列車『マッスルシュート号』3
呪文を紡ぐ。
「আমি সব জল চাই।আমি মনে করি এটি কঠিন, তবে দয়া করে এগিয়ে যান এবং দশটি গণনা করুন।আমি অসুস্থ হওয়ায় ন্যূনতম যাদুবিদ্যার জন্য জিজ্ঞাসা করতে চাই।অভিযোগ করবেন না কারণ এটি লোকদের সহায়তা করতে পারে।」
長い長い呪文、一音一音奏でる度に魔力が吸い取られていく。
ここにきて最大規模の魔法、準備不足、体調も悪い。だけど紡ぐ魔法は、失敗しようのない簡単なものよ。
『サモン・ウォーター』
最も基本となる、ただその場に水を呼び出すだけの魔法、簡単で単純、呪文も複雑な法則性はない。ただ唱えるだけ。だからこそ魔力を注いだ分だけ大量の水を呼び出せる。
考える限りこれが最善だ。
霧、ではすぐに突き抜けられて意味がない。
攻撃魔法、ではそれで事故になり危なくなる。
だからこその水、ただの水なのだ。
冷静な考え、たっぷりの自信、だけどそれもできなくなってきた。
魔力は生命力、生きる力が魔法となる。だから魔力の消費は肉体の分も消費して、急激な疲労を引き起こす。
例えるなら全力で走った後の倦怠感、だけど体温はぐんぐんと下がっていく。
ただでさえ乗り物酔いに強い風、低温に落ちた体から姿勢と意識が滑り落ちていく。
それを支えるかのように、背中に暖かで柔らかな二つ、振り返るまでもない、エレナの胸、腹立たしいほどの弾力に体が支えられた。
助けられた、感謝よりも屈辱、だけど悪気はないのよと寛大な心で許しを見出したところで最後の呪文を口ずさむ。
「এটা তোলে জল」
呪文の完成、杖の宝石が青く光り、列車の向かう先、橋の手前にも同じく青い光が浮かび上がった。
その光が複雑な幾何学模様を描き、崩れ、消えると同時に、大量の水が、壁のごとく現れた。
形は球体、無職止めいな巨大な壁、それはガラスよりも熱で歪んだ空気のようで、だけど日の光に反射する煌きは、紛れもない水の輝きだった。
放ったあたしさえうっとりしてしまう絶景、だけどその輪郭はすぐに崩れて流れて、だけど絶景のまま、その中へ列車が突入した。
衝撃、振動、同時に水音が耳に響く。
ギギギギギギギギギギギギギギギギ!!!
遅れて全てをかき消す金属摩擦騒音が耳を裂く。
同時に更なる衝撃、背中の胸がより押し付けられてあたしのない胸を圧迫して、呪文を吐き終わった肺から空気を更に絞り出す。
風景が揺れる。
緩む。
これは、減速している。
そして遅れて水しぶき、夏の暑さを洗い流す冷たい清流、肌に刺さる冷たさ、屋根の上を勢いよく流れてあたしを押しのけ車内へと流れ入る。お陰で下着までぐっちゃりだけど、暑さに暑さに気持ち悪さに、この湿り気は心地いい。
そんな水が流れ切った最後にガクリとして、完全に揺れが収まって、列車が止まった。
やってやったわ。どうよ?
成功、列車は橋よりだいぶ手前で停車、狙い通り、あたしはやったのよ。
こみ上がる笑い、可愛くない笑顔を誰にも見られる前に噛み殺す。
ドッッカァアアアアアアアアアァァァァン!!!
耳を叩く爆音、肌を焦がす爆風、一撃であたしの笑みは吹き飛ばされた。
慌てて顔を上げれば橋の方、黒煙、パラパラと落ちる破片に、どちゃりと落ちたのは鉄の何か、残されたのは何もない。
橋は、爆発で粉々だった。
それだけの大爆発、この規模は、間違いなく魔法、それもかなり高度で、強力なやつね。
まさか強盗にここまでできる技術があるとは、正直想定以上だった。
だけど、それを、あたしが、阻止した。あたしが可愛いだけじゃなく聡明で、夕刊で、優秀で、この場の英雄だと証明されたのだ。
今度こそこみ上がる可愛くない笑顔、浮かべてしまうわ。
「あ!」
またもエレナの声、またも笑顔がひっこんで、またも振り返る。
邪魔な胸を押しのけて見た列車の天井には降り注ぐ破片に、転げ落ちそうな強盗たち、だけどマミーの姿はどこにもなかった。
……落ちた?
急停車か爆風か、どちらにしろいないなら落車と考えるのが普通だわ。それがどのタイミングかにもよるけど、減速前なら、無事じゃすまないわ。
最悪な考え、ここで何かあればそれでもお終いになっちゃう。
魔力の消費とまだ残ってた乗り物酔い、そして想像してしまった最悪に、頭から血の気が引いて貧血になっている。
「あ! あっあ!」
またまたエレナ、胸をしつこく押し付けて身を乗り出し、指を指す。
その先は森の中、うっそうと茂る木々の、比較的こちら側の一本、目を凝らしてようやく見つかる煌き、マミー、枝にぶら下がっていた。
あの手から垂らしてた包帯の先を飛ばして巻き付け、振り子のように、一人だけ、先に、列車から脱出していた。
「…………へぇ」
可愛くない声が出てしまう。
マミー、流石は伝説ね。身の危険を感じで一目散に、一人で、さっさと、逃げ出してた。
これなら、わざわざあたしらが頑張って助けなくても一人で何とかするんでしょーねー。さーすーがーねー。あたしなんかいらなかったわーねー。
魔力の使いすぎて頭が皮肉に溢れてるけど、これはこれで良かったと思わないといけない。
「あーーーーどっしよーーーー」
エレナの何度目かの声、指さしてはないけれど、目線を辿れば下、追いついたドワーフの強盗たちだった。
そうだ襲撃はまだ終わってない。
しかも身振り手振りからして、彼らはマミー下車を知らないらしい。
つまりこっち来る。
相手にするのは、面倒だし、疲れてるし、マミー逃げられるし、嫌なことばかりで真っ当に頭が回らない。
今こそ、甘いものが欲しい。
ギギギギギギギギギギギギギギギギ!
新たな金属摩擦音、ただし急停車よりは抑えめで、だけどその分甲高い音だった。
前を見直せば影、先頭の列車、あたしの水でびっしゃりと湿っていた天井が、まるで棺桶の蓋のようにゆっくりと開いていく
そして中から立ち上る湯気、それと同時に、吐き気を催すほどのむせ返る汗の臭いが、流れ出てくる。
そして完全に開き斬り、中からのそりと現れたのは……天を擦るような巨人だった。
大きい。
それが複数、多分三人、いえ四人ね。
黒く日焼けした肌、大きさを抜いても太くて鍛えられ、血管の浮き出た逞しい腕、むき出しの上半身には汗か、あたしの水か、水滴が煌いていて、振り返って見せた腹筋はバリバリに割れていて、おへそだけが可愛くあって、下半身にはただ黒いパンツが食い込んでる。列車を跨いで降りる足も太くて逞しい。
そんなのが四人、彼らが、運転手だとは思えないわ。
きっと、彼らは、彼らが、列車を、動力として、動かしてたんだろう。
ハハハと乾いた笑いが出てしまう。
あれだけ色々歌ってた列車が、巨人とはいえ、人力だった、とは、ほんともう、酷い冗談だわ。
呆然としてると巨人たちが振り返る。すると、あたしの目線の高さにもっこりがあった。
「貴様らか」
巨人の声、思ったよりも大きくなく、だけど思ってたよりも怒った声だった。
「貴様らが俺らの大事なマッスルシュート号に汚い水をかけたのかあぁあああああああああ!!!」
ビリビリと肌をも震わす怒声に、馬たちが嘶いて応える。
そして大股に歩き出す巨人四人、その一動作ごとにまるで小雨のように暑い汗が周囲に振り撒かれる。
そうして向かう先は、強盗たちだ。
対するドワーフたちは、馬に乗ってさっさと逃げればいいのに、クロスボーとか手斧とか取り出して、巨人相手にやる気満々だった。
だけどそれらはひとまとめに、一蹴りで吹き飛ばされた。
文字通り圧倒的戦力差、汗臭く暑苦しい中で繰り広げられるのは、ただ一方的な蹂躙だった。
「……あー謝んないとねー」
この状況でものんきなエレナの声に我を取り戻し、改めてまた背後を見れば、マミーの姿はなくなっていた。
「追うわよ」
「え?」
「マミーよ! あいつこのどさくさに紛れて降りてったわ! 追いかけないと見失うでしょ!」
「えーー。今からは止めようよー。疲れちゃったし、巨人さんももっと見てたい」
「だまらっしゃい! エレナあんま働いてなかったでしょ! それに巨人なんか遠くからでも見られるわ! それにここに残ったってどうせ橋も落っこちて先に進めないんだから! それよりマミー! 逃げられんでしょうが! ほら! 荷物全部持ってんでしょうね! すぐに降りるわよ!」
言っておきながら、このまま天井から這い出て降りるべきか、一階の出入り口から正式に降りるべきか、名案で足が止まった。
そこへ、べちゃり、と、三等の列車の上に一人、ドワーフが落ちてきた。
一目で無事じゃないとわかる。
「うわぁ」
ドン引きするエレナ、だけどもあたしは見てる余裕なんかない。
……なんか赤いの滴ってるけど、手とか動いてるし、大丈夫でしょう。
そう思い、焦る気持ちと吐き気を飲み込んで、あたしは一階から正式に出ることに決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます