第4話 魔王道の始まり

前回の三つの出来事!!


「ど、どうしたんじゃいきなり」


 一つ、魔蟲王ヤタイズナの名前がミミズさんになったこと!


「なっとらんわこのたわけ!」


 二つ、ミミズさんは意外と寂しがりやだと言うこと!!


「だから寂しくないと言っておろうが!!」


 三つ、ミミズさんは何と私に魔王になれと言ってきたのだ!!!


「最後だけ普通にしめよった!?」


 とまぁ、私が好きだった某特撮ヒーローのあらすじ風にまとめてみた! 


 ……途中ミミズさんがツッコミいれてきたけど。


 とりあえず話を戻そう……そう、ミミズさんが私に魔王になれと言ったことだ。

 本気か? 本気で私に魔王になれと? 驚いている私を見たミミズさんは。


「本気じゃ、マジと呼んで本気じゃ!」


 いや、逆に信じられないよ!? ていうか何故その言葉を知ってるんだ!?


「言ったであろう? おぬしの頭の中を読んだと……お主の記憶を辿って言語はあらかた理解したぞ?」


 な、何だって!? つまり今の私は丸裸同然! プライバシーも何もあったもんじゃないぞ!?


「……安心せい、記憶を読めたのはまだ生まれたてで頭に鍵が掛かってないからじゃ、もうじき読めるのは考えている事ぐらいだけになるわ……とりあえず話の続きを聞いてくれ……実は復活してからの二百年間、ずっと召喚し続けたせいか、魔力切れでほとんどのことができんくなってのう……この体を保つのも限界なんじゃよ。」

「キュ、キュキュイ?」(え、そうなの?)

「うむ、そんな時ついに知能があるおぬしが生まれてきた……まさに天啓……頼む、儂の願い聞き届けてくれぬか」


 頼む……とミミズさんは頭を下げてきた。 

 どうするべきか……確かにミミズさんは生みの親なわけだしなぁ……


「キュイキュキュー?」(魔王になれば何ができるの?) と聞いてみた。

「うむ! 儂の名とスキルをひとつ受け継ぐことができるのじゃ」


 スキル? 一体どんなスキルなのだろうか?


「儂のみが使える唯一無二のスキルなのじゃ!」


 な、なんか凄そうだ! 何ていうスキルなの? と聞いてみたが。


「ふふふ……それは受け継いでからのお楽しみというヤツじゃ!」 だそうで……


 私は腹を決め、ミミズさんに言った。


「キュイ、キュキュイ!」(わかった、魔王になるよ!)

「本当か!」


 ミミズさんは嬉しい気持ちを抑えられないのか、三つの頭を左右に振る。

 本当に長い間、私のように知性を持つ個体が産まれてくることを願ってきたんだな……その心労は私には計り知れない……ミミズさんの願い、無下には出来ない。


「よし! では早速魔王継承の儀を行うぞ!」


 え、もう!? 早くない!?


「汝、我が名を継ぎ魔王となることを誓うか?」

「キ、キュイ」(は、はい)


 返事をした瞬間、私の体が発光し始めた。こ、これは一体!?

私が驚く中、ミミズさんの身体も発光し、私達を中心に巨大な魔法陣が展開された!


「我、魔蟲王ヤタイズナはこの者に我が名を継承させ、新たな魔王とする事を誓う!」


ミミズさんが叫ぶと同時にミミズさんの身体から膨大な光の奔流が放たれ、私に向かって放たれた! それは私を包み、体の中に入って行く!


「キュイ!?」(うあっ!?)


あ、熱い……体が焼けそうだ! いや、これは熱いなんてものじゃない……体が燃える様だ……!


やがて光の奔流が収まり、魔法陣が消滅する。


「ハァッ……ハァッ……!」


《魔王継承の儀完了しました。魔蟲王ヤタイズナより魔王の称号と名を受け取りました》


頭の中にアナウンスが聞こえる中、私は自分の身体を見渡すが、外見に変化は無かった。


「……これで名実ともにおぬしは魔王となった」


 ドチャリ。


 その音が聞こえた方を見ると、ミミズさんの身体が崩れ始めていた。


「ミ、ミミズさん!?」

「言ったであろう、この身体を保つのは限界じゃと……ぬしに魔王の称号と我が名を与えたことでこの身体はじきに崩れる」


 ドチャリ、とミミズさんの右の頭部が地面に落ちた。


「そ、そんな……さっき出会ったばかりなのに……」


 ドチャリ。


 左の頭部も地面に落ちる。


「おぬしが立派な魔王になれるかどうか……見守らせてもらうぞ……」


 ドサァア……!


 ミミズさんが地面に倒れた。


「ミミズさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


 私は叫んだ。

 ……だが、ミミズさんは動かない。


「ミミズさん……私は立派な魔王になる! だからあの世で見守っていてくれ!」


 私は決意した! ミミズさんの思いを受け継き立派な魔王になってみせると!


「うむ! その意気じゃ! 儂の名を継いだだけあって良い気迫じゃ!」


 ……え?


 今なんか、声が聞こえたような……あたりを見回す。 

 だがなにもいない。


「下じゃ下」


 私は下を見る、そこには普通のミミズより大きめの白いミミズがいた。

 頭部は一つだが、赤い水晶玉のような目が左右五つづつ。


 ま、まさか……


「み、ミミズさん!? え、なんで!?」

「言うたじゃろう? この身体を保つのは無理じゃと、新しく身体を作れば問題ないわ!」


 エッヘン! と胸をはって言うミミズさん。


「じ、じゃあ見守る、ていうのは」

「うむ! おぬしの傍で見守るというそのままの意味じゃが?」


 ……ぶぉん! 


 私は頭部の角をミミズさんに向けて振り回した!


「ぬおおおおおおおおおお!! な、なにをするんじゃ!?」

「うるせぇ! 私の涙を返せこの詐欺師がぁ!」




 ――こうして、私の魔王道が始まった。

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