4
昨日に引き続き、今日も空は晴れ渡っていた。
朝食は、昨日のスープに固パンを入れて一緒に温めた物。肉も少し食べたかったので、薄く切ったサラミもその中に放り込んでおいた。
「今日は何をしようか?」
まるで今から遊びに行く子供のように、マリアは腰に手を当てて言った。
「今日は、家づくりをしようと思う」
人が生きていく上で必要な物は、衣食住。服は今着ている物の他に何着か持ってきているし、食料も少しの間、大丈夫だ。つまり、
「家! さっそく家を建てるのね!」
昨日の話し合いというには簡単すぎる未来への
そして、
「あまり
まずは木組みの家になるだろう。というか、周囲の材料を見ればそれしか考えられない。
「えーとねー。やっぱり、小さい家がいいかな?」
「どれくらい?」
「小さいといっても、キッチンが無いと料理が出来ないからカマドは欲しいし、それに
つまり、ごく一般的な
「部屋の広さは、どれくらいがいいだろうか?」
「なるべく、小さ目でいいわ。無理しなくて良いから!」
「さっきも言った通り
確かに、家づくりは初めてだけどそれなりに調べてきた。今は
マリアからの
「ちっ、違うの。あの、できたら、相手が――好きな人が、目の届くところに居て欲しい……。それに、数歩進めば手の届くところに居て欲しいし……」
必死で言葉を
俺はというと、
だって、ただの
色々とあって
「そうだな。俺も、好きな人が近くに居てくれた方が安心だし」
すまし顔で言ったが、言われるのと言うのとではこれほど違うのか、と
これが魔王か。なんと情けない魔王だろうか。
「よっ、よし! じゃぁ、
材料となる木は、周りにたくさんある。家を建てる以外にも、井戸も
そこで問題になるのが、木を切るための刃物だ。木こりが
そこで武器庫から取り出したのは、
魔王城の
「危ないから離れていろよ」
周りの木は、意外と太い。倒れる方向は
近くにマリアがいないことを確認すると、
バキバキ、と
「すごい。一発だね」
「あぁ、まかしとけ」
自分でも、意外と上手くいったことに驚いていた。これなら必要分がすぐに切り出せるだろう。
「あれっ?」
しかし、そんな甘い考えは
切り倒したばかりの木に、ある
そちらを見ると、今倒したばかりだというのに木から
「なんだこれ!?」
予想外の出来事に、俺もマリアと同じように驚きの声を上げた。
どうなっているんだ、これは!?
「なんでこんなことに……?」
この世界では、俺たちが居た世界とは
だとしたら、俺たちが今まで使ってきた魔法では太刀打ちできない何かが居るかもしれない。だとしたら、旅も危険なものになるだろう。
「いや。っていうかさ……」
旅について
「それって
「あぁ、そうだ。これが一番切りやすい形をしているからな」
「
「ある。おかげで、集団戦には不向きで使いどころが難しい武器だった」
この武器は、俺たちが小さい頃からあったのでマリアも知っているはずだ。能力については、いまさら聞くこともない。
「
「まさかぁ」
即死効果は人間にしか現れないはずだ。だから、マリアがそう予想してもにわかに信じられなかった。
なので、物は
すると、数十秒もしない内に、
「初めて知った」
自分が持つ武器が、木の命も
「そもそも、歴代魔王の武器を使って木を切る人なんて居ないだろうしね」
マリアが
「確かに、その通り」
つまり、俺がその魔王となったのだ。これは
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