第4話 122回109日目〈3〉 S★0
冒険者に仕事が舞い込む場所、それがすなわちギルドだ。
ギルドには仕事を受注できる受付と隣接して簡素な飲食スペースがあり、俺達はテーブル席を陣取って早めの昼食をとっていた。
すると――
「おい、いい仕事が見つかったぞ」
――仕事を探しに行っていたズグゥがヤサウェイと共に戻って来る。
ズグゥはイスを引いて腰かけると、手に握った一枚の紙きれをひらひらと見せた。
それが仕事について書かれた依頼書であることはすぐにわかる。
「へぇ、それで? どんな仕事をとって来たんだ?」
俺は掴んでいたジョッキをテーブルに置き、ズグゥに訊ねた。
すると、彼はごつい顔をにやりと柔和に歪ませる。
その後ろではヤサウェイがやれやれといった感じで口を閉ざし、俺達の様子を見守っていた。
二人の態度がおかしいことは明らかだ。
俺はヒサカ達と顔を見合わせた。
「いやあ、今のオレ達にこれ以上適任な仕事もないだろうよ」
「おい、ズグゥ……」
大げさにもったいぶって見せるズグゥをヤサウェイが温和にたしなめる。
しかし、そう言うヤサウェイの口元にも微かに笑みが隠れていた。
「もう! もったいぶらないで教えてよ」
ついに耐え切れなくなったのか、ヒサカが頬を膨らせながら言うと、ズグゥは「バーンッ」と大声を出す。
そして、彼はバンッと依頼書を大仰にテーブルへと叩きつけた。
俺達はズグゥの岩のようなごつい手で下敷きになった紙を覗き込む。
そこにはハッキリと『ゾンビ討伐』と書かれてあった。
「お前なぁ……」
思わず苦い言葉が口から漏れる。
気付けば一緒に依頼書を覗き込んでいたヒサカとハキも笑いを堪えているようだ。
直後、ヒサカがぽんぽんと俺の肩を叩いてきた。
「よかったね、タケ。ふふ……これでゾンビが食べられるよっ……ふふっ」
次の瞬間、仲間内にどっと笑いがうまれる。
「いやいや、本気でゾンビなんて食わねぇからな!」
俺の弁明は仲間達の笑い声の中にむなしく消えていった。
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