飛ぶボール、飛ばないボール

珍太朗はパンチャードームで観戦していた。


1人気になる存在を見つけた。



それはハードパンチャーズのマスコットキャラクター、パンチ君である。


時には激しく踊り、時にはユーモラスな動きで観客を湧かせる。


そのパンチ君の動きに注目していた。


そして先程英語で話をしていた人物が、外野席で施設応援団の近くで観戦していた。


更には一塁側、三塁側の席にも外国人が数名陣取っていた。


この人物達は珍太朗がアメリカに渡った頃に知り合ったエージェント達である。


そして、珍太朗はバックネット裏で観戦していた。


初戦は特に動きはなく、ハードパンチャーズが3対2の逆転勝ちで勝利を納めた。


そしてこの夜、1人のエージェントがある人物を尾行していた。



第2戦は激しい乱打戦になり、10対12でファッカーズが勝利した。


そしてこの試合、珍太朗は内野席で観戦していたエージェント達にある指令を出していた。

「Secure the ball that jumped into the foul stand (ファウルボールを確保しろ)」


ファウルでスタンドに入ったボールはファンサービスとしてプレゼントされる。

珍太朗はそのボールを持ち帰りたいため、エージェントに指令を出した。


ファウルボールをキャッチしたファンは喜んだが、エージェントが代わりにメジャーの選手のサインが入ったボールと交換しようと言って、ファンからボールを貰った。


この試合では、ファウルでスタンドに入ったボールは10個を越えていた。


それを全て回収したのである。


しかも、ハードパンチャーズが攻撃の回の時に使用したボールと、ハードパンチャーズが守備についた時に使用したボールを振り分けていたのだ。


(やっぱり)


珍太朗の読みは当たった。


ファイアーズが攻撃の際に使用したボールは、飛ばないボールで、反対にハードパンチャーズが攻撃の際、使用したボールは飛ぶボールだったのである。


飛ばないボールは飛ぶボールより、僅かだが重さが違う。


しかしほんの数㌘の違いで、オーバーフェンスする打球とフェンス手前で失速して外野フライになる程の違いになるのだ。


エンペラーズの時も、飛ぶボール、飛ばないボールを交えながらプレイしたのである。


1つのカラクリが解った。


後はサインが盗まれているのかどうか?


これを完ぺきに暴けばハードパンチャーズは何らかのペナルティを受けるだろう。


肝心な問題であるサイン盗みが実際に行っているのか、それが明らかになればハードパンチャーズなど、エンペラーズの敵ではない。


ビジターでの勝率、それがハードパンチャーズの本来の力である。


多分このドームも気圧の関係で打球が飛びやすくしたり、反対に飛ばないように上手く調整しているはずだ。



明日の第3戦で必ず暴いてやる!


珍太朗は明日で全てにケリをつける覚悟だ。



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