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コンコン、コンコン……
オフィスルームから外へ繋がる廊下側のドアが、ノックされる。
「おっと、そろそろ時間だ。今日は下見と顔合わせだけど、一応オモテでも使えるようにしてある武器は持って行けよ?」
オーナーが時計を見上げて、慌ただしく立ち上がり、ノックされたドアを開ける。そこに居たのは、小柄で可愛らしい、ゴツめのヘッドフォンらしきものが特徴的な丸顔の少女だった。
「北朝カスミ、です……こちらは準備出来ました。あの、いつでも行けます」
「アズマもミサトも、武器だけ携帯して、さっさと行ってこい。地図や応急処置セットはカスミに渡してある。歩きながらでも受け取っておけ」
ヘラヘラした口調で、追い払うようにオーナーが告げる。アズマとミサトはオーナーに軽く背中を押されてドアの側へ。
「出たよオーナーの横暴……バーゲンなら、買い物ぐらいしたいわ」
「多少なら、構わないぞミサト」
「はいはい、オーダーはしっかり受けますよーだ!」
オフィス・ルームから廊下に出る前にミサトはルームを覗き、オーナーに向かってべっと舌を出す。
「あの……ミサトさんとアズマさんは、どのような武器が扱えるのでしょうか?」
遠慮がちに話しかけるカスミ。パッと見た感じでは、傭兵部所属だなどと分からない彼女。グレーゾーンでは、見た目と能力が一致しない、見た目と実年齢が一致しない等も、当たり前なのだ。多少遅れてはいるものの、オモテでも遺伝子組み替えによる整形技術が広まるご時世、誰がどこをどのように組み替え、強化しているかも初対面ではまず分からないのだ。
「そうか、キミ、傭兵部だものね。武器の選び方なんかも上手いのかな……僕もミサトも、扱えるのは銃や投擲ナイフ程度。接近戦は……一般的なチンピラをまいて逃げるぐらいの護身術程度で、向いていない」
「営業部なんて、そんなものよ。いざという時には、至近距離で銃をぶっ放す!その程度よ?」
アズマとミサトの言葉にカスミは静かに頷いて、廊下の壁に掛かっている武器から小型の銃と、軽めのナイフをいくつか選ぶ。
「これなら……あまり重くない、ですから、扱いやすいと思います」
カスミが2人に差し出した武器と、応急処置セット。応急処置セットが武器のホルダー代わりにもなる。そこに、それぞれが扱いやすい武器を装備して仕事に出るのが、このギルドでの常識だが、営業部がその範囲に入る事は珍しい。
「うん!準備出来た。ありがとねカスミ。道案内も、よろしくっ!」
カラッとした口調でミサトが告げる。コクリと頷いたカスミを先頭に、3人は古びた雑居ビルを後にする。
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