第2話 奴の名ですか? 知りたくありませんが?
肩を落とした俺は、ダンジョンの近くにあるボーアテレス聖国のワイキキに戻ってきた。
えっ? 裸で戻ってきたのか、だって? 勿論、服を着てる。
何故か? 本当に質問ばかり好きな困ったチャンだな? 決まってるだろ?
コメディだからさ!(キメ顔)
街に入るとボーアテレス聖国の軍と有志で募った冒険者の編成軍が駐留してるのが見える。
俺も参加を求められたが断った。
そんな事に興味はないし、何より、俺はダンジョンを攻略したい!
あっ、そうそう、そもそもなんで軍がここにいるか、説明しないと分からないよな?
先日、ワイキキの傍に新しいダンジョンが生まれた。
まあ、俺も理屈は分からないけどダンジョンは生き物のように生まれて死ぬものらしい。
学者が好きそうな話はそれぐらいで、問題がそこの最奥にエーテルの泉らしき物を発見したという噂が出回った事で問題が発生した。
エーテルというのは魔道兵器などのエネルギーとして使われるらしく、魔道兵器を主戦力とするユークトハイド帝国の耳に入ったモノだから大変。
しかもワイキキはユークトハイド帝国とボーアテレス聖国の国境にある街。
好戦的なユークトハイド帝国がエーテル欲しさにどうするか言わなくて分かるよな?
あらよ、あらよと、こんな状況が出来上がった訳だ。
そこで俺は両国が睨み合ってる間にそのダンジョンからお宝をゲット! と狙ってた訳なんだが……
溜息一つ吐くと、気付けば目的地に着いていた。
クレイモアを買った武器屋であった。
しかし、まだ昼間だというのに扉が閉まってあり、扉に張り紙がされていた。
『長らくご愛顧ありがとうございました。店主の都合で店を閉めさせて貰います』
俺は無言で拳を振り抜くと元々ぼろかった武器屋は瓦礫の山になる。
うん、ちゃんと俺のチートは機能してるな!
俺は心のノートに武器屋のオヤジの顔を刻み、再会できる日を楽しみにする事にした。
▼
とりあえず、露店の適当な武器のブロードソードを買った俺はダンジョンに入る為に仲間を2人見繕う為に辺りをキョロキョロして歩いた。
だが、暇そうにしてるのは子供と老人ぐらいで誘ってもダンジョンに行くまでに死んでしまいそうで怖くて誘えない。
「おお、そこにいるのはタクミンじゃないか?」
「誰だ? タマネギの家に住んでるヤツみたいな名前で呼ぶヤツは?」
辺りを見渡すが誰もいない。
すると、服の裾を引っ張る力があるのに気付いて視線を下に向けると黒髪の背中ぐらいまで伸ばした日本人形を思わせる少女がいた。
頭が俺の腹ぐらいの位置の少女を見つめる。
俺は鼻で笑い、肩を竦めると少女に
「悪い、今、お兄ちゃんは忙しいんだ。10年後遊んであげるから、またね?」
爽やかな笑みを浮かべて言うが少女は半眼で見つめてると思ったら、脛に激痛が走る。
うぉぉ! いてぇ!! いくらチートを持ってても痛いモノは痛い!!
「タクミン、失礼。智美はタクミンと同じ17歳」
そう言われて、脛を摩りながら、もう一度見つめると確かに見覚えがある。
そうそう、コイツは、
「隣のクラスの8歳で成長が止まったと噂され……」
ガスッという音と共に俺は反対側の脛を抑えて声なき悲鳴を上げて地面を転がり始める。
何事もなかったように話し始める智美。
「久しぶり、タクミン。一緒に来てたのに最初に顔を合わせて以来」
「イタタ、俺は胸も尻もあるか分からんのは視野外……うぉぉ! 嘘だ、俺が悪かった!」
無言で足を振り被る智美に手を突き出して必死に謝る俺。
どうみても幼女にやり込められる少年。
犯罪臭しかしないねっ♪
気を取り直した俺は智美に話しかける。
「智美はワイキキに何しに? 冒険者の編成軍か?」
「まさか、異世界の戦争に無駄に参加したくない。でも、その原因になったダンジョンには興味ある。だから見に来た」
俺の瞳がキランと光る。
きたきた、1人目ゲットのチャンス到来!
見た目こそ小学低学年レベルだが、こいつもチート持ち。少なくとも邪魔にならないはずだし、何より人数がいる。
「そうなのか? 丁度いい、俺も行こうとしてたんだが、入るのに3人いるらしくて人を捜してたんだ」
「ん? なんかタクミン、必死?」
ヤバい、仲間のアテがないのがばれたら……マズイ
「いやいや、違うぞ? 仲間探しに苦労してないし、今、ダンジョンから戻った所だ」
「なるほど、じゃ、ブツブツ言いながら歩いて武器屋に行って破壊活動してたのはタクミンじゃないんだ?」
俺は顔から地面に突っ伏す。
コンチキショウ!! 全部分かって、からかわれたのか!!
下唇を噛みながら泣くのを耐える。
えっ? 目端に溜まってるのは何だって? 青春の汗です。
「タクミン、智美に何かお願いがある?」
く、屈辱だ……だが、俺も引き下がれない!
こうなったら最終手段だっ!
「どうか、3人パーティを組む為に一緒に来てください。後、良ければ誰か紹介して!」
俺は最終手段 DOGEZA を発動する。
野望がある、俺には野望があるんだ。
ハーレムを!! という気持ちもある。当然、それも目指す。
でも、その前に……
「友達が欲しい……」
口の中で言って智美にも聞かれないようにする。
そのキッカケの為に何としてもダンジョン攻略をしなければならない。
DOGEZA する俺を見つめる智美がユルそう笑みを浮かべる。
「しょうがないな、付き合ってあげるよ。後、1人だけ誘ったら来てくれる人に心当たりがあるよ?」
「本当か! 紹介オネヤシャス!!」
クフフッと楽しそうに笑う智美の先導されて着いて行くと噴水がある広場に出る。
人気がなくカー○ルのおじさん、チキンを売ってくれそうジジイがコシミノ一丁で踊ってる以外寂しい場所であった。
「あの人だよ?」
「えっ? 誰もいないだろ?」
この時、俺は自分でもきっと認めたくなかったんだと思う。
俺の芳しくない反応に業を煮やした智美はカー○ルのおじさんに手を振る。
すると、激しい腰の動きをする踊りをしながら近づいてくるカー○ル。
シャカシャカって音が耳触りだぁ!!
コメカミから嫌な汗が滴る俺は目の前のジジイを見つめる。
「この人が紹介しようとしたバイブルさんだよ?」
俺はただ、「これはないわぁ?」としか言えなかった。
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