが変わることもあるわけか。
あと、ミミズさんのランクはSだったそうだ、さすが元魔王(笑)なだけはある。
「……おぬし今わしのこと馬鹿にしたじゃろ?」
……なんか心を読まれた気がしたが、まぁ気のせいだろう。
「よし! じゃあいつ出発するんだ?」
「何言っとる? 今すぐに決まっておろう!」
「はぁ!?」
「ここにいてはいつかクルーザーに見つかるかもしれんし……それに、こやつらも実戦経験を積んでおかんといけんしのぅ……」
ミミズさんは後ろにいる三匹を見る。
スティンガーとその後ろにいる二匹の虫。
この二匹は前に召喚した昆虫の卵から生まれた虫たちだ。
一匹はホワイトロングホーンビートルという魔物で全長19センチほどで見た目はカミキリムシだ。
二匹目はキャタピラーという全長13センチほどの芋虫だ。
しかし……生まれてくるのは全部成虫かと思っていたけど……幼虫も生まれてくるんだな……
私はホワイトロングホーンビートルを見る。
身体の白い筋模様……やはりこいつはシロスジカミキリに違いない!
シロスジカミキリは、コウチュウ目カミキリムシ科に分類される甲虫の一種で、インド東部から朝鮮半島に分布、日本では北海道、本州、四国、九州に分布するミヤマカミキリと並ぶ国内最大種のカミキリムシだ。
体は光沢のない灰褐色で、前翅には黄色の斑紋や短いすじ模様が並び、前胸の背中側にも2つの縦長の斑点がある。
これらの模様は死ぬと白色になり、和名もこれらの「白いすじ模様」に由来している。
触角の長さは体長の1.5倍ほどで、オスの方が触角が長い。頭部はゴマダラカミキリなどに比べて複眼が大きく、発達した大顎も相まっていかつい風貌をしている。
シロスジカミキリは私が一番好きなカミキリムシだ。
あの発達した大顎と大きな複眼のバランスがよく、昆虫の中でもイケメンの部類に入る種類だ。
いや、本当にカッコイイ! まさにイケメン昆虫だよこいつ!
「……おい、なにぼーっとしとるんじゃおぬし」
……ハッ! いかんいかん、自分の世界に入り込んでいた、注意しないとな。
次に私はキャタピラーを見る……頭に二本の角がある。
おそらくこいつはオオムラサキの幼虫だ。
オオムラサキは、チョウ目タテハチョウ科に分類されるチョウの一種で、タテハチョウ科の中では最大級の種類だ。
成虫は前翅長50–55mmほどで、オスの翅の表面は光沢のある青紫色で美しく、メスはオスよりひと回り大きいが、翅に青紫色の光沢は無くこげ茶色をしているのだ。
オオムラサキと言えば日本の国蝶で成虫は美しい羽根が特徴なのだが、幼虫も意外とかわいいのだ。 正面から見てみると顔文字の (・ω・)←これにそっくりなのだ。
キャタピラーもその顔なので間違いなくオオムラサキの幼虫だろう。
……いやー本当にかわいいなこいつ。
マジで癒し系昆虫だよこいつ、癒されるわ~……
「おい! いい加減にせんか!」
ハッ! しまったまた入り込んでいた……しっかりしないと。
「こやつらにも良い名前を与えてやらんとな」
「名前か……そうだ!」
私はホワイトロングホーンビートルを見る。
「お前の名前はソイヤーだ!」
ソイヤーとはノコギリで木を切る人という意味だったはずだ。
私が名付けると、ソイヤーが鳴き声を上げた。
(有難うございます主殿、私はソイヤー、貴方に生涯忠誠を捧げます)
おお……性格もイケメンだよこいつ。
さて、次はキャタピラーか……何て名前にしようか……悩むな。
「うーむ……そうだな……よし! お前はパピリオだ」
パピリオとはラテン語で蝶を意味する言葉だ。
(ありがとうございますご主人さま。私はパピリオ、これからよろしくお願いしますね)
「うむ! 名前も決まったことだしそろそろ出発するぞ!」
「出発するのはいいけどさ……上に行く途中でクルーザーに遭遇するんじゃないの?」
「フフン、問題ない! 儂のユニークスキル穴堀の神でトンネルを掘り外に出ればよいわ!」
「え、そのトンネルができたら誰でも簡単に最深部に来れるんじゃないのそれ」
「………ば、馬鹿者! そのようなことを考えて無いとでも思っているのか!」
「今の間はなんだよ!?」
「と、とにかく儂は今からトンネルを掘るので20分ほど待っているのじゃ!」
そう言うとミミズさんは物凄い速さで壁に穴を掘り始めた。
「す、凄い。これがユニークスキル、穴堀の神の力か……」
(ひじょうしょくすごーい♪)
(非常食さんすごいです!)
(非常食殿、見事です)
……この二匹は最初からミミズさんのことを非常食扱いなんだな……
――20分後、ミミズさんが戻ってきた。
「待たせたのう! トンネル完成じゃ!」
目の前に幅3メートルほどのトンネルができていた。
「凄いなミミズさん、見直したよ」
「フフン! やっと儂の凄さがわかったようじゃのう! それでは出発するとするかのう」
「よし、皆行くぞー」
((はーい!))
(了解です)
私たちはトンネルに入り、上を目指す。
――トンネルに入って1時間、私達はついに地上に到着した。
「ここが……ランド大樹海……」
見渡す限り一面緑の世界、木々が生い茂り小鳥がさえずっている。
なんて美しい場所なんだ……ただ。
「キシャァァァァァァァァ!!」
「ギチチチチチチチチチチ!!」
目の前で全長2メートルの巨大な蟷螂(かまきり)と蜘蛛(くも)が殺し合いをしているせいで美しい風景が台無しになっているんですけど……
「……ミミズさん?」
「……なんじゃ」
「ひとつ聞きたいことがあるんですけど」
私はまさかと思い、ミミズさんに聞いてみた。
「最後に地上に出たの……何年前?」
「確か……900年前じゃったのぅ……」
「またこのパターンかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
目の前で殺し合いをしている二匹なんか気にせず私は大声で叫んだ。
――ランド大樹海、現在この森は人間界においてCランクからBランクの魔物まで数多く存在し、最大でAランクオーバーの魔物が存在する危険な樹海として知られている。
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