天才を越えた天才
あの乱闘から1ヶ月が経過した。
榊とトーマスJr.は出場停止処分が溶け一軍に合流した。
今日から王者、東京ゴールデンズとの戦いが始まる。
櫻井はベンチである男のバッティングを見ていた。
その男の名は、浅野 聖(あさの こうき)
昨年のMVPに輝いたスラッガー。
今年で9年目を迎える30才。
右投げ右打ちのサードを守るゴールデンズの中心選手だ。
昨年の成績は、打率 378と右打者としては歴代最高アベレージを誇る。
ホームラン51 打点143共にリーグ2位という、三冠王に一番近い成績を記録する。
そして櫻井とは高校の先輩後輩という間柄でもある。
櫻井は浅野のいるゴールデンズに入団を希望していたが、ドラフトでの抽選でエンペラーズが獲得した。
もし櫻井がゴールデンズに入ったらとてつもない3,4番コンビとなっていただろう。
櫻井は天才と称されているが、浅野は天才を越えた天才と呼ばれ、誰もが球界ナンバーワンスラッガーと認める存在だ。
榊は浅野がいなければ間違いなく昨年のMVPに選ばれていたはずだ。
そしてもう一人の注目選手はレフトを守るウィリー・マードック外野手。
昨年3割 30本 100打点を記録した助っ人外国人選手である。
浅野とのクリーンナップで驚異の破壊力を誇る。
投手陣では、榊が抜けた後を右の本格派、池田 佳樹(いけだ よしき)がエースとなり、榊に劣らぬ活躍を見せている。
そして中継ぎでは昨年のホールド数最多を誇る左腕の前田 尊裕(まえだ たかひろ)
抑えには、150㎞を越えるストレートと落差の大きいフォークボールを武器に奪三振率が高い、藤野 功(ふじの いさお)と、完成度の高い選手が多い。
王者相手にエンペラーズはどう挑むか。
櫻井は浅野を越える選手として目標にしていた。
自分は天才なんかじゃない、本当の天才は浅野さんだと言う程に、浅野に憧れを抱いている。
広角に打ち分けるバッティングに強靭なリスト。
構えに一切のムダを省いた素晴らしいフォームは櫻井の求める理想でもある。
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