真のホームランアーティスト

ゴールデンズの本拠地である東京ボールパークは、日本で唯一のゴールデンズの完全自前の球場であり、屋根が開閉式になっており、天候の悪い日やデーゲーム等に合わせて屋根を開閉している。

そしてドーム球場では初の天然芝を使用。


左翼(約100.6m)

左中間(約110.0m)

中堅(約132.3m)

右中間(約110.0m)

右翼(約105.2m)


フェンス

左中間(約10.1m)

その他(約2.4m)


外野スタンドでは、プールが設けられ、夏は泳ぎながら観戦できるというテーマパークのような施設だ。


そしてメジャーの球場によくある左右非対称で少しいびつな形をした球場で、ライトスタンドがやや広く、右打者に有利な作りとなっている。


浅野は右打者だが、この球場の恩恵を受けてホームランを量産しているわけではない。


東京ボールパークは日本で一番大きい球場であるため、バッターよりも、ピッチャー有利な球場と言える。


普通の球場ならホームランという当たりも平凡な外野フライになってしまう程広いのだ。



しかし、浅野はそれをものともせずに、楽々とスタンドに運ぶ。


レフト方向だけではなく、ライト方向にも、バックスクリーンにも放り込むパワーがある。


パンチ力があり、尚且つ左右に打ち分ける技術も備えている、真のスラッガーだ。


櫻井もホームランは量産できるパワーがあるが、ホームランバッター向きではない。


どちらかと言えば中距離ヒッターに近い。


最小限の力でバットにボールを乗せスタンドに運ぶのが櫻井で、最短距離でボールを捕らえ、素早いスイングで振り抜き打球を遠くへ飛ばすのが浅野の打撃だ。


浅野の打撃練習が終わり、ゲージを出たところで櫻井が浅野の下へ向かう。


「浅野さん、今日はよろしくお願いします」

櫻井が頭を下げた。


「おぅ、ヨロシク!そういやお前、最近2番を打ってるけど調子狂わないのか?」


櫻井は開幕してしばらくは1番を任され、大和が加入してから3番を打ち、スミスがコーチとして就任してからは2番バッターとして固定された。


「まぁ、チーム事情という感じですかね。自分は何番を打とうが全然気にならないです」


スミスは2番バッター最強説を持論とする。


セイバーメトリクスに基づいたデータを算出し、総合的に櫻井が理想の2番バッターという事らしい。


チャンスの場面で櫻井が打席に立つ確率が高いのも事実だ。


「メジャー流だか何だかわからんけど、お前程のバッターを2番に置くなんて考えらんねぇな。オレなら4番にお前を置くよ」


浅野は近い将来、自分を越えるバッターは櫻井しかいないと認めているからだ。


「いや、自分は4番は無理です。それに4番は高梨さんがいますから」


櫻井は自分は4番バッター向きではない事は解っているし、例え4番に指名されても断るつもりでいる。


雑誌のインタビューでも、自分は4番向きではない。ホームラン自体にこだわるつもりもない、こだわるなら打点にこだわりたい、と答えている。


「お前と高梨なら、能力はお前の方が上だと思うだがなぁ」


浅野は大学時代に高梨と何度か対戦した事もあり、同じサードというポジションからライバル関係と言われていた。


だが浅野はそれが気に入らなかった。

学年では1年下の高梨と自分が同じレベルと見られていたのが気に食わなかった。


アイツはただブンブン振り回すだけの一発屋だが、おれは打率も残せるロングヒッターだ!と。


言葉には表してなかったが、高梨と比べられるのが嫌だったのだ。


そんな事を思い出していると背後からガツン!と何かが当たり倒れてしまった。


いでっ!!


「お~っす!浅野ちゃん元気にしてたかなぁ?」


挨拶代わりに榊がジャンピングニーパッドをしたのだ…


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