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俺たちも帰ろうと思ったが、
帰る途中から飛んでいくつもりだったので、暗くなる前に家にたどり着くことが出来るが、さすがに魔法使いでもない旅人がそんなことをやったら問題になるだろう、と考えお言葉に甘えることにした。
イゾータに連れられて家に行くと、頭に大きなたんこぶを作り泣きながら
一歩間違えれば死んでいた状況だったので、これくらいで
この村は、町から遠く
★
「へぇ? そんな奥に村なんかあったかねぇ?」
俺たちが住んでいる場所を聞いたイゾータが、目を丸くして聞き返して来た。
「そこには私たちしか住んでいません。周りは森で、
さらに言えば、家もまだ
「このスープ、美味しぃー」
俺たちが住んでいるところについてイゾータと話に花を
「それはね、
「あっ、本当。臭そうな見た目なのに、臭くない」
マルツェに教えられ、骨髄と言われた黒い塊を食べたマリア。見た目が赤黒く、魚の血合いのような色合いのため、そんな感想になったんだろう。
「だが、これから住むとなると
「旅人でもそうなんですか?」
「二、三日の
この村の周囲になるが、ゴブリンといった魔物を追い払うために定期的に軍隊が森に入っているようだ。今回、ヒョイが
「森には、
「いや、犯罪者と言っても盗賊はまず居ないと思っていいだろう。そんな奴らが住めるほど、楽な場所じゃないからな」
イゾータの目が、暗に俺たちに「森に住むな」と言っている気がする。
「今、ここからずぅっと東に流れているアモ川を
「なるほど」
これが、川から池に水を引かなかった理由だ。余りにも面倒くさすぎる。
「川を巡っての争いは、昔から起きていたんですか?」
「十年位前からだな。その前まで、季節で川の流れが大きく変わっていたんだ。春夏になれば川は増水して、両領地に十分な水が入っていた。だが、ここ最近は季節が変わっても流れが変わらないどころか、春夏になっても増水するどころか最近では水量が減ってきているらしい」
珍しいこともあるんだな。まるで、水が必要となる時期を
「
この話のお陰で、森にある魔物以外の危険性と、周辺地域の政治がどうなっているか理解できた。
俺たちとしては森に
そんな奴が居れば、そもそも問題になっているからあの森に危険な生き物は居ないという結果になる。
食事を終えると、俺はイゾータと酒を
すでに外は暗く、周囲の家々の明かりはほとんどついていなかった。
「マリア、もうそろそろ休ませてもらおう」
「そうね。あまり長く起きていると、悪魔がやって来てしまうもの」
夜遅くまで大きな灯りを付けて作業をしていると、ランプの油を吸い取る悪魔がやってくると向こうの世界ではよく言われている。
それは、ランプに油が
ただの子供だましと思いきや、実際にやってくる。
マリアは、
「ベーベルの悪魔だな」
「こちらでは、そう呼ぶんですね」
どうやら、世界が変わっても似たような話はあるようだ。まぁ、似たような生活様式であれば、似たような話が生まれるのも当たり前か。
「僕、悪魔なんか怖くないよ! 悪魔が来ても、追い払ってやるんだから!」
今日は客が来ている、というより、マリアというお姉さんが居るから、男としてカッコイイところを見せたいんだろう。男の子というのは、だいたいこんな感じだ。
「ヒョイ、もう寝る時間はとっくに
「え~! マリアさんから、もっと旅の話を聞きたい!」
本来ならゲンコツを
「あんたのわがままで、マリアさんを困らせるんじゃないよ。ここまで
「痛ッ!!」
バシン、と部屋に
そこがちょうど日中ゲンコツを受けたところだったようで、ヒョイは跳びあがるように叫ぶと床に転がり出した。
「本当に大げさなんだから。それにあんた、今日は何をやらかしたか分かってるんでしょうね?」
母親から今日の
「メイ・メーア様にお
「はーい」
母親から再度注意を受けると、ヒョイは一枚の
この家に来た時から気になっていた、家の質や広さと不釣り合いな一枚の天使が
「美しい方ですね」
天使とはいえ、あれが何なのか分からないので当たり
「
「なるほど」
説明を受けながら、もっと近くで見てみようと絵画に近づくと、マリアも同じことを思ったのか
「これ、マリアに似てないか?」
「そうかな?」
髪の長さはメイ・メーアの方が長いが、
でも、薄っすらとし描かれていない顔を見ると、マリアと似ていないかもしれない。
「やっぱり、気のせいかな?」
「最後まで似てるって言いなさいよ……」
似ている、と言えばはぐらかされ、気のせいか、と言えば
そんな絵画を見る俺を見る視線がある。
「何だ?」
寝室へと続くドアから顔だけ出しているヒョイが、俺を見て笑っていた。しかも、何も言うことなく、だ。
その顔がすこぶるムカついて、手から小さな空気の
「痛いっ!」
「あんた
「母さん! 今っ! 今、セシルさんから何かぶつけられた!」
母親にチクったって
「何かって何なの! 言うこと聞かないから、メイ・メーア様から
早く寝なさい、とマルツェから怒鳴られると、ヒョイは渋々寝室へ戻っていった。
天使メイ・メーアは、かなり
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