珍太朗の思惑

ナダウ・ヤマオカこと宇棚 珍太朗はスーパーフライヤーズの監督として采配をふるっていた。


しかしかつての栄光はなく、弱小球団として最下位に甘んじていた。

スタープレイヤーだった宇棚ひろしはかつての力はなく、野球のルールさえおぼつかないクソヤローに落ちぶれた。


珍太朗は何とかひろしに奮起してもらうべく、ありとあらゆる手を尽くしたが、万策尽き、ひろしをコテンパンに叩きのめし監督を辞任して球団から消えた。


珍太朗はその後荒んだ生活を送っていたが、謎のルートから仕入れた海外の修正の無いDVDを観て一念発起。


渡米してブロンドとの甘い一夜を過ごそうと躍起になっていたが、叶わず。

たまたまその地でマイナーリーグの試合を観ているうちに野球に対する情熱がわき起こり、ルーキーリーグのコーチとして再出発した。


珍太朗のコーチとしての手腕はかなりのもので、今ではメジャーで活躍する選手の多数は珍太郎からの教えによるものだった。


珍太朗の名は知れ渡り、2A 3Aと昇格し、ついにはメジャーの球団からオファーがかかった。


そしてヘッドコーチとして手腕を発揮していた頃、エンペラーズからのオファーを受け、監督として現在に至ったわけである。


ブロンドの美女との甘い一夜は過ごせなかったが、日本に戻り、才能あるエンペラーズナインを率いて采配をふるえるのは監督冥利に尽きると思った。


特に櫻井を見た時、右バッターと左バッターの違いはあれど(ひろしソックリだ!)と宇棚ひろしの再来とさえ感じた。


そしてアメリカ時代から通していたナダウ・ヤマオカという名前でメジャースタイルの戦法で日本に逆上陸した。


トーマスも来日を決めた理由の1つに、ヤマオカの下でプレイをしてみたいという思いがあったからだ。


オーナーはアホだが、選手の能力は十分リーグを制覇できる力がある。


更に今年からハードパンチャーズのGMとして、ひろしが就任した。


アホオーナーはハードパンチャーズをライバル球団として闘志を燃やしているが、善治も同じ思いで、ひろしとの完全決着をつけたかったのだ。


変装を解いた珍太朗は、一人でパンチャードームへ向かった。


今日から北陸ファイアーズとの三連戦がスタートする。


エンペラーズは本拠地エンペラーフィールドで東北を本拠地とする球団、東北ブレイカーズを迎え撃つ。珍太朗不在のエンペラーズだが、今の戦力なら勝ち越せるはずと計算しているからだ。


それよりも今はこのパンチャードームに隠された秘密を暴くのが優先だ。


珍太朗がスマホを手に取った。


「 Keep an eye on the movements of the guy(ヤツから目を話すな)」


珍太朗はそう告げた。



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