エース オヅラさん

キャンプも終盤を迎えた。


エンペラーズは紅白戦を行い徐々に実戦の感覚を身に付けていく。


そして今年はエースの小倉 慶次(おぐら けいじ)が肘の手術より昨シーズンを棒に振ったが、開幕復活に懸け、打者を圧倒する。


今年が入団9年目の小倉は30才。


大学時代はDr.K(ドクターK。奪三振王の称号)の異名をとり、4球団がドラフト一位で指名。抽選によりエンペラーズへ入団。


1年目からエースナンバー18を背負い、12勝7敗 防御率 3.13 奪三振は193という成績で新人王を獲得。


以後エンペラーズのエースとして君臨する。


しかし、去年は開幕して間もなく一塁ベースカバーの際、走者と激突。倒れた際に肘の靭帯を断裂。渡米しトミージョン手術を受け、リハビリも順調だった。


今年はFAで、榊が入団した為に開幕投手の座を争う。


榊の加入で左右のエースという看板を掲げ、最強のチームを目指す……と簡単に物事は上手くいくとは限らない。


小倉の持ち味は、140前後の直球だが、90㎞前後のスローカーブを駆使するために打者の目には150㎞ぐらいの体感速度に感じる。


緩急をつけたピッチングと、腕の振りがどの球種でも全く同じであるので見分けがつかない。


そして落差のあるフォークボール。


この球種だけで相手を牛耳るのが、小倉の投球スタイルである。


ただ、難を言えば、この小倉は年齢の割には頭が若干薄く、チームメイトからは「オヅラさん」と呼ばれ弄られており、エースという風格には程遠い風貌である。


オーナーからの寵愛を受け「ムヒョヒョヒョヒョヒョ」と笑うオーナーにあやかり「ムシュシュシュシュ」と笑いをパクるが、誰1人相手にしないのである。


キャンプ二日目にトーマスJr.と仲良くなりたいが為に「ムシュシュシュシュ」と笑ってみたが、「 Noisy! This baldness(ウルセー、このハゲ!)」と言わんばかりに背後に回られ、投げっぱなしジャーマンを食らい失神。


以来、トーマスには近づいていない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る