アミメキリン対ヒグマ 犯人はヤギね!
ヘラジカ対シロサイはパワー勝負となったが、最終的にシロサイのパワーが勝利した。火消しってすごーい!
そして一回戦第四試合アミメキリン対ヒグマが始まろうとしていた……!
「ふっふっふ。この名探偵アミメキリンに解けない謎は無いわ!」
「はぁ、なんで私の相手はこんなやつなんだ?」
自信満々に言い放つアミメキリンに対し、溜め息をつくヒグマ。
「アミメキリンさん……なんかあんまりこの場に似つかわしくない発言ばかりしてるような……」
「かばんは分かってないですね」
「あれは作戦なのです」
「作戦?」
「ほら、貴方の後ろに黒いヤギの影が見えるわ!!」
「いや、なんでヤギなんだ……」
「見るのです。どんどんヒグマのやる気が無くなっているのです」
「恐ろしいのです。あれがアミメキリンの作戦……」
「そう……なのかな?」
「というわけで、一回戦第四試合アミメキリン対ヒグマ、試合開始するのです」
「めんどくさいのでとっとと終わらせるのです」
「博士達もやる気なくなってる!?」
「まぁいい、とっとと終わらせて……」
ヒグマがやれやれとばかりに武器のくまくまスタンプを取り出そうとすると、恐ろしい圧力で何かがぶつかってきた!
べちん!!
突然の強襲! アミメキリンのマフラーだ!!
「かはっ……!」
咄嗟に左腕で防ぐヒグマだが、不意打ちで体勢の整ってなかったところに思いがけない攻撃力! 抑えきれずに横に吹っ飛んでごろごろと転がった。
「甘く見たわね、ヒグマ! 私のマフラーの威力を!」
どや顔で言い放つアミメキリン。
「今、すっごい痛そうな音したよー!」
「マフラーがぶつかっただけなのに、あんな勢いがあって重そうな打撃音……どういうことでしょうか?」
「今のはネッキングという攻撃ですね」
「あのマフラーはアミメキリンの“首”なのです」
「首?」
「フレンズ化する前のアミメキリンはとても長い首を持っていました。その長い首は高いところにある餌を取るのに便利なだけでなく、攻撃手段としても使われたそうです」
「フレンズ化してヒト型になった際に長い首は失われて、代わりにあのようなマフラーとして名残りが残っているというわけなのです」
「そうなんだー!」
膝をつきながらも立ち上がるヒグマ。だが、先程受けたダメージが響いているようだ。
「ぐっ、確かに侮っていたことは認めよう。しかし、ここまで結構離れてたぞ! 一体どのくらい射程があるんだ!?」
「5メートルよ!」
「あ、そこは言っちゃうんだ……」
「馬鹿なのです」
「所詮アミメキリンなのです」
「5mの間合いか。近いように思えるが、実際はかなり厳しいな」
「ふっ、大人しく投降しなさい!」
「そういうわけにはいかんな!」
ヒグマがスタンプを持って正面から走ってくる。
「甘いわね! また同じことの繰り返しよ!」
「それはどうかな!」
ぶおん!
恐ろしい勢いでマフラーが舞う! しかしヒグマは射程のギリギリ外でピタリと止まった。
マフラーはあわれ、空を横切る! からぶりっ!
「あーっ!」
「間合いが分かってれば、こんな攻撃食らうか!」
マフラーは一度かわされたら、もう一度振り回すまでに隙ができる。その隙を狙って、ヒグマが飛びかかった!
ヒグマのスタンプが上空から襲いかかる!
「最強くまくまスタンプなのです!」
「すごーい!」
「わ、ちょ! やめなさい!」
アミメキリンは思わず後ろを向いてしまう。そこに突っ込むヒグマだが、キリンの後ろ脚でのカウンターが放たれた!
「ああっ! キリンさんの後ろ脚が!」
「あの勢い、やばいのです!」
どがっ!
鈍い衝撃音が響く。
「こ、これは……」
「すごーい!」
キリンの後ろ脚での攻撃を、ヒグマはスタンプの肉球部分で防いでいた。肉球はぷよぷよしている! 流石最強くまくまスタンプだね!
「あうう、な、何故」
「まともに食らえばライオンすら倒すというキリンの脚力、警戒しないわけないだろう。そしてこのスタンプは、囮だッ!」
スタンプから手を放し、アミメキリンを押し倒すヒグマ。そのまま両者倒れ込む! 暴れるアミメキリンだが、ヒグマがガッチリと脚を押さえ込んだ!
「ゼロ距離からではマフラーは使えない。そして厄介な脚は押さえ込んだぞ!」
「あうう、や、やめてぇ!」
アミメキリンが顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。何故なら脚を押さえ込んだこの体勢は……
「わあ、なにこれなにこれー!?」
「な、なんだか見てると恥ずかしいような……」
「アレは『恥ずかし固め』ダネ」
「ラッキーさん!?」
「相手ノ両足ヲ開脚シテ、身動キヲ取レナクスルワザダヨ。アレヲ食ラウト 何故カ恥ズカシクナルンダ」
「そうなんだー!」
アミメキリンは赤面して叫ぶ。
「や、やめてー! もうやめてー! 降参する! 降参するからぁ!」
「え、あ、そうなのか?」
ヒグマは呆然としながらも脚を離した。アミメキリンは急いで離れて、めくれあがった衣類を正す。そして涙目でヒグマを睨みつけて言った。
「貴方は痴漢ね!」
「ええっ!? 違う! 誤解だ! 私はただ勝つ為に最良のことを……」
「このけだものー!」
慌てふためくヒグマに対し、アミメキリンは泣きながら走って逃げていった。
「え、えー……」
呆然としながら立ち尽くすヒグマ。
「えっと、これってヒグマさんの勝ちですか?」
「まぁ、どんな形にせよ相手が降参したので勝ちは勝ちですね」
「釈然としないですが、ともかく一回戦第四試合の勝者はーー」
「「ヒグマです!!」」
ひゅーひゅーどんどんぱちぱちえろーい!
いつもの歓声に加えて何故か黄色い歓声も湧き上がる。
「うぐ、何なんだろう。勝ったのにこの気分は……」
そこにキンシコウが現れ、ヒグマの肩をぽんと叩く。
「キンシコウ……」
「ヒグマさん……野生解放もほどほどにね」
「お前も何か勘違いしてないか!?」
そんな感じで一回戦第四試合はヒグマの勝利で終わった……
「というわけで、一回戦の全ての試合が終了したのです」
「ここまで勝ち上がったのは、カバさん、ライオンさん、シロサイさん、ヒグマさんですね」
「若干予想外もありましたが、おおむね順当な結果なのです」
「勝ち残るべくして勝ち残ったという感じなのです」
「みんなすっごい強いよね!」
「サーバルは全然弱いのです」
「なのです」
「ひどいよー!」
「二回戦も楽しみですね、博士」
「もっとわれわれを楽しませるのです」
「うわぁ、なんか悪役っぽい……」
けものフレンズ12.x話「たいかい」 @ofisa-do
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