来訪者
1
ヒョイたちが住んでいる、ユーミト村から帰ってから数日が過ぎた。
土台だけだった
ならば畑仕事をやるか、とこの間、手に入れた種を
畑仕事をやったことがない俺には分からなかったが、蒔いた種からたくさんの芽が出た場合、間引きをしなければいけないそうだ。人間もやっているから当たり前かもしれないが、作物であっても
そういったわけで、今日は俺が
マリアは普段、家から西の方へ向かって狩に行っている。それは、東の方にはユーミト村でも話題に出ていたアモ川とその
しかし、デリケートな時期だから、と相手のことを何も調べずに置いておくのは、それはそれで危険なため、今回見に行くことに決めた。
「おっ、ここにも川があるな」
森が開けた場所に流れるのは、アモ川からの支流だろう。
水量が
川の水をすくって
今日は魚を
その音に
「良い場所だな……。
今度マリアを連れて来よう、と心に決めつつ、近くの岩に
家はできつつある。畑も問題ない。池も作った。井戸は、池と同じ
そこまで考えて、「いや」と否定する。
マリアは、
作り上げる時間は長くとも、
自分で考えて置いて何だが、なかなか
「ん?」
人数は、六、七人といったところか。とりあえず、このまま待つことにする。
★
「そっ、そこに居るのは
兵士は岩の上に座っている俺を
「こんにちは。どうかされたのですか?」
突然現れた兵士に驚く村人のフリをしてみたが、さすがにこんな森の中では
兵士は
「この近くに村はあるのか!」
先ほどまで耳打ちをしていた兵士は、俺に問う。
「この先はずっと森です。私たちは、そこに住んでいます」
「やはり村があるのか!?」
「いえ、私の
結婚もしていない男女が、森の奥で二人きりで住んでいる何て妙な
「なぜ、こんな森の奥に住んでいる?」
「私たちは、旅の途中です。暮らし
「旅人……?」
まぁ、怪しむのも仕方がない。俺の格好は、旅人というには少々身なりが良すぎる。
旅をする時は、もう少しそれなりの格好をしようと思っているが、普段からそんな物を着る気にはならない。
しかし、相手は怪我をしているとはいえ男七人に対し、こちらは俺一人だ。たぶん、彼らはアモ川の利用権で戦う羽目となったサーペット
しかも、
この先には何もないことは彼らにも分かったので、
「セシル、誰か居るの?」
「うおっ!?」
「お客さん?」
「んな訳ないだろ」
マリアは俺と同じく岩に登り、兵士たちを
兵士たちは突然現れたマリアに
「怪我してるじゃない!」
汚れ、血液が
一瞬
「まぁ、そうなるわな」
向こうがしてきたように、こちらも相手の事情をするために誰何していた。そして、結果として、川沿いに下るように言おうとしたところでマリアが来た。
こうなってしまえば、俺も川を渡りマリアのそばに居ることが一番いいだろう。
「ほら、傷を見せなさい」
「いや、しかし――」
「このままだと、
鎧を外し、中に着ている服をずらすと
「あなたたち、どこで戦っていたの? アモ川?」
「…………」
次々と、兵士たちの怪我の様子を見ているマリアが問いかけるが、問われた兵士たちは答えなかった。
「戦いは終わったの?」
「…………」
今度は、
「逃げるの?」
「女に何が分かる……」
一歩
だが、その言い方は気に入らない。
「マリ――」
「そうね、言い方が悪かったわ。ごめんなさい」
そんな奴らは放っておけ、と声に出そうとすると、マリアが声を
代わりに、マリアは俺に向かい悲しそうな顔をして首を振った。「そんなことを言ってはダメ」と。
「いや、俺たちも――。その、君たちの生活を邪魔するつもりはない。すぐにここから離れる」
マリアの悲しそうな顔が兵士たちの心に響いたのか、兵士たちは申し訳なさそうに謝罪してきた。そして顔を見合わせ、
「待ちなさいよ。そのまま行っても、その人は死ぬだけよ」
「
冷たい言い方だったが、肩を借りている兵士は力なく笑った。本人も
「安心しなさいよ。すぐに終わらせるから」
「ねぇ、いいでしょ?」とマリアは視線だけで俺に問う。
答えなんて決まっているのに、問う。
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