トーマスのマブダチ
両軍入り乱れ、乱闘による負傷した選手も数名いた。
主審は没収試合を宣言し、先に仕掛けたデンジャーズが0対9で敗戦となった。
しかし乱闘は収まらず、機動隊まで出動し、ようやく乱闘は収まった。
コミッショナーは、史上稀に見る最悪な乱闘だと非難し、デンジャーズ及びエンペラーズの両チームに罰金と出場停止処分を言い渡した。
収まりがつかないのは元春で、コミッショナーに
「あの監督は身分を偽っている!アイツはナダウ・ヤマオカなんかじゃねぇ!俺のオヤジ、宇棚 珍太朗だっ!」
と暴露し、ヤマオカの身辺を調べるよう要請した。
コミッショナーはその事を重大に受け止め、査問委員会を開き、ヤマオカを呼んだ。
ヤマオカは自分のパスポートを見せ、【ナダウ・ヤマオカ 国籍 米国】と記されているのを立証させた。
委員会はナダウ・ヤマオカ本人であると断言し、この試合で危険球を投げるよう指示した元春に、改めて今シーズンの出場停止処分に科した。
そしてデンジャーズは観客全員のチケット払い戻しを命じられた。
エンペラーズには、制裁金とトーマスJr.、榊に1ヶ月の出場停止処分を言い渡した。
元春は処分に納得出来ず、コミッショナー相手に裁判も辞さない構えだったが、ヤマオカが例によってタイマン勝負を仕掛け、例によって例により、必殺のバックドロップを炸裂させ、タイマン勝負を制した。
元春はこの日を境に球界から去った。
デッドボールを受けた垣原は脳震盪により、病院に搬送されたが、しばらくして意識が回復し、後遺症の心配もなく病院を出た。
垣原はトーマスJr.が日本の環境に慣れないのを見かねて食事に誘ったりしてコミュニケーションをとっていた。
ベンチではあまり会話を交わさない二人だが、試合後や休日は垣原が、寿司や天ぷら、すき焼き等に誘ってくれた。
トーマスJr.も和食が気に入り、試合後に垣原と行く食事が楽しみの一つとなっていた。
そんな垣原がデッドボールで倒れたのだ。
トーマスJr.は許せなかった。明らかに故意で投げた一球だった。
そして垣原はトーマスJr.にこんな事も話していた。
「なぁトーマス。日本にいるのは1年だけだろ?だったら優勝してメジャー相手に真の世界一を戦ってみるのも面白くないか?」
成る程、そういう考え方もあったか…
トーマスJr.の頭の中にはなかった考えだ。
メジャーだったオレがメジャー相手に戦う。
それも面白いかもしれない。
そしてトーマスJr.は垣原と絶対に優勝しよう!と誓いあった。
垣原は尊敬できるプレイヤーだ。
だからあれは垣原に対する屈辱行為だ!と我を忘れる程、暴れまくった。
日米のスラッガーが生んだ友情だった。
そして榊と共に出場停止処分が明け一軍に復帰した。
相手は王者、東京ゴールデンズだ。
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