第3話 みんな大好きだよ
ヒロキは、短気だった。
今日はデートだったのだけど、わたしが待ち合わせに5分くらい遅れてしまって、こっぴどく怒られた。
「時間を大切にできない奴は人を大切にできない」
って。
確かにそうなんだけど……。
いつもせっかちで、なんでも効率的にやりたいヒロキには、少しだけついていくのが大変。
セックスのときも結構自分勝手で、こちらとしては少し物足りない。
次の日は、タカシと渋谷に買い物に行った。
タカシはとにかく優しかった。ぶっちゃけヒロキとは大違いだ。
夕方に寄ったアクセサリーショップでかわいいパールの指輪を見つけた。
「買ってあげるよ」
と、わたしにその指輪をプレゼントしてくれた。
もちろんセックスもすごく優しくて、いつもとろけるような夜をタカシと過ごした。
それから2日後、マサヤと近所の居酒屋で飲んだ。
マサヤはちょっと弱気で、自分に自信のないタイプ。根は優しくて人に流されがち。
「俺だってさ、もうちょっと堂々と生きたいんだけどさ」
なんていつも愚痴をこぼしながらほろ酔いで語ってる。
セックスは……まぁ普通かな。わたしの顔色伺いながら体に触れてくる感じは嫌いじゃないけど。
マサヤと飲んだ2日後、短気なヒロキがわたしの家に遊びに来た。
最初はゴロゴロテレビ見たりして、夜になってわたしはキッチンで料理を始めた。
そのときヒロキが
「なにこれ」
と、棚の上に置いてあるパールの指輪を見て、急に不機嫌そうな表情になった。
「おまえ、こんな指輪あったっけ?自分で買ったん?」
「ちがうよ」
「じゃあだれからもらったんだよ!」
ヒロキの語気が強まった。
「……タカシからだよ」
「誰だよそいつ……浮気してたのかよ……」
「君だよ」
「は?」
「5日前の君だよ。渋谷のアクセサリーショップで買ってくれたんだよ。やっぱり覚えてないんだね」
「そっか……タカシは俺か……ごめん……」
「うん、いいよ」
「今度はタカシって奴がでてきたんだな……ごめんな。俺、もう、自分の中に何人いるかわかんねえ……」
「累計で12人目だね。もう慣れたよ」
さて、明日は誰になるのかな。わたしはタカシに会いたいな。
大好きなのに。(恋愛ホラーのショートショート) あんちゃ @mazimazi
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