プロをナメるな!

高峰は絶好調だった。


一回の裏を三者凡退に抑えた。


二回の表の攻撃は4番高梨から始まる。


右打席に高梨が入る。


北岡は初球ストレートをインハイに投げる。


(ウチの4番に比べると全然迫力がねぇな。コイツよりその前後を打つバッターの方が迫力あるゎ)


北岡は高梨が4番バッターにしては迫力に欠けると感じた。


確かに高梨は長打力を兼ね備えたバッターだが、4番打者の風格というものは感じない。

北岡は高梨をナメていた。


その前後を打つ、トーマスJr.や垣原の方が迫力がある。


183㌢83㌔と野球選手の中では目立つような存在ではない。


入団してからエンペラーズの4番打者をまかされてきた。


そしてキャプテンとしてチームを引っ張るリーダーシップも持ち合わせている。


迫力という面では八幡や守山に比べるとおとなしく見えるが、それだけが4番打者ではない。


今年はスランプにあえぎ、満足した成績は残せなかったが、デビュー以来30本塁打を打ち続けてきたスラッガーでもある。


今期の成績は 打率287 ホームラン30 打点91


トーマスJr.や櫻井に比べるとやや劣るが、それでもスランプを抜け出しこの成績を上げるのだから、立派である。


北岡は高梨を舐めていた。


二球目、甘く入ったスライダーを高梨は見逃さなかった。


素早く振り抜き、打球はバックスクリーンへ一直線に突き刺さった。


先制のソロアーチでエンペラーズが先取点をとった。


八幡がタイムをかけ、マウンドに駆け寄った。内野陣も集まる。


「どこ投げとんだ!4番にあんな気の抜いた球放ったら打たれるに決まっとるやろ、ドアホがっ!」


八幡が一喝した。


守山も陳も八幡に同意だ。


「テメー、この試合はぜってー敗けられねぇんだよ、解ってんのか、コラッ!!」


守山も北岡を叱り飛ばした。


「はぃ、わかりましたぁ」


ふてくされたように北岡が返事をすると、陳が胸ぐらを掴んだ!


「新人!オマエオレたちをナメてんのか!プロをナメてるなら今すぐマウンドを降りろ!! 對不能棒球的身體做!(2度と野球出来ない身体にしてやる!)」


陳の凄まじい迫力に北岡はビビった。


(やべー、マジ殺される!)


「す、すいませんでしたっ!次は必ず抑えますっ!」


北岡が必死に謝る。


「青幇、そのぐらいにしてやれ。次やったらオレが殺す!」


守山にも睨まれ、北岡は震え上がった。


(相手より味方の方が怖ぇよ!)


下手な球は投げられない。

北岡の顔つきも変わった。


そして5番垣原、6番松浦を連続三振に獲り、7番中田をショートゴロで抑え、二回の表が終了した。


1対0、二回の裏は4番八幡から始まる。


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