3
兵士たちが、
あの時、一人の兵士から教えてもらった屋根の形を
「すごいね。家が本当にできちゃった」
「初めの予想とだいぶ違うが、何とか形にはなったな」
小さいながらも楽しい我が家、を目指して作って来たが、
まぁ、それはそれでいいだろう。これくらいの適当さが、今の俺たちにはちょうどいいと思う。
「今日はお
そうマリアは笑顔でいう。はたして、これは何度目のお祝いだろうか?
カマドが
まぁ、森の中で豪勢なというのも限度があるが。
なので、最近なかなか食べる
★
道具は一応、武器庫に入れてあるが、今日はちょっと
糸はマリアの髪を使用する。勇者の髪であれば、一本でもかなりの強度になるはずだ。そして、針は元々持っている物ではなく、俺の髪の毛を
今日は、魚を釣るまで帰らない、という
しかし、現実とは
生体反応がなく、どこを狙っても
それからもう一時間ほどしたところで、「場所を変えたほうが良いだろうか?」と思い始めた頃、
この間の一件を
足取りにためらいはなく、
とりあえず、相手の出方を見るか、と足音の動きに集中していると、その足音の正体が森から現れた。
「(トロルか。
出てきたのは、魔族に
中には人間と仲良くなり
トロルは俺と同じように竿を持っており、
教えてもらったばかりで、本を読んで釣り方を考えている俺とは違い、トロルの動きはよどみなく
「(でもなんで、わざわざ俺の前で……?)」
ここには魚が居ないというのは、今までの経験から分かる。二時間程度しか釣っていないが、ここに魚は居ない。
しかし、せっかく釣り座に選んだ場所だ。それに、俺が居なくなった瞬間から釣れそうな気がして、なかなか動けない。
魔法を使って、川底に
――それから数分が立ち、ここには魚が居ない、と見切りをつけて移動しようとした時、向かいのトロルが魚を釣り上げた。
「ツッ!?」
俺が二時間
トロルが軽々と釣り上げた理由が分からず、頭の中で考える。しかし、結果としては「たまたまトロルの方に魚が集まっていた」としか思い
仕方がないので、糸をちょっと長めにして
川に投げ入れられた俺の
しかし、結果はさらに無情で、釣ったのはトロルの方だった。しかも、今回は川の中央付近。トロル側に魚が集まっていると思ったが、どうやら俺の思い過ごしだったようだ。
トロルと俺の釣りは何が違うのか、仕掛けを回収しながらトロルの仕掛けに注目した。だが、トロルの釣り竿は、俺が使っている物とそう大差はない。
「……餌は何を使っている?」
「はっ!?」
あまり長いこと注目し過ぎたからか、トロルは
「
こちらを一度も見ることが無かったのに、トロルは俺の使っている餌を言い当てた。
「そうだ。川で魚を釣る時は、ミミズを使うんだろ?」
「魚種にもよる。それに、ここに来ている魚は
魚がパンを食うのか!? 魚のくせに
しかし、せっかく教えてもらったのだから物は
その様子を見ても、トロルは何も言わない。自分の仕掛けができると、再度同じように餌を付け直し川へと投げ入れる。
そして、初めのトロルのように十分もしない内に、俺の竿に
「おぉ、釣れた」
あれほど釣れなかったというのに、トロルの言う通りにしたら
お礼を言おうとトロルの方を見ると、
「お
「あぁ、そうだ」
「なぜ魔法を使わない?」
「魔法を使うくらいなら、釣りなどしない」
食糧として魚を獲るならば、川を吹き飛ばして、
だが、これは
その答えが気に入ったのか、トロルは笑った。
「
「初めて会った奴の頼みを聞くほど、俺はお人よしじゃないぞ?」
「なに、傷ついた兵士を助けただろう? あぁいった手合いを無くすための願いでもある」
このトロル、どこかで俺たちのことを見ていたのか?
しかし、そんな気配はなかった。マリアの方は、
「話だけは聞く。どうやって、戦いを無くすんだ?」
「お主らの力で、川の水量を増やしてもらいたい」
「分かった。まず、話だけは聞こう」
「ありがたい」
「どこで俺たちを見ていた?」
「初めてお主を直接見たのは、お主が川で水を飲んでいるところだ」
「水を飲んだ?」
「その後、兵士たちに会っただろう」
なるほど、あの時か。だが、あの時は川の
「あの時、ちょうどわしは上流の方で小便をしていな。本当にすまなかったと思っている」
申し訳なさそうに、トロルは「腹薬だ」と言って薬草を差し出して来た。
本当にあの時、川で水を飲まなくて良かったと思う。
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