第131話 124回1日目〈12〉S★2

「これはいわば盟約だ。私とお前との。私はお前達を私兵として雇い入れる。報酬も望むものを用意出来よう。さすればサクラ、お前の目的も果たせる……違うか?」


 断れるはずのない半ば脅しのようなヤシャルリアの言葉に、彼女は頷いて穏やかな声を返す。


「違いません。そして、私は貴方の盟約を受け入れます」


 だが――


「ですが。代りに私にも、貴方には重ねて誓っていただきたいことがあります」


 ――サクラは受け入れるだけでなく、ヤシャルリアへ誓約の要求を口にした。


「聞こう……」

「無理を言うつもりはないです。ただ、せめて私兵として、私と二人の家族の安全は保障してください。決して、あなた方からは危害を加えないで」


 誓約の内容に、ヤシャルリアが頷く。


「当然だな……誓おう。当方はお前と、お前の家族にこちらから危害を加えることはない」


「ありがとう、ございます」


 それから、サクラは細く息を吸い込み――


「そして、もう一つ」


 ――これが一番大切だと言うように、彼女は声に力をのせた。


「私が貴方の望みを果たした時。必ず私達にヒサカさんの魂を返すと、固く誓ってください」


 ヤシャルリアは、首を振らない。

 奴は、サクラの要求を受け入れ――


「ああ。重ねて誓おう」


 ――真剣な言葉で、そう誓約した。


黝輝石ゆうきせきの髪を持つ者よ。私兵としての責務を果たした後、引き換えにお前の望む魂をあるべき肉体へ返すと」

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