第10話 地底洞窟の守護者現る

 テールシザーを倒してから二日、再びミミズさんとともに洞窟内を探索していた。


 その間多くの魔物と遭遇したのだが……


「ねぇ、ミミズさん」

「なんじゃ?」

「さっきからテールシザーとしか遭遇してないんだけど」


 そう、探索している間に戦った魔物はテールシザーばかりなのだ。 

 その数ざっと20匹、その結果レベルが5に上がった。


「うむ……おかしいのぅ……儂が全盛期だった頃は多種多様な魔物がいたんじゃがのぅ……」

「……全盛期って何年前?」

「たしか……900年前じゃったかのぅ?」


 私はミミズさんを前脚で引っ叩いた。


「な、何をするんじゃおぬし!?」

「うるさいよ! 900年も経てば様変わりするのは当たり前だろ!? あんたやっぱ馬鹿だろ!?」

「ば、馬鹿とはなんじゃ!? 馬鹿って言ったほうが馬鹿なんじゃぞ!?」

「子供か!」


 そんな言い争いをしていると進む先に魔物がいた。 


「おお、やっと別の魔物に遭遇したぞ!」

「あれって……蜥蜴(とかげ)か?」


 私たちの進む先には全長70センチ程の大蜥蜴がいた。 すぐにステータスを確認する










 ステータス

 名前:なし

 種族:甲殻鱗蜥蜴(スケイルリザード)

 レベル:7

 属性:地

 称号:なし

 スキル:防御甲殻鱗(ガードスケイル)












 中々強そうだ。

 防御甲殻鱗(ガードスケイル)……私の角で貫けるのか心配だ。 


 ひょっとしたら負けるかも知れない。 

 そんな私の心配を悟ったのか、ミミズさんは笑いながら喋った。


「フハハハハハハ! 安心せい! あの程度の雑魚にやられるおぬしではない! 魔王たるもの、堂々とするがよい!」

「ミミズさん……そうだな、私は魔王なんだ! あんな蜥蜴に負けるものか!」


 甲殻鱗蜥蜴がこちらに気付き、そのままこちらに突っ込んできた! 私は身構える。


「さぁ来い! 受けて立つぞ!」


 私がその言葉を言った瞬間、甲殻鱗蜥蜴の姿が消えた。

 いや、消えたわけではなかった、地面から唐突に現れた魔物に食われていたのだ。


 バキバキ……ボキャ!


 骨が折れる音がする、恐らく甲殻鱗蜥蜴の頭蓋骨ごと食っているのだろう。

 私は魔物の身体を観察した。


 全長3メートルはあり頭部には触覚と巨大な顎肢、胴部は細長く無数の足がある。

 私はこの生物を知っている、百足(ムカデ)だ。 


 私は百足に鑑定を使う。


 そして表示されたステータスを見て戦慄した。













 ステータス

 名前:クルーザー

 種族:地獄百足(ヘルセンチピード)

 レベル:35

 属性:地

 称号:地底洞窟の守護者

 スキル:猛毒の牙、毒耐性、怪力鋏、昆虫鎧(インセクトメイル)

 ユニークスキル:穴堀の達人













 勝てない。


 この百足は今の私では絶対に勝てない相手だ。

 逃げなければ殺される。 


 食事をしている今なら逃げられる!


「ミミズさん! 逃げ―」

「なにしとるんじゃあ! さっさと逃げるぞー!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 さっきまで隣にいたはずのミミズさんは物凄い速さで逃げていた! 

 ていうかあんなに早く動けるのあのミミズ!? いやそんなこと言ってる場合じゃない!


「ちょ、置いてかないでよ!?」


 カブトムシってこんな速く動けたっけ? と思うほどの猛スピードで私はミミズさんを追いかける。

 しかし、その音に気付いた地獄百足はこちらを向いた、そして……


「キシャァァァァァァァァァァァァァァ!!」


 洞窟が震えるほどの声をあげてこちらに向かってきた!


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? こっち来たぁぁぁぁぁ!?」

「叫んどる場合かぁ! とにかく走るのじゃあ!」


 私とミミズさんは洞窟を走り回る!

 しかし地獄百足は執拗に私達を追いかけてくる。


「どうするんだよミミズさん! このままだと捕まるよ!?」

「こうなれば最後の手段じゃ! 昆虫召喚(サモンインセクト)を使うのじゃ!」

「はぁ!? なんで!?」

「いいから使うのじゃ!」

「わかったよ! 《昆虫召喚》!」


 その言葉とともに地獄百足の目の前に魔法陣が現れる! そして光とともに昆虫(インセクト)の卵(エッグ)が現れた! 

 地獄百足はいきなり目の前に現れた昆虫の卵を見て驚いていたが、すぐに卵に噛みついた。


 ガキン! という音が響いたが卵は傷ひとつない。


 地獄百足は卵を攻撃し続けていた。


「よし! 今のうちじゃあぁぁぁ!」


 その言葉と同時に私とミミズさんは一目散に逃げ出した。







 私達は地獄百足を撒いて、何とか洞窟最深部に戻ってこれた。

 地獄百足から全力で逃げるために体力を殆ど使い果たしたようで、体がとても怠い。


 ボロボロの私を見てスティンガーはとても心配していた。


(ごしゅじんだいじょうぶ!? しっかりしてー!)


 と励ましてくれた。

 ちなみにミミズさんは、地面に倒れこんでいた。


「そういえばミミズさん、卵を囮に使うなんてよく思いついたね」

「うむ、三日に一度しか使えないから、最後の手段として使うがよい」

「わかった、……ところでさミミズさん、あの百足を鑑定したんだけどさ、あいつ名前持ちだったんだよ」

「そ、そうなのか……」

「……ひょっとしてだけど……あの百足のこと知ってた?」

「……たぶん、あれ儂が召喚した奴じゃと思う」

「スティンガー! 今日の夕食はそのミミズだ!」

(わーい! いただきまーす♪)

「めおぉぉぉぉ!? まて! やめるのじゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」









 ――その頃地獄百足は、まだ卵と格闘してたとか……

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