静かな序盤

本拠地静岡エンペラーフィールドのマウンドに榊が登場した。


ハードパンチャーズの大和がエンペラーズに移籍して初の試合でもある。


開幕から1番を打っていた櫻井は3番に戻った。


1番 大和から始まり、3番 櫻井 4番 トーマス 5番高梨 そして3番を打っていた垣原が6番を打つ。


この強力打線で昨年2位の京都ボンバーズを迎え撃つ。


榊は前回の開幕戦でハードパンチャーズのイカサマ野球で、滅多打ちにあって以来の登板だ。


そして主審の手が上がりプレーボール。


ボンバーズの1番はセカンドの内田。


榊がサインを出す。


どうやらキャッチャーの室田はサインを出してもらえないらしい。


このバッテリーで大丈夫なのだろうか。


第一球はインコースやや低めに決まるストレート。

「ストライク!」


調子は良さそうだ。


そして第2球は、アウトコースわずかに外れるツーシーム。


「ボール!」


続いて3球目は先程よりアウトコースギリギリに決まるスライダー。


「ストライク!」


カウントはワンボール ツーストライク。


ここで1度、ボール球を投げて様子を見るのだが、榊はインコースやや低めからボールになるチェンジアップを投じた。


バッターの手元でストーンと沈む榊の決め球サークルチェンジだ。


人差し指と親指で輪(サークル)を作り中指から小指でボールを保持する握りで投げるチェンジアップで軌道は打者の手元で沈み、時には利き腕側に曲がりながら沈む。


まずは三振でワンナウト。


続いて2番の吉竹が打席に入る。



相変わらず室田はサインを出させてもらえない。


榊の出すサインにミットを構えているだけの存在になってしまっている。


(サイン出せないキャッチャーって何の意味があるんだろうか…)


室田はそんなことを感じながらボールを受ける。


初回は三者凡退で上々の滑り出しだ。



そしてエンペラーズの先頭は大和だ。


「No.1 SS TOSHITSUGU YAMATO!(1番ショート大和 背番号1)」


大歓声に送られ大和が左打席に入る。


ボンバーズ先発は、アンダースローの灘。


大和は心なしかやや緊張気味だ。


球界屈指の一番打者を獲得出来たエンペラーズ。


打ってよし、守ってよし、走ってよしの3拍子揃ったスーパープレイヤー。


しかし、初打席はセカンドゴロでワンナウト。


そして2番打者はセカンドの中田。


ボンバーズのピッチャー灘はアンダースロー独特の浮き上がるようなストレートに苦戦する。


現在球界にはアンダースローのピッチャーがほとんどいない状態だ。


灘は球速は決して速くはないが、このホップするような軌道のストレートとシンカーという内側に曲がり落ちる変化球を駆使してゴロの山を築く。


結局エンペラーズも三者凡退で攻撃を終えた。



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