ビビるなっ!

球場内はヤンキースのイメージカラー、血の色である赤一色に染まり、エンペラーズは完全アウェイの状態で試合が始まった。


トップバッター大和が右打席に入る。


心なしか緊張の色が隠せない。


北岡が第一球を投げた。


インサイドに外れるストレート、ボール。


マウンドの北岡も緊張しているみたいだ。


今年11勝を上げ、防御率は2.89 ヤンキースの先発ローテーションとして1年を通してきた。


とはいえ、優勝決定戦のこの独特の雰囲気に若干萎縮しているみたいだ。



第二球を投げた。


外角やや低めに外れるストレート、ボール。


ボールが先行し、ツーボールとなる。


そして八幡のサインに頷き三球目を投げた。


縦のスライダーで大和が空振りしてワンストライク。


ストライクが入り、やや緊張がほぐれた北岡。


四球目を投げた。


インサイドに食い込むカットボール、大和これをスイングするもバットの根元に当たり、どん詰まりのピッチャーゴロ。


一塁に送球し、まずはワンナウト。


アウトカウントが1つ取れて北岡は平常心を戻しつつある。


そして2番は天才櫻井が左打席に入る。


左対左とはいえ、櫻井は球界ナンバーワンの左バッターだ。


甘い球が来たらあっという間にスタンドインしてしまう。


北岡は初球外角に外れるスライダーを投げた。


櫻井は微動だにしない。


まずはワンボール。


北岡がテンポよく二球を投げた。


インコースにツーシームが決まる。


ワンボール、ワンストライク。


続く三球目はインハイを突く。


櫻井が難なくよけてボール。


そして四球目はアウトコースからボールになるスライダーを投げた。櫻井はバットを止めた。


三塁塁審はセーフとジャッジ。


スリーボール、ワンストライクとなった。


北岡が五球目を投げた。


高め僅かに外れてフォアボール。


櫻井が塁に出た。


マウンドに守山と陳が向かう。


「何ビビってんだ、テメー!

ドンドンストライクを投げろ!やれるのか、おいっ!」


守山が喝を入れた。


「朋友の言うとおりだ。バックを信じてドンドン投げるんだ」


陳もアドバイスする。


そして3番トーマスJr.を迎えた。


この試合がエンペラーズとして最後になるのか、それとも優勝してメジャーのリーグチャンピオンとまだ戦えるのか。


威圧感を醸し出しながらトーマスJr.は右打席に入る。


その目は北岡を捕らえて離さない。


北岡が雰囲気に飲み込まれそうだ。


初球低めに外れるストレート、ボール。


八幡が大きく構える。


ドンドン投げてこい!遠慮するな、というポーズだ。


北岡は二球目を投げた。


内側に入るスライダーでストライクをとる。


三球目は縦のスライダーでトーマスJr.が空振り。


ワンボール、ツーストライクからの四球目、インハイにストレートを投げた。


トーマスJr.が思わずバットを出しサードゴロになり、5-4-3のダブルプレーでチェンジ。


一回の表が終了した。


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