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「本当にトロルね。初めて見たかも」
マリア
俺の場合は見慣れているからか、マリアがいくら似ていると言ってもいまいちピンとこない。
ただ言えることは、顔の形が変わるほどマリアに髭を引っ張られているトロルのベザ――という名前らしい――が、非常に
「信じてもらえたか?」
「えぇ、一応。ごめんなさいね。昔
ベザは多少
間違えられたというのにその落ち着きようから、本人も「ゴブリンと似ている」と言われたことがあるのかもしれない。
ゴブリンはただの化け物だけど、トロルは妖精の
ちなみに、マリアがゴブリンから受けた酷いこと、と言うのは、人語を
さすがに死を覚悟するほど
なら、ヒョイの時は俺じゃなくてマリアにやらせた方が良かったのだろうか?
「それで、俺たちに手伝ってほしいことって何だ?」
「人の血が流れる可能性が本当に少なくなるのであれば、聞かせて欲しいわね」
丸太を
「人間がアモ川と呼んでいる川が、ここから東にやや行ったところに流れている」
水量が減ってしまい、水を確保するためにサーペット
「あそこは元々、減った今よりももっと水の流れが少なかった。昔から、貴族などという奴らが居なかった昔から、水を
「その見返りは何だ?」
トロルがただで作業を引き受ける訳がない。裏が無いか確かめるために、きちんと聞いておかなければいけない。
「くみ上げた水の一部を利用してよいこと。魔法使いが持っていた
どうやら、ベザたちと関わったのは高名な魔法使いのようだ。魔法使いとは
しかし、ベザの話が本当であれば、水量が少ないことで争いが起きるのを嫌がり、さらに、赤の他人のために自分が得てきた知識を
「申し訳ないが、二人の行動は少しの間だが見せてもらった。そして、私の勝手な思い
申し訳なさそうに頭を下げるベザ。
「マリアは、見られていたのに気づいていたか?」
「たまにね。でも、特に何かを
「そういう時は、俺にも教えてくれ。能力を
「ごめんなさい」
マリアは、すでに俺も気付いていると思ったらしい。能力制限とは、マリアが魔法を制限した生活をしたい、と言っていたからだけなので、そろそろ普通の生活に戻した方が良いのかもしれない。
「それで、どうする?」
「私は別にいいわ。争いが減るならそちらの方がずっと良いし」
「なら決まりだな」
戦火が広がってもらっても困るし、
住みにくくなったらすぐに移動したらいいのだが、やっとできた家だ。もう少しゆっくりと過ごしたい。
「本当か!? 本当にやってくれるのか!?」
下げていた頭を、バサッ、と
「
「それでもありがたい。いつ頃、来れそうか?」
「家もできたから、明日からなら問題は無い」
「分かった。私は、仲間に伝えてこなければいけないから、先に行かせてもらう。アモ川の源流はミトラ山脈の
俺は知らないのでマリアの顔を見るが、マリアも分から無いようで顔を振った。
「えぇとだな……。ここから北にある大雪山。中腹に、竜が頭をぶつけてできたと言われる、赤い岩がある山なんだが」
「ここから見て、一番手前にある山でいいのか?」
「そうだ、そうだ。そこの麓に水量が減った大きな湖がある。その西に大きな洞窟があって、そこが我々の住処になっている」
その湖がアモ川の源流で、水量が減っているせいで外へ流れ出る分も減っているのか。
そのような装置なのか分からないが、行くだけは何とかなりそうだ。
「そこなら問題なさそうだな。明日行くのも問題なさそうだ」
「そうか、そうか。では、私は先に戻っておくから明日はよろしく頼むぞ」
「あぁ、分かった。飛んで帰るのか?」
「この二本の足で、な」
バシン、とベザは自らの両足を
「夜は危なくないか?」
「
「ならいいが」
同じことを言って、翌日には死んでいた奴を多く見てきている。ゴブリンメイジではないか、と
話し終えると、ベザは言った通り出て行ってしまった。しかも、釣り竿を置いて。
ちなみに、魚も置いて行ってくれたので、夜は肉だけではなく久しぶりの魚料理も加わった
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