球界の暴れん坊

榊は普段から短気である。


気に入らない相手がいれば、とことん叩きのめす。


ゴールデンズ時代に榊をカモにしていた外国人選手に対して、ある試合で顔面スレスレのビーンボールを投げ、危険球により退場となった。


外国人は何であんな球を投げるんだ?

とばかりに詰め寄った途端、グラブを投げつけ、外国人選手を倒し、マウントの体勢からパウンド(マウントパンチ)で滅多打ちにし、自身の拳を骨折した程の狂乱ぶりである。


【狂乱の貴公子】または【最凶サウスポー】なるニックネームまでついてしまう程の荒くれものだ。


榊を押さえつける者は球界でも3人しかいない。


1人目はゴールデンズ時代のピッチングコーチをしていた佐久間。


2人目は同じくゴールデンズ時代からのチームメイトで、現在エンペラーズの一塁手を守る垣原。


そして3人目はナダウ・ヤマオカこと、宇棚 珍太朗だけだ。


3人共、榊とタイマンで勝負して勝った強者だ。


FAでエンペラーズに入団した理由も、ヤマオカ監督とのタイマン勝負で負けた為という、今時のヤンキーでも思い付かないようなアホな理由である。


榊は当初、FA宣言してメジャーリーグに行く予定だった。


球界の盟主と言われたゴールデンズのエースとして優勝も経験した。


もはや日本の球界でやり残した事はない、そう思いメジャー挑戦を視野に入れた。


実際、日本の球団からのオファーはなかった。


手に負えない問題児を獲得するワケがない。

もし、入団したらチームの和が乱れてしまうのを恐れたからだ。


しかしエンペラーズだけは獲得に名乗りを上げた。


オーナーである阿佐は大型補強として榊の獲得に乗り出した事だけではなく、ヤマオカ監督も榊は優勝するには絶対必要な戦力と判断したからであった。


コーチ陣は当初大反対したが、ヤマオカの強い意思により獲得を表明した。


榊はエンペラーズなど眼中になかったのだが、ヤマオカの提案した【タイマンで負けたらエンペラーズに入団。勝ったらメジャーでもどこでも行きやがれ!】

という挑発を受け、深夜誰もいない静岡エンペラーフィールドのグランドでタイマン勝負を行った。


一進一退の攻防が続いたが、体力に勝る榊がヤマオカを圧倒。


だが、フィニッシュのラリアットをかわされ素早くバックを獲ったヤマオカは、必殺の元祖ヘソで投げるバックドロップを榊をKOし、負けた榊がエンペラーズに入団したという、至極単純な理由で入団したのだ。


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