7
「ただいま」
自宅(予定地)に戻ると、野ウサギを追いかけていったマリアがすでに帰って来ていた。
「おかえり~」
何か楽しいことがあったのか、マリアは笑顔で俺が帰って来たことを喜んでくれた。
しかし、手は何かをゴソゴソとやっている。何をしているのだろうか?
「ねぇねぇ、セシル! この世界って凄いのよ!」
「どうした? 何か面白い物でも見つけたか?」
「そうなの! 前の世界だと、空から降ってくるのは雨や雪だったけど、この世界では土も降ってくるの!」
明るく、今さっき起きた出来事を話してくれるマリア。でも、ごめん。それ、俺のせいだ。
「大きな
慣れない
その代わり、笑顔で「近いうちに、見えた村に行こう」とだけ伝えておいた。
「そろそろお昼だから、早めに帰って来てくれて良かった」
お昼には少し早い気がするけど、今からゆっくりと料理をすれば、ちょうどいい時間になるだろう。
昨日の夕食はソーセージだったから今日は何にしようか、とリュックの中を
どうかしたのか、とマリアを見ると、いたずらっぽい顔で
「どうかしたか?」
「じゃーん!」
聞き返す俺にマリアが差し出して来たのは、
っていうか、うん。さっきマリアが「可愛い」と言って追いかけていった野ウサギだよな?
「おぉ、でかした。この世界で初めての
野ウサギと
俺の魔法である武器庫は、中は時の流れという概念が無いので、保存食も
とはいえ、万が一の時に
「お昼に一羽食べて、夜にも一羽食べればいいよね?」
「それがいい。夕食分の一羽は、俺の武器庫にしまっておくか」
先もいった通り、武器庫に入れておけば
野ウサギを受け取ろうと手を出す俺に、マリアは再び
「ダメだよ~。できることから、コツコツとこの生活に慣れないと~」
マリアは、まだ魔法制限生活を続けるつもりのようだ。かなり雑な感じかしないでもないが、ここはマリアに合わせるとしよう。
「この
その方が一度に調理できて、夕食の調理の
しかし、それも気に入らないのか、マリアは「チッチッチッ」と人差し指を、俺の眼の前で振った。
「こっちの
差し出されたのは一枚の大きな葉。紫と緑が入り混じった、気色の悪い
「
「名前からしてダメな気がするが、それって大丈夫なのか?」
「
この葉っぱは名前負けしない能力を持っているようだ。
「それで、その毒虫草をどうやって使うんだ?」
「この葉っぱでくるんでおけば、
「でも、食べると死ぬんだろ?」
「葉っぱを直接食べなければしなないわよ。確かに、こうやって保存したものを一気に、大量に食べたら体調不良になるそうだけど、夕食にウサギ一羽食べたくらいじゃどうってことないわ」
話を聞くと、マリアは猟師から教えてもらい、それ以来ずっとやっている方法だそうだ。
たくさん、という量は人それぞれ違うと思うが、普通の人であってもウサギ程度の肉量であれば、いっきに十羽くらい食べても問題はないそうだ。
「気を付けないといけないのが、この葉っぱを好んで食べる虫が居て、その虫を間違って食べちゃうと葉っぱを食べたのと同じになっちゃうから
「なにそれ怖い」
毒草を食べる虫が居り、それが毒草を食べることで毒虫へと進化するので、この植物の名前は毒虫草らしい。なかなか興味深い話だ。
「それにしても、この葉っぱが毒虫草だって良く気付いたな?」
毒々しい色をしているといっても、この毒虫草と似たような色合いの葉を持つ植物はたくさんある。
そこにある、折れてしまい痛んでしまった葉っぱも似たような色合いをしている。
「見た目が似ているってのもあるし、捕まえた野ウサギに試しに食べさせてみたら
俺たちは魔王と勇者だから、普通の人間とは体の作りが違う。多少……それ以上の毒であっても死ぬことはないだろう。
しかし、人に料理を出すときは注意しなければいけない。体が
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