「セーシルッ♪」


 切り倒した木に、一本、一本、丁寧ていねいに水分を抜く魔法をかけていくと、マリアから楽し気な声で呼ばれた。


「どうかしたか?」

「あれ見てよ、あれ!」


 マリアが指さす方を見ると、そこには二羽の野ウサギが赤色の木の実を食べていた。


「可愛いね~」

「そうだな。それに、あんな低い所に木の実があったのか」


 周りの木に比べてだいぶ低い木。そのさらに下面には、赤色の実が成っていた。

 低すぎるその枝になっていたので、野ウサギが食べているのを見て初めて気づいた。


「あっ、行っちゃう、行っちゃう」


 俺たちの視線を感じ取ったのか、野ウサギは俊敏しゅんびんな動きで木々の間をくぐりり抜け、草むらの向こうへ走って行ってしまった。


「待って、待って~!」

「あまり遠くに行くなよ!」


 子供のように野ウサギを追いかけて行ってしまうマリア。

 あの野ウサギは俺たちにだけおびえていただけだったようなので、周囲には巨大な猛獣もうじゅうは居ないんだろうと予想できる。


 まぁ、猛獣がおそってきたところでマリアの敵ではないが。

 しかし、注意は必要だと思い声をかけたのだが、マリアは「分かった~」とこちらを振り向きもせず奥へとけて行ってしまった。



 魔法をかけ終わると、手持ち無沙汰てもちぶさたになってしまった。魔法をかけたからといって、一瞬で木の水分が抜けるわけではないからだ。

 なので、その隙間すきま時間で何ができるだろう、と少し考えて思いいたる。


 家の近くに池を作るのはどうだろうか?


 飲み水は井戸から確保すればいいので、池は俺たちのいこいの場として利用するだけとなるが。

 しかし、それだけではもったいないので魚を放流ほうりゅうしてりができるようにする。

 昨日、空を飛んだ時に近くに川があるのを視認しにんしている。そこで釣った魚を池に放流して、魚が食べたくなった時は、そこから再び釣り上げる。


 その場合、ただのため池では水質すいしつが悪くなるので、地下水脈ちかすいみゃくの流れを少し変えて池の底からき出るようにすることで、常に水が循環じゅんかんした状態となるので魚が臭くない状態にできるだろう。

 そうと決まれば、池作りだ。



 先ほどと同じように、池を作る場所を確保かくほするために周辺の木を伐採ばっさいして、土地を確保していく。

 ここで切った木はすぐに使わないので、枝葉を打ち払い丸太にした状態で、適当にその辺に

 池用の土地が出来たら、池の大きさを考えて目印をつけ、そこへ目がけて爆発魔法エクスプロージョンを撃ち放つ!


 ドォォォォォォオオオオ!!!! という、大地を揺さぶる震動と、鼓膜こまく一時機能停止いちじきのうていしさせるほどの爆発音ばくはつおんひびくく。

 視界をふさいでいた土埃つちぼこりが晴れると、爆発によって地面は大きくえぐれ、はじけ飛んだ土は天高てんたかく舞い上がっていた。


 それから一瞬遅いっしゅんおくれれて、時間が止まったように静かだった森の木々から小鳥たちが一斉いっせいに飛び上がった。


「ふむ……。なかなか綺麗きれいに掘れたな」


 爆発魔法エクスプロージョンによって掘り返された池は、やや人工的じんこうてきな見た目がいなめないが、それでも周囲の景観けいかんを損ねない程度ていどには上手くできたと思う。

 あとは、ここに水をめるだけだ。


 しかし、このまま水を溜めては掘りたての柔らかい土がけて流れてしまうので、硬質化こうしつかの魔法をかけて土が水に溶けださないようにした。

 最後は、地下水脈ちかすいみゃくの流れを少しいじって、底から常にき出すようにして池の完成となった。


 このままでは殺風景さっぷうけい水たまり・・・・になってしまうので、土が安定してきたら近くの川から水草なりなんなり持ってきて移植いしょくしようと思う。

 これで、池は一時完成として良いだろう。

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