第28話

 昔からよく聞くのが、小説は読まないけれど、小説を書く。という言葉だ。


 そういう人の中で小説を書くことが長く続いている方は、小説ではなく、時事やあらゆるニュース、映画、漫画などをよく読んでいる方くらいだろう。


 全くなにも読まない方で、小説が長続きしている方を知らない。


 他人の小説を読むと影響されるからとか、自分の読みたい小説がないから代わりに書いたとか、そういう言葉を聞くこともある。


 そういう方は、自分の内部の情報や引き出しや雑多な物事をどうやって作り出し、手に入れているのだろうか。


 私が筆を折ったとき、アウトプットにもインプットにも行き詰まったときだった。

 新しい小説を読むことができず、日々消耗して生きていた。周囲が見えず、経験を身につけていかなかった。とても主観的に物事を処理して感情的になっていた。


 だから、引き出しにしまって使えるものが少なくなってしまったのだと思う。


 アウトプット、小説を書くことには、インプット、物事の情報収集が必要だと思う。

 それは、美しい景色を見たり、いろいろな人と話をしたりすることでも得られる。


 なにもしないでただ書くことに費やしていると、心の土壌が干上がってくる。栄養として、インプットする必要が出てくるのだ。


 そんなものは必要ないと思う方もいるだろう。

 だけど、そんな方に私は密かに思う。

 あなたはいつか、書くことをやめるだろうと。


 ※ 追記


 同時に一種類のジャンルしか読まずにそのジャンルを書き続けたいのに文章が下手だと言われた人がいる。

 口に出して言うと角が立つので、言わないでいたけれど、その特定のジャンルが書きたかったら、いろいろなものを呼んだり見たりすることも必要だと思う。

 それは一見無駄なことかもしれない。

 恋愛を書きたいのに、現代ドラマを読んだり、ミステリーを読んだり、ハードボイルドを読んだり……

 けれど、それだけ引き出しは増えるので実はとても有意義なことなのだ。

 また、文章がうまくならないという。

 それは書くばかりで自分の書いたものを振り返ってみないからだ。

 書捨てというのがあるけれど、どんな作品も書捨てにしていれば、どれほど書い続けても文章はうまくならない。

 この間書いた作品はここがうまく書けなかった気がする、この作品ではそこを気をつけて書こうという意識が、作品をうまくしていくことにつながるのではないだろうかと思う。

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