第26話

 今も注意しているし、昔デビューする前にもよく注意されたのは、視点の移動です。


 視点とは、一人称なら主人公となる人物の視点の動き、三人称なら第三者の視線の動きを指しますし、それはつまり情景描写の移り変わりを書くことです。


 そこにあるものをぱっと見たものを書くのではなく、人物が移動していく順番にその傍にあるものを書いていくことや、カメラをズームアウトした時に書く情景のことです。


 一番一般的なものは、まず部屋の様子をズームアウトしたところから書き、人物の手元や近くにある物、注意をひくものを書いていくことになると思います。


 そのときに、思いつくままに書いてしまうと、視線がアチラコチラに移動しながら書くことになるので、描写がぶれてしまいます。


 わたしが編集者さんに言われたことは、まず、人物がズームアウトで見た描写。

 真っ直ぐな廊下があり、左右に扉が3つある。扉と扉の間にはチェストが置いてあり、チェストの上にはそれぞれ人形と花瓶が置いてあった。みたいな。

 傍に人形があったら、その人形がおいてあるチェストから人形のことまでを一段落に書いてしまうこと。そこから移動した際にまた引き返して人形の描写をしない。


 特にその時書いていたものがゴシックホラーだったので、小物ひとつひとつの描写が大変でした。順をおって書いていかないといけないので、自分が今いる場所、見えているものを把握していなければいけません。


 編集者さんはそれを図にして、よく考えて描写するようにと指摘しました。


 図にするのは簡単ですが、それを文章に表すのが難しいです。


 読者さんに言われたこともあるのですが、わたしは今でも情景描写がごちゃごちゃしているそうです。気をつけていきたいです。


 これを見直すのは、一段落の描写にちゃんとまとまっているか。描写があちこちに飛んでいないかをよく読みなおすしかありません。


 先ほどズームアウトと書きましたけど、全体を見た時を指します。

 細部を書くときはズームインすると思ってください。

 文章の情景描写はカメラワークです。カメラに収まっている情景を書くように気をつけてください。

 ズームアウトしてはすぐズームインして、またすぐズームアウトすると、読者さんが疲れると思います。


 そこら辺はセンスとしか言いようがありません。

 毎回、勉強・反省しながら書くしかないと思っています。


 ※ 追記

 ついこの間書き終わった仕事で、まず最初にお願いされたのが「三人称に見える一人称」でした。

 わかりやすく言うと、視点は人物を見下ろすところにあるのに、心理描写は一人称ってやつですね。で、主語は抜き、できるだけ「自分」と書いていく。

 最初は戸惑いましたけど、ラノベの書き方ににてるなと思ってからは楽になりました。

 わたしが書いたのは乙女系小説ですが、少女小説とラノベに官能小説足したようなものなので、理解しやすかったです。

 ただ、編集者や出版社によってはすごく嫌う書き方なのでかき分けていったほうがいいなと思いました。

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