4
マリアのおかげで
ありがたいことに、種も
「旅人にしては、
種を欲しがる俺を見て、ヒョイのおじさん――ビゲルは不思議そうに聞いてきた。
「旅も良いですが、たまには地に根を張って生活するのも悪くありません」
当たり
「支払いは、ガプス
「ガプス? いや、俺はこの国の貨幣を持っていない。だから、これを買い取ってほしいんだが」
取り出したのは、向こうの世界の金貨だ。質としては、この行商が見せてくれたガプス貨幣の金貨よりも良いはずだ。
「見たことがない国の
「なら、これは?」
袋に手を入れるフリをして、武器庫からアクセサリーを取り出す。
他の世界では、自分たちが今まで使っていた貨幣は、材料としての価値しかなくなるのは理解していた。
だから、勇者との戦いへ
自分の持ち物より、人間の城を
「凄いですね……。これほど
行商が目を付けたのは、一つのブローチだ。赤色の宝石が中心にはまっていて、太陽に
しかし、純度とはどういった意味だろうか?
宝石を見ていた行商は仲間を呼び、買い取り価格の
「あっ、ほらほら。これ何て
マリアが手に取ったのは、
しかし、デザインとしてはこちらの方がやや上のようだ。
「手紙を買って、どこに送るんだ?」
「もしかしたら、書くかもしれないじゃない。先を
「なるほど、確かに」
手紙を使ってどう戦うのか見物だったが、このデザインは俺も好きだ。マリアの言葉を借りることになるが、先を見越しての行動、は大切だ。これも買おう。
「セシル様、少々よろしいでしょうか?」
「あぁ、分かった」
買い取り価格が決まったのか、行商に呼ばれて行ってみると一枚の書類が用意されていた。
「このブローチ――特に中央にはまっている宝石が欲しいのですが、我々の商品全てを差し出しさらに今あるお金の全てを払っても足が出てしまいます」
「なるほど。ですが、不必要な物まで引き取ることはできませんからね」
「もちろん、我々としてもそのようなことはできないと
商人側の
差し出された書類に目を通すと、
「ガンツ男爵とは、この辺り一帯を
「えぇ、そうです。この村はその
貴族の名に反応した俺を見て、商人はホッ、と
これを持っていれば、万が一、このデレクサー商会が約束を
貴族が平民――さらに旅人の話を聞くとは思えないが、初めからだますつもりで貴族の名を
「なるほど、分かりました。さきほの話の通りで問題ありません」
「ありがとうございます。では、この二枚の書類にサインをお願いします」
出されたのは、俺と商会が持つ書類の
「こういった宝石は、他にもお持ちなのでしょうか?」
「数はありませんが、ほんの少しだけ。ですが、金を持って歩けるほど大所帯の旅ではないので、こうやって換金している次第でして……」
つまり、持ち運びやすくするために宝石に
商人はやや残念そうに、目を伏せた。だが、
相手が俺で残念だったな。
「旅人と
「そうですね。急ぐ旅ではないので、腰を
そう言い笑う俺に、商人は楽しそうに笑った。
商人の仕事は、売れるものを売れる場所へ持っていき、高値で売ることだ。危険なところにも行くだろうし、代わりに誰もが
しかし、そんなことは
商会
かといって、俺たちのように旅人になる勇気もない。そんなことをするくらいなら、お金を
なるほど、こいつは信用できる。
「もしここにない物がご
「そうか、それはちょうどいい」
それに、家のような大きなものは俺の手でも作れるが、椅子といった細かい作業は
「つまり、新生活に必要なもの
商人としては、お金で払うよりも商品を渡した方が安上がりになるし、商品のデットストックを払い出す意味も
マリアにも色々と聞いて、一つでも商品を買わせようとしている。マリアもマリアで、
さすがに、家に収まらない物を買う訳にもいかないので。途中で俺も参戦して必要な物とそうでない物を分けた。これが、とても楽しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます