昼食分の野ウサギはぶつ切りにした後、香辛料こうしんりょうをかけてフライパンで焼いた。他は昨日と同じかたパンとワインだ。

 昨日は飲み物としてスープがあったのでよかったが、今回は水分が少ないのでワインを出した。

 お洒落しゃれなグラスは無いので、武骨ぶこつなマグカップに注ぐだけになったが、外で飲むにはこれくらいでちょうどいい。


「セシルは、私がウサギをりに行った後、何してたの?」

「池を作ってた。景観と食料保存つりのために」

素敵すてきね。船をかべて、休みの日にのんびりと乗るのも良いわね」

「そこまで大きく作っていないよ。小さな、ため池みたいな奴さ」


 マリアから言われて後悔こうかいした。このくらいで・・・・・・良いだろう・・・・・適当てきとうな大きさにしたが、大きく作って船を浮かべればよかった。

 拡張しようにも、池にはすでに水が溜まっているだろう。そんな状態で爆発魔法エクスプロージョンてば、土だけではなくどろや泥水が周りに飛び散ってしまう。

 泥や泥水が草木につけば、そこから腐り病気になってしまうので、できることならやりたくなかった。


「あら、小さい池でもいいじゃない。一緒に船に乗って、のんびりするっていうことが大事なのよ」


 しかし、マリアにとって池の大小は関係ないらしい。

 細かいことは気にしない、やることに意義いぎがあると笑顔で言った。気持ちのいい性格をしていると思う。


「それに、川遊びも良いわね。池の水は、川から引いているんでしょ?」

「川から水を引くには距離きょりがあるし、もし川の流量りゅうりょうが少なくなって下流の村から文句が来たら嫌だから、地下水脈ちかすいみゃくまで掘った・・・よ」


 あらそいの原因としてよくあるのは、水の確保かくほだ。川から村へ水路すいろをひけば、そのぶん下流へ流れる水量は減る。下流の村にとっては死活問題だ。

 それに、川が村を通れば生活用水となり汚れた水が下流に流れるので、それもまた問題になることがある。


 場所によっては、川は水運すいうんを行う上で重要じゅうような通路となり、そこから通行税を徴収ちょうしゅうすることもできる。

 今はまだおだやかにらしたい俺たちにとって、そんな無駄むだな争いを起こしたくなかった。


「それじゃあ、お魚が食べられるのはまだまだ先ね。この近くには、まだまだ野ウサギが居そうだからわなを作って仕掛しかけておくのもいいわね」

「じゃあ、つるを使って罠を作ろうか」

「そっちは私がやっておくから、セシルは家の方をお願いしていいかしら?」

「分かった。そろそろ、木が出来上できあがる頃だろうしな」

満天まんてんの星空のしたって寝るのも素敵だけど、雨が降ってきたら大変だしね」


 そう言い、マリアは晴天の空を見上げた。二、三日は雨が降りそうにない空だったが、だからといって来週の天気は分からない。

 屋根がある建物たてものを早く作ることに越したことは無いだろう。

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