第1章 自動人形 「アンジェリカ」

第1章 第1部 元悪党の章

第1話 元悪党の憂鬱

 「嬢ちゃんが政府から、派遣されてきた管理官かい?ふふ。おいらは名無しだ。なんて呼べばいいかって。そんなの好きにしろ!おいらには名前を名乗ることすら許されてねえのさ。わかるだろう?散々、悪事をやってきて今さら、死期が近づいたから反省します?そんなのくそったれだ。嬢ちゃんもそう思うだろう?」

 「私の名前はアンジェリカと申します。私の本分はあくまでも主様の死を見届けることだけですので。主様が悪人か善人かは全く関係ございません」

 「皮肉な話だよな。俺には名前がない。しかし、自動人形のあんたにゃ名前がある。不思議で皮肉なものだよな」

 「そのことにたいしても私には意見をする権利ががございません。あくまでも主様のお世話を申し付かっております。私は自動人形です。死というものはございませんが、その事により主様のお世話と死の間際に立つことが出来ます」

 「だから何だって言うんだい?死んだら何もかもがお仕舞いだ。嬢ちゃんはそこんとこ理解してんのかね?」

 「私は自動人形です。私達には『死』という概念が存在しません。そして、残念ながら理解できません。何故、ヒトは『死』というものを恐れるのでしょう?私には理解できません」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る