第180話 おくりものを貴方に(4)S☆3
サクラと話していた時間は、ほんの短い間だけだった。
でも、アタシはそのひと時が、永遠のように続けばよかったのにと思ってしまう。
アタシはモルガナイトで紡いだようなサクラの髪を撫でながら、瞳を閉じる彼女を見つめた。
ぷつんと緊張の糸が途切れたのか、サクラは今小さな寝息を立てている。
それが安眠と呼べるものなのかはわからないが、少なくともアタシの目には穏やかに映った。
そして、アタシは安心を抱いて眠るような彼女の姿に――自身の浅はかさを呪う。
アタシは、なんて無責任な女だろう。
サクラの髪を優しく撫でながら、強く自分を罵倒した。
何が死ぬのが怖くなくなる方法だ。
何が時間がかかるだ。
サクラは、次の瞬間には殺されるかもしれない場所にいるのに。
この子の命を守りながら、ヒサカさんを救う方法だってまだわかってないのに……。
血が滲むほど、きゅっと唇を噛みしめる。
先程の言葉を、自身の無責任さを責めた。
けど……。
だからこそ、アタシは固く誓う。
アタシは、決してこの子を死なせないと。
必ず、、この子に時間をあげてみせると。
「サクラ……絶対あなたを死なせたりしない。あなたはもう、娘みたいなものだもんね」
私は彼女の髪から手を離し、近くにあった紙と筆記具を取り寄せる。
そして、魔導が使えないとわかっていながら……それを作り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます