新しい生活
1
目を開くと、そこには赤茶けたあの無人島の地面は
周囲を見渡そうと首を動かすと、ガチャリ、という
「ごめん。大丈夫か?」
腕に抱える女性――勇者マリアに視線を落とし聞いた。
「うん、大丈夫。鎧が当たっただけだから」
マリアは俺の腕の中で少しだけはにかみながら答えた。そしてすぐに、俺の存在を確かめるように、鎧が当たって痛いと言ったにもかかわらず抱き着いてきた。
一人迷子になっていた子供のように、俺の存在を確かめてきた。十分に落ち着いたのか、マリアは俺と同じように周囲を見渡して聞いてきた。
「成功したの?」
「たぶん……としか言えないな。あることは知っていたが、来るのは初めてだ」
ここは、俺たちが戦っていた
勇者が俺の幼馴染のマリアだと分かった時から、こうなる可能性を考えて――いや、こうなれたら良いな、と
ほぼ賭けだったようなものだが、こうして肉体を維持した状態で存在できているということは、成功といって間違いないだろう。
「でも、本当に良かったのかな?」
「後悔しているのか?」
「ううん、ぜんぜん。……でも、ちょっと気になるかな――って」
気になる、とは俺たちが居なくなった後の世界のことだ。
ちなみに、「良かったのかな?」とマリアが
「大丈夫だろ。戦争が継続できないくらいには破壊しておいたし、あの場に居た魔力保持者も、俺たちの余波を食らって魔力回路がショートしている。当分、戦争を始めることはできないさ。それに、部下には俺が死んでしまった場合の行動計画書を渡してある。今ごろ、人間と休戦協定を結んでいるころさ」
先も言った通り、マリアと一緒に逃げることは前々から考えていた。その場合、互いに不幸にならないように、居なくなった後のことも考えて周到に様々な計画を立てた。
言うなれば、『義理は果たした』というやつだ。
「
「純粋な力じゃ、マリアの方が上だよ。下手したら一発で消し炭だ」
俺は魔族の中では最弱と言って良い。それは、人間の血を強く引いているからだ。
なぜ魔王として
マリアと別れたのは、秘儀を習得するよりも前だ。当時は、俺は魔力や純粋な力の弱さから魔王になれるとは誰も考えていなかった。
もちろん、大人になったら会おう、と約束していたマリアも俺が魔王になっていたとは思っていなかったので、互いに気付くのが遅れたというわけだ。
まぁ、今さらそんなことはどうでも良い。
「さて、今日からこの世界で暮らす訳だが……」
再び周囲を見渡してみるが、景色は変わることなく緑一色だ。
空を見上げれば青もあるけど、基本は緑一色。
「ここはどこだろうな……」
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