第111話 123回12日目〈4〉S★2
「そうよ。忘れないでよね?」
拗ねたようにも聞こえる口調で、メルクオーテは告げる。
「行くにも戻るにも、あんたにはアタシの協力が不可欠なんだから」
だが俺はこの時、彼女が言った『戻る』の意味を瞬時に理解できなかった。
「……戻る?」
ずいぶんと間抜けな聞き返しをしてしまい、それが思わぬところでメルクオーテの気を引くことになる。
「えっ? 何?」
今まで目を合わそうともしなかったメルクオーテが、急に俺へと向き直った。
「まさかあんた……そのヤシャルリアって女のいる世界に永住でもする気だったの?」
彼女は呆れたと顔に貼り付け、じとっと俺をにらむと「しっかりしてよね」と肩をすくめる。
「あんたはアタシを連れてここに戻ってくるの。そしたら……今度は、アタシがあんたを元の世界に戻してあげるわ。それで、全部元通りでしょ」
言い含めるように話すメルクオーテに、俺は頷いて返した。
「ああ……そうだな」
しかし。
元通り――。
そんな言葉が耳に届いた途端、胸に何かがつかえていた。
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