2
飛行魔法を使って視界を
とはいっても、相も変わらず木、木、木。どこまで見渡しても木が
さらに高く飛び上がると、遠くに集落らしき村があり、そこからつながる道の先を見るとやや大きな町もある。今居る場所から集落まで、歩けば3日程度といった距離だろう。
「ひゃあ~……。何にも無いね」
俺と同じく飛行魔法で空を飛んでいるマリアは、手のひらでひさしを作りながら遠くに見える集落を見ながらつぶやいた。
この時すでに、俺たちの姿は
「今はそれくらいがちょうどいい。贅沢な悩みかもしれないが、俺たちは必要とされすぎた」
中には誰かから必要とされたいと思っていても、誰からも必要とされない人が多く居る世の中で、この考えは贅沢だろう。
でも、人に
「そうだね。これくらいの方がちょうど良いのかも」
マリアからも同意を得られて何よりだ。ここで意見が
「――っと」
空から地面へと降り立った。木々に囲まれているので、空より風の流れが少ない分、いくらか静かだった。
所々で聞こえる葉が
何かあっても対応できる、という
「これからここに住むにあたって、住居はどうしようか? 少しだけ村に近づくか、それとももっと山に入るか。それとも、移動して景色が良い所にしようか?」
俺が住んでいた魔王城は、見晴らしの良い高台に位置していた。空は常に赤く、おどろおどろしい影が
森に
「全部!」
「へっ?」
「ぜーんぶ!!」
しかし、マリアから出た言葉は俺の予想を
「まずは、ここ! ここね!」
ズムン、と
「私たちが初めて降り立ったこの場所に、初めての家を建てようよ! 初めてだから、小さい方が良いよね。その方が、ずっと近くに居られるし。それでね、次は海が見える家が良いな。海って知ってる? すっごい大きな水たまりなの!」
「それでね、それでね」とマリアは
それに俺は目を白黒させながら聞いていたけど、次第に自分がなんと小さい男なのだろう、と思い
一つの方が
「それで、最後は――」と、マリアは小さく
「それで、最後は小さな家で寄りそって、『楽しかったね』って言って寝るの」
寝る、というのがどういった意味か理解できた。
それは、俺たちが迎えるはずだった、強制的に
「どう……かな?」
未来に
「それは、すごく良い考えだ。俺には思いもつかなかった。なら、まずは初めの願いを叶えるために、ここに家を建てよう」
家を建てると言った
「まずは、何をしよう? 木がいるよね?」
「そうだな。でもその前に、
上を見上げれば、木々の間から青々とした空が見える。しかし、東の空は次第に紫になっている。
季節は春終わりくらいだろう。日が落ちるのも、まだまだ早い。
「寝床……。そっかぁ」
マリアの家族は、俺が知っている限りでは大魔法使いだけだ。他にそういった話を聞かないので、たぶん一人だけだ。残念ながら、その大魔法使いもすでに
思い出の品は多くあるといっていたが、そのどれもが死地へ持っていくには大きすぎるものだから、全て知人に預け、
そのため、今のマリアは着の身着のままの
「一応、マリア用の物は用意してあるつもりだ」
そういい、俺は自分の影――武器庫と呼ばれる、様々な道具をしまっておける魔法から、マリア用に
「わっ!? すごい!」
勇者には無く、魔王たる俺のみ使うことができる、
その取り出した外套をマリアにかけてやると、マリアは
「どう?
「あぁ、似合ってるよ。なんたって、俺が
「ありがとっ」
全て置いてきたマリアと違い、俺はこうなることを願って色々と物を入れてきた。
「家はすぐには作れないから、今日は枝に布を引っかけてテントを作り、その下で
「うん、良いね」
マリアからも同意を得られたので、まずは
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