ねこたいけつ

 カバすごーい! キミは着地狩りごっこが得意なフレンズなんだね!

 というわけで第一試合のサーバル対カバはさっくりとカバが勝利して終わった。サーバル、やっぱりぜんぜんよわいー!

 そして敗北したサーバルは……


「ここは地下闘技場! わたしが実況のサーバルだよ!」


 ちゃっかり司会のかばんちゃんの横に座り、実況役をやることにした。


「サーバルちゃん!? なんでぇ!」

「夜行性だからね!」

「関係ないよ! でもちょっと嬉しい……かな」


「というか、しんざきおにいさんはどこに行ったんですか?」

「しんざきはもう、いないのです」

「しんざきは、絶滅したのです」

「絶……滅……(スーッとハイライトが消える)」


「というのは嘘で、普通に帰っただけなのです」

「飼育員の台詞考えるより、サーバルの台詞考える方が一億倍楽なので、帰らせたのです」

「メタいよ! でもまぁ、元々一発ネタ感ありましたからね……」

「しんざきおにーさん、ありがとう!」


「というわけで、かばん。とっとと二戦目の対戦相手を決めるのです。このジャパリまんくじで」

「あ、やっぱりそれ使うんですね。がさごそ……ってあれ? ない!」

「え、ないんですか?」

「箱の中、からっぽです!」

「これはどういうことでしょう、博士」

「かしこい我々にも分かりません」

「あのぉ……誰か食べたんじゃ……」

「もぐもぐ……みゃっ!? だ、だ、だれだろ〜?」



「ここは名探偵、アミメキリンの出番のようね!」


「いや、別にいらないのです」

「サーバルちゃんだよね?」

「かばんちゃん、なんでわかったの!?」

「流石かばん、名推理なのです」

「さすかばなのです」


「ジャパリまんで対戦相手を決める方法が出来なくなったので、もう順番通り3番と4番に戦わせるのです」

「るのです」

「えぇ〜……それでいいんならそうしますけどぉ。えっと、エントリーナンバー3番はジャガーさん。エントリーナンバー4番はライオンさんですね」

「ジャガー対ライオンですか」

「ネコ科最強決定戦になりますね。これは荒れる気がするのです。というわけで、二人ともでてくるのです!」


「はいよー」

「ふぁ〜、もう出番?」


「えっと……全く荒れる予感がしない登場の仕方ですね」

「やる気なさそうなのです」

「いいからとっとと始めるのです、駄猫ども」

「みんながんばれー!」


【一回戦第二試合 ジャガーVSライオン】


「博士達はどっちが勝つと思いますか?」

「ライオンなのです」

「と、見せかけてあえてジャガーなのです」

「あ、意見が分かれた。じゃあ博士から理由を教えてください」


「ライオンは百獣の王です。体格もジャガーより上です。強い者が勝つのは必然なのです」

「博士は甘いのです。ジャガーはPFP最強と言われるネコ科。体格の有利不利の意義がフレンズ化することで薄くなった今、勝つのは当然ジャガーです」

「あのぉ、PFPってなんですか?」

「ぺふぁぷ?のことじゃない?」

「違うのです。パウンド・フォー・パウンドのことです。異なる体重の両者が、同じ体重になって戦ったらどうなるかという仮定です」

「どういうことー?」

「つまりどっちが勝つかわかんないってことですね」


 対峙したジャガーとライオンは、普段通りの気楽な感じで話しかける。


「とりあえず、始める?」

「いいよー」

「じゃ、いくよー」


 ジャガーはゆっくりと歩いて3mまで近付いた。全身は両者とも脱力しており、緊張は感じなかった。

 が、次の瞬間、ジャガーの身体が強張り、一瞬で距離を詰めて襲い掛かった!


 ガキィン!


 両者の爪が交差する! 一瞬の攻防! ライオンも見事に反応した!


「は、はやっ!」

「すごーい!」

「これですよ、ネコ科の恐ろしさは」

「草食獣の逃げる為のスピードとはまた違う、狩る為のスピードです。徐々にスピードを上げるのではなく、一瞬でトップスピードを出せるのです」


「あちゃー、いけると思ったんだけどなぁ。流石ライオンだね」

「いや、騙されるところだった。温厚そうに見えて、骨の髄までハンターだ、な!」


 ごうっ! 空気を裂くような轟音! ライオンが左手で抉るようにかきあげてくる。ジャガーはそれを見切り、バックステップでかわして距離を取った。

 両者は再びにらみ合いとなり、互いに機を伺っている。


「パワー勝負を恐れたか、ジャガー」

「さぁ、どうだろうね」


 二人の勝負を見ていたヘラジカが観客席で歓喜の声をあげる。


「おぉー! 二人ともすごいな! 戦いたい、私も戦いたいぞ!」

「戦えるのは二人のうち、勝ち上がった一人だけなのです」

「なのです」

「そうなのか? なら強い方勝てー!」


 ヘラジカの声援にライオンが若干ゃ顔をしかめる。


「節操ないな、あいつは」

「ライオン、余所見は禁物だよっ!」

「わかっているっ!」


 がきん!

 再び攻勢を仕掛けたジャガーのツメを、ライオンが腕で防ぐ。だがジャガーはもう片方の手で更に追撃をかける。それに反応し、そちらも腕で防ぐライオン。


 がきん!

 両者取っ組み合いの姿勢になる。最初はジャガーが押してたが、ライオンがどっしりと脚を踏ん張って力を入れると、どんどん押し返されていった。


「すごいパワーだね。流石は百獣の王」

「どうしたジャガー。今日はやけに攻めるじゃないか」

「少し野生がさわいでね……はぁっ!」


 先ほどまで劣勢であったジャガーの目が光り、一気に体勢を覆す。


「ぐっ! ならこっちも!」


 ライオンの目も光り、腕に力が入る。


「野生開放です。両者ともガチで行く気です」

「やりますねぇ!」


 力を入れて押し返そうとしたライオンだが、ジャガーはサッと手を離す。力の行き場を失ったライオンが前傾になると、その顔にジャガーの尻尾がベチンと当たった!


「あうっ」


 目を閉じたライオンの頭に追い打ちをかけるようにジャガーが肘鉄を落とす!


 ごすっ!

 鈍い音を立てて後頭部にクリーンヒット!


「うわー、あれ痛そう!」

「すごい音したね……」


 ライオンはそのまま倒れるかと思ったが、でんぐり返りをしてジャガーから距離を取った。


「いっつつ〜効いたぁ〜!」

「へぇ、流石ライオンだね。まともに入ったのに効いてないなんてね」

「効いたって言ってるじゃん! う"ぅ"〜あだまがガンガンするよぉ"〜」


 後頭部を抑えながら唸っているライオン。しかしダウンしたわけではない。


「おそらく、あのふさふさのたてがみがダメージを吸収したのです」

「ふさふさ、もふもふなのです」

「それにしてもジャガー、すっごいね! あんなにすごいなんて思わなかったー!」

「ホント、すごいですよね。ライオンさん相手に……」


 そこに観客席から応援の声がかかる。


「ライオン様! 頑張ってください!」

「予選で散った我々の分も!」

「百獣の王のチカラ、見せてください!」


 アラビアオリックス、オーロックス、ツキノワグマの声援だ。ライオンは苦笑して、ジャガーに向き直る。


「やれやれ、プライドを保つってのも大変なもんだねー。ま、やるしかないか」


 ライオンの目から野生解放の光彩が放たれる。


「さて、覚悟はいいか。ジャガー」

「あぁ、全力でないと意味がないからな」

「意味? 何の意味が?」


 ライオンの問いに対して、ジャガーはちらりとかばんとサーバルを見る。


「黒セルリアン……正直恐ろしい敵だったよね」

「あぁ、そういうことか」

「強くなりたいよね、お互いにさ」

「わかる」


 ジャガーは一息吸うと、野生解放の光を目に宿した。お互いに野生解放の光を宿したまま、数秒の睨み合い。会場も波が凪いだかのように静まり返り、緊張感が場を張り詰めさせていた。


「いくよ」

「おう」


 じりりとジャガーがにじり寄り、次の瞬間には地面を蹴っていた。ライオンもそれに対応して地面を蹴る。


 ガッ!

 お互いが高速で近づいて、先に当たったのはジャガーのツメだった。ライオンのたてがみをえぐり取り、ツメが首へと迫る。


 がりっ!

 首にジャガーのツメがヒットするが、ライオンは倒れない! ライオンはがしっとジャガーの肩を掴み、右手で腹部に強烈なパンチをかました!


 どんっ!

 鈍い音を立ててジャガーの腹に命中する拳。


「ぐっ……」

「強かったよ、ジャガー」


 ライオンは腹に一撃を受けて体勢を崩したジャガーの腰を持ち上げ、飛び上がる。そして逆さにしたジャガーを地面に勢いよく叩きつけた。


「垂直落下式ライオンバスター!!」

「なんでプロレス技!?」


 ごーん!

 地面にジャガーの脳天が直撃! そしてばたりと倒れこむジャガー。


「こ、これは……カウントを取るのです! サーバル!」

「えーっと……いち、に……たくさん!」

「終了です!」

「この試合の勝者は……」


「「ライオンです!」」


 ゆるりと立ち上がるライオンは、人差し指で天を指し、ビクトリーポーズを取った。


「ナンバーワン!」

「うおおおおー! ライオン様ーー!」

「すごーい! プロレスごっこだね!」


 わっと湧き上がる歓声。一回戦二試合目の勝者はライオンに決まった。


「えーと、今回の勝負は何が決め手となりましたか? 最後プロレス技みたいなのが出ましたが……」

「強かったのです、ライオンもジャガーも」

「甲乙つけがたいのです。強いて違いをあげるなら、もふもふ力ぅ……ですかねぇ」

「しんざきおにいさんが移ってますよ!」

「あのたてがみのもふもふが致命傷を防ぐのです」

「スピードではジャガーの方が上。後手に回りがちのライオンは、あえて一撃受けてから反撃したのです」

「なるほど……」

「でも痛そうだよね!」


 ビクトリーポーズを取ってたライオンは悠々と会場を去っていく。余裕の表情である。

 しかし、会場を出て控え室に入った瞬間、くたりとへたりこんだ。


「いたーい!めちゃくちゃいたいよー!」


 一方、会場にいたヘラジカはさっきの試合に触発されたのか、勝手に試合場に降りてきていた!


「うおおー!私も我慢できん!やるぞ!」

「あ、勝手に入っては駄目ですよ!」

「我慢するのです……と言いたいところですが、丁度いいです」

「お前には次の試合相手が決まっているのです。来るですよ」


 助手が手招きすると、次の試合相手がはいっってきた。


「お前が相手か、面白い!」

「ヘラジカ様……」


「一回戦第三試合、ヘラジカ対シロサイ。とっとと始めるのです」

「なのです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る